『Amy』

昨日は病院を出て夕方、時間があったので渋谷に出て
『Amy エイミー』を観た。
http://amy-movie.jp/


2011年、27歳の若さで亡くなったエイミー・ワインハウスのドキュメンタリー。
2003年、20歳でデビュー。
その類まれな歌唱力、ジャズとR&Bのセンスが高く評価される。
後に結婚する男の影響でコカインやヘロインに手を出すようになる。
2006年、2枚目『back to Black』とシングル「Rehab」が大ヒット。
タイトルの通り薬物のリハビリ施設に入ったときのことをネタにしたものだった。
2008年のグラミー賞で最優秀楽曲賞など5部門を制覇。
このときは薬物問題で本国イギリスから出国できなかったが、一躍セレブの仲間入り。
その破天荒な私生活も話題となって常にパパラッチに追われることになる。


一人の人間の人生を描くというとき、どの視点に立つかで大きく変わる。
ここでのエイミー・ワインハウスは繊細で、依存症の傾向はあるけれども
元々は歌が歌いたかっただけの、そしてその歌が不世出と言われるだけの才能を持った、
ごく普通の女の子として描かれる。
突然にして名声を得たことに戸惑い、不安に押しつぶされる。
そこに薬物中毒の若くてイケメン(とも思えないが)のダメ男が表れ、離れられなくなる。
彼と同じ時間を過ごしたい、彼と同じものを感じたいと薬物に手を出す。
のめり込むまで一瞬だった。


この男がほんとひどいやつで。
インタビューで医師かリハビリ施設の職員が言ってたけど
薬物依存の金づるがいたら、手放したくないから薬物をやめさせないようになんでもする。
父親もひどい。子どもの頃に他に女を作って家を出ていって少女の心を傷つけたのに
娘が売れたとなると戻ってくる。
人里離れた場所で療養していても金のためにカメラのクルーをつれてくる。
この父親は「薬物から立ち直るのは自分自身の問題だ」と言ってのけるし、
父親とグルになるマネージャーも「家族の問題には立ち入らない」などと偉そうに言う。
周りのダメな大人たちが金に目が眩んで、恋人を、娘を、しゃぶりつくす。
ドラッグが怖いのはドラッグ自身もさることながら
周りの人間たちがもっと怖いのだ、ということが思い知らされる。


ダメ夫が逮捕されて離婚したことをきっかけに薬物依存からは立ち直るが、
その分アルコールにのめり込んでいく。
医師からはこれまでの不摂生から心臓が弱っていて
これ以上アルコールを飲んだら死ぬと言われていたのに
ステージにまともに立てなくなって、泥酔して現れて台無しにしてしまう。
そこから先、心臓発作で亡くなるまで残された時間はほんのわずか。


破滅型の天才と言ってしまえばそれまでだけど。
自分一人で破滅する人などそうそういない。
その過程が嫌というほど明確に語られる。
よくできたドキュメンタリーだった。