国分寺へ

4連休4日目。
妻の編集学校での卒業式イベントも昨日でひと段落して、
今日は車に乗ってどこかに出かけようとなる。
先日青山の岡本太郎記念館に行ったから、
今日は川崎の岡本太郎美術館に行こうと決まる。
 
10時前に家を出る。近くのガソリンスタンドに寄って、笹目通りへ。
環八に入った頃から渋滞。井荻のトンネルで全然車が動かない。
しかもそんな時に限ってトンネルの中を救急車が通り過ぎていく。
ようやく出たところで裏道はないか、探しながら行くかと曲がってみる。
住宅街の間の細い道を少しずつ進んでいって
荻窪を過ぎて五日市街道を過ぎて高井戸から久我山に出た辺りで
ナビを見たら右折と出ている。
それまではどこまで行ってもナビが環八に戻そう戻そうとしていたのが
ようやく諦めたのか全然ルートを示すようになった。
あ、じゃあ曲がってとなった瞬間、そこに警官が立っていた。
時間制限による右折禁止の場所だった。
ナビが、と言っても通じるわけがなく。
丁寧な物腰で標識をちゃんと見るようにと諭された。
秋の交通安全運動の期間だった。
 
点数を引かれ、罰金も取られ、妻は相当落ち込む。
岡本太郎美術館はやめにして近場にしようと方向転換する。
そのまま三鷹の連雀通りに入って進んでいくうちに
妻が国分寺の「お鷹の道」に行ってみたい、遊歩道と湧水の池があると。
武蔵境、武蔵小金井と通り過ぎて国分寺の南側へ。
近くの駐車場に停めた。
 
遊歩道は清らかな小川がサラサラと流れていた。
生活用水を流さないようにしているのだろう、透明さを保ったまま。
百日紅のピンク色の花があちこちに咲いている。蛍もいると。
川の流れのささやかな音以外は静かで、ゆったりとしたどこか昭和のままの風情。
ああ、こんな場所に住みたいなあと思った。
 
湧水跡地に出る。この辺りがいわゆる国分寺だったようだ。
聖武天皇が全国に建てたうちのひとつがここにあった。
歩き続けるうちに木々の間に入って階段を上る。
森の中、まだ蝉の鳴き声が聞こえる。
都立の武蔵国分寺公園の広場に出た。
マンションと住宅地と郊外の穏やかな風景が広がっていた。
ベンチの並びや歩道の作り方などモダンな雰囲気があった。
手入れも行き届いていた。
日が出ていたので暑く、噴水が心地よかった。
国分寺にこういうところがあったのか。
学生時代に6年近く小平・国立界隈に住んでいて
国分寺も生活圏内だったのに知らなかった。
 
駅前まで歩いていく。
坂道だらけで高低差が大きい。
道端の案内板に「国分寺崖線」とあった。
なるほど、ここに崖があったのだろうか。
高級住宅地で道路から階段を上って2階の高さに入り口のある家が多かった。
帰り道別なところを歩くと逆に道路に面した階段を下りて入る家だとか。
国分寺の町ってこういうところだったんだ。
ブラタモリ的に南口の街並みが面白い。
北口しか知らなかった。
 
駅前に出て南口を東へ、懐かしい通りを歩く。
美大性がやってますって雰囲気の尖った古着屋がなくなっていて、
映画サークルで国分寺で撮影した時によく利用した定食屋「赤城」もなくなっていた。
昔からあったかどうかわからないけど雑居ビルの地下に古本屋と古着屋が並んでいて
古本屋に入ってみた。「中央線沿い」の匂いのする独特なアンテナを張った店だった。
主流でもなくサブカルでもなく、こじんまりとして品がよくてレトロというか。
村松昭散策絵図シリーズ 玉川上水」というのを妻が見つけ、650円だったので買ってみた。
玉川上水と言えば僕は小平の住んでいた辺りしか知らなかったけど、その全長は30kmあるという。
後で伸ばしてみたら広げきれなかった。
 
その近くの有名な喫茶店ほんやら洞」に入ってカレーを食べることにする。
70年代に活躍したシンガソングライター中山ラビの店として有名ですね。
しかし忙しくててんてこ舞いとなっていて水も出せない、注文しても全然出来上がる気配がない、
という状態だったので出ることにした。
後から来て隣に座った気難しそうなおっさんがややこしい注文をしたのを先に作って、
持って行ったらそのおっさんが説明を聞いて「こんなの食べられないよ」と突き返す。
常連なのだろうか。感じが悪かった。
 
裏通りにある中古CD屋「珍屋」に入った。
学生時代よく通ったな。
ずっと探していた Tuxedomoon『Ghost Sonata』を見つけたのがここだった。
アルゼンチンタンゴの重鎮の一人、Juan Jose Mosalini の国内盤が安く売られていたので3枚買った。
 
高架下をくぐって北口に出る。
通りの突き当りにある「千成ホテル」がまだあった。懐かしい。
鉄鍋餃子の「タイガー餃子」もまだあった。
おしゃれなカレー屋があったので入ってみた。「シシカリ」という。
店員の方に聞いてみたらオープンは2年前とのこと。
妻は「肉味噌スペシャキーマカレー」にして僕は期間限定の「伝説のスタミナ豚キムチカレー」
もちろんあれですよね。スタ丼。もちろん肉増しにした。
ココナッツミルクがベースらしく、あっさりして食べやすい。
そこにスタ丼の肉が意外と合う。というかかなり合う。
妻のキーマカレーも納豆やチーズがトッピングでこちらも意外といける。
国分寺は大学がいくつかあるからか周りは皆若者ばかり。
半分がカップルか。身近なところでデートとなればここで食べるのが今、一番いけてるのかもしれない。
 
北口は再開発で駅ビルができて大きく様変わりしていた。
かつての面影は一切なくなっていた。リトル立川って感じ。垢ぬけてしまった。
その新しい駅ビルには入らず。昔からの方に入ってみる。
「エル」は「セレオ」となっている。丸井は相変わらず。
5階の Village Vanguard や8階の新星堂を見る。
新星堂は昔かなり小さくてチケットぴあのブースもあったな。
8階は紀伊国屋書店も大きいのができている。
なんだ、国分寺住みやすそうだな……
 
また歩いてお鷹の道まで戻って帰ってくる。
渋滞に巻き込まれながら、なんとか。
たいして用がないと敬遠して、近くて遠い街だった国分寺
その魅力を再発見する一日だった。