箱根再び その2

帰りはロマンスカーで、18:48を予約している。
午後は「岡田美術館」と大型温泉施設「ユネッサン」に行ってみるかということになっていた。
20分ほど乗っただろうか。
路線バスに乗っているとちょうど「ユネッサン前」というバス停があって、そこで下りる。
向かいが「岡田美術館」なんだけど両者特に関係はなさそう。
(僕は小涌園グループなのだと勘違いしていた)


美術館は2013年にオープンしたばかりでまだとても新しい。
敷地内には足湯があって、観光客がのんびりと漬かっている。
来館者は無料とのこと。
入り口には建物5階分? の巨大な風神・雷神の絵が。これが有名らしい。
入場料は2,800円とかなり高い。
入場ゲートがあって携帯電話やデジタルカメラはコインロッカーに預けないといけない。


1階が中国、隋唐時代よりも昔から明・清までの陶磁器全般。
2階が日本の焼き物と、今回の企画『あの歌麿が帰ってきた! ―「深川の雪」再公開―』の展示。
3階が狩野派琳派の屏風。喜多川歌麿伊藤若冲の掛け軸。18歳未満禁止の春画の部屋もあった。
4階が丸山応挙、与謝蕪村から伊藤深水や上村松園に至る日本の絵画。
5階が小部屋がひとつあるだけの仏教美術
館内はかなり広い。サントリー美術館の5倍の展示面積なのだとか。
他の部屋はそれを適度な大きさに区切ってるんだけど
2階だけは真ん中を大きく開けて壁際に並べるだけ。
これは恐らく、歌麿の「深川の雪」を大きく眺めるためか。
各階とも照明が極端に落としてあって、暗闇の中に美術品が浮かび上がるかのよう。


けっこういいもの集めてるな、センスあるなーと思って眺めていたら
隣の妻はずっと首を傾げていて、「コンセプトが見えない」と。
なるほど。集めたものは時代も場所も流派もバラバラ。
幕の内弁当はどこまで行っても幕の内弁当。
それで言ったらボストン美術館展なんかを観てもバラバラはバラバラなんだけど
何を蒐めて何を並べるかというところにはっきりとした意思、熱意が感じられる。
一方こちらは妙にひんやりとしている。


後で図録の解説を読んでみたら設立した岡田和生という方が
美術品を蒐め始めたのは15年前のこと。
(解説の書かれた2013年で15年前なので、1998年となるか)
え? たったそれだけの期間でこれだけ揃えたの??
いったいどれほどの財力か…
調べると「ユニバーサルエンターテイメント」創業者とあったので
ああ! 「ユニバーサルミュージック」かと思ったら
そっちは「ユニバーサル・エンターテイメントジャパン」で別物なんですね。
前者はパチンコ・パチスロのメーカー。
あー…、だから「岡田美術館」は偏見の目で見られてるんだ。
まあ、いいじゃん。
これはこれで日本の美術館に一石投じる存在ではあると思う。
このまま異端であってほしいですね。


(妻曰く、「ただ単に投機の対象なんじゃないの?」
「所蔵品を貸し出せばそれはそれでお金になるよね」
 とのことで、確かにそれもあるんだろうな)


でも、歌麿の「深川の雪」はとてもよかったですよ。
深川の料亭を舞台に総勢27名の芸者たちによる匂い立つような生の情景。
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=450
「品川の月」と「吉原の花」と共に「雪月花」三部作をなす。
残りふたつはどちらもアメリカの美術館で所蔵されていて、
3つ揃って観ることは僕が生きている間には難しいのかも。


ミュージアムショップで図録を買うと
基本「深川の雪」1枚を展示する企画なので、
部分ごとにズームしたり女性27人それぞれを分割して載せたりと工夫されていた。
これはこれでなんかすごい工夫だった。