窓のない部屋

白い部屋 窓のない部屋
二脚の椅子 雨を踊る
指先を伸ばす 時間を鳴らす
彼女たち(天使) 傷跡を隠そうともせず
入口もなく 出口もなく
ひとりずつ消えていく 明日にはもう誰もいない
海の見える町の 屋上に近い部屋
白い部屋 音のない部屋
羽と砂がわずかに散らばっている 小さな虫が這う
目には見えない無数の小さな虫たちが 生まれては消えていく


そんな部屋を 少女たちは心の中に抱えている
白い部屋を 天使たちの踊る部屋を
言葉のない部屋を 言葉になる前の部屋を
その居場所に気づいたとき 少女は少女になる
いつか忘れて 少女は大人になる
その残骸の群れが この地表を覆っている
高く積み重なって ひび割れて砂に還って
地中に埋もれて 奇跡的に無傷のものもあって
その中で持ち主の少女は 永遠に踊り続ける
もはや天使たちの姿もなく 二脚の椅子の間で