「玉川上水散策絵図」

先月、妻と国分寺を散歩したとき
南口を出て東京方面の坂を下ったところにある古本屋に入った。
僕が学生生活を過ごした90年代にもあったかどうかは覚えていない。
マンションか雑居ビルの地下にあって古着屋と3、4軒並んでいる。
ほんやら洞の近くにあって、裏通りには学生時代よく通った中古CD・レコード屋珍屋
 
中央線的な乾いた、まったりとした文化を感じさせるような古本屋で、
こぎれいで品ぞろえがよかった。
この著者にこんな本があったのか、店主の目利きが伺えた。
もちろんジャズがかかっていた。
 
妻が「見て」と棚から取り出したのが「玉川上水散策絵図」というものだった。
細長く平べったい、折り畳みの箱の中に入っている。
試しに広げてみたら両手いっぱいで持ちきれないぐらい長い。
横には広がらない。ひたすら縦に続くようだ。
サブタイトルに「30キロの史跡緑道」とあるぐらいで。
村松 昭 散策絵図シリーズ⑧」と書かれていて、後で調べてみたら
他に天竜川、浜名湖屋久島など。多くが在庫切れ。
プレミアのついたものだと大井川が6,670円、高尾山が19,800円、荒川・隅田川が28,584円。
この玉川上水も3,532円。
僕は確か600円で買ったので、あの古本屋は良心的な店なのだろう。
 
家に帰って改めて広げてみたら果てしなく長い。
階段の上から下まで届いた。
奥多摩の御岳山に源流があるのか。
羽村市の小作取水堰から地図は始まって多摩川羽村の堰で分かれる。
福生に入って昭島、立川、武蔵村山、東村山、小平と流れていく。
 
懐かしい一橋大学のグラウンドを探す。
その近くに津田塾大学があった。
この小川の側の小道を夜、走らされて津田塾大学の寮へと突撃するという「ストーム」という行事があった。
(その数週間後、津田塾大学の寮生が一橋大学の寮を訪問する「ブリーズ」がセットとなる)
僕にとって玉川上水というのはこの狭い範囲の緑豊かな散歩道のことだった。
全長30kmもあったとは。僕はこの本の一部しか知らなかったのだな。
 
小金井公園を経て西東京市武蔵野市、杉並区と来て終点となっていた。久我山の辺り。
amazon のレビューを見たらまだその先があって、暗渠になっている部分が割愛されているのだという。
さらに続くのか!
 
こういった道のりが全てイラストで描かれていて、
周辺で見ることのできる草花や鳥たち、ちょっとした名所にゆかりの偉人、
行われる祭りなども描き入れられていて賑やか。
イラスト地図って面白いな。
三鷹駅の近くには太宰治が入水した場所が描かれ、
そのすぐ近くに「路傍の石」の山本雄三記念館。
上水を挟んで井之頭公園には椿の花が咲き、メジロが飛んでいるというような。
福生基地の周りはよく見たら鳥ではなく戦闘機が飛んでいた。