『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』

妻が見に行きたいということで東京都現代美術館石岡瑛子展へ。
石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』
東京FMの速水健朗さんの番組で、
見に行ったらとても感激して友人がキュレーターだったのでさっそくゲストに呼んでいた、とのこと。
 
佃煮や深川丼の店の並ぶ昔ながらの通りを歩いて、美術館を目指す。
僕はシン・ゴジラ展以来か。結構前だな。
 
事前予約優先なのでさほど混まずに見ることができた。
アートディレクター、グラフィックデザイナーとしての仕事は資生堂から始まる。
水着になった前田美波里が砂浜に寝そべって眩しい笑顔を見せつけている。
今でもよく引用されるけど、あれが石岡瑛子だったんですね。
そして有名になった一連のパルコや角川書店の広告へ。
70年代のあのギラギラして貪欲な雰囲気、
日本を飛び越えて世界を吞み尽くしたい、私たち自身が文化になりたい。
ポスターや表紙から放たれる勢い、熱量がすごい。
被写体は沢田研二やグレイス・ジョーンズ、アフリカの女性たち。
会場には石岡瑛子本人の声が流れている。
 
いくつかの作品は手書きの色校も展示されている。
そこの指示の細かさ、バージョン違いの試行錯誤も全て明らかに。
昔の印刷屋はこういうレベルの高い仕事もきちんと受けて立っていた、
と感心しながら妻はものすごく時間をかけて眺めていた。
 
本の装丁やパッケージ・デザインも手掛けていた。
井上光晴の一連の作品。
コーヒーの maxim や意外なところでは海苔の山本山
 
80年代、海外に出てからは一気に世界の最先端へ。
マイルス・デイヴィス 『TUTU』のジャケット、BjorkCocoon」のビデオクリップ、
地獄の黙示録』の国内版ポスター、映画『MISIMA』の美術、
晩年のレニ・リーフェンシュタールのアフリカの写真を日本に紹介し美術展を企画。
様々な方向に向かうが、
コッポラ監督の『ドラキュラ』がアカデミー賞の衣装デザイン賞を獲得してからは
その方面の仕事が増えていく。
北京オリンピックシルク・ドゥ・ソレイユ、グレイス・ジョーンズの2009年のツアー、
オペラのニーベルングの指輪、『落下の王国』といった映画。
自由奔放な想像力を駆使しつつ、気高くてエレガント。
なのに身体性も強く感じさせる。
「血が、汗が、涙がデザインできるか」というのは石岡瑛子の言葉なんだけど、
デザインしているのは単なる衣服ではなく、
それを身にまとう感情を持った生身の人間の生き方だったのだろう。
 
最後は高校時代につくったという自作の絵本の展示、
原点に返るというところにこの企画展の矜持を感じた。
切なくて美しい余韻を残した。
 
図録は間に合わなかったのか、1月発売となるようだ。
僕自身が一番インパクトを受けたのはレニ・リーフェンシュタールのアフリカの写真で、
パルコ出版から出た写真集、中古で売ってないかなと思っていたらミュージアムショップにあった。
石岡瑛子の手掛けたレニ・リーフェンシュタール展の巨大な図録も。求龍堂が出していた。
どちらも7,000円で泣く泣く一つを選ぶ。
どちらにするか迷って図録の方にした。この値段の価値はあると思う。
合わせて『夜想』のヴァンパイア特集も。
 
美術館を出て午後はスカイツリープラネタリウムを見ることになっている。
清澄白河の商店街を歩いて駅へと向かう。