先週買ったCD #9:2020/12/07-12/13

2020/12/07: DiskUnion 新宿中古館
Suzanne Vega 「Suzanne Vega」 \3550
Prince 「The Scandalous Sex Suite」 \780
(V.A.) 「Tokyo Flashback」 \1700
山本精一 「PLAYGROUND」 \980 ※DiskUnion の別テイク特典CD付き
 
2020/12/11: diskunion.net
Sleater Kinney 「The Hot Rock」 \1800
 
2020/12/11: tower.jp
Khruangbin 「Late Night Tales」 \2020
 
2020/12/11: www.hmv.co.jp
サザンオールスターズ 「NUDE MAN」 \2226
サザンオールスターズ 「人気者で行こう」 \2226
長渕剛 「SINGLES vol.2 (1983-1988)」 \2850
 
2020/12/11: www.hmv.co.jp
(V.A.) 「Gypsy Soul」 (\220)
HMVのポイントで
 
2020/12/11: ヨドバシカメラ新宿西口店
Paul McCartney & Wings 「Wings Over America」 (\4400)
※ヨドバシのポイントで
 
2020/12/11: TowerRecords 新宿店
Rina Sawayama 「Sawayama」 \2739
 
2020/12/11: DiskUnion 新宿中古館
Vampire Weekend 「Modern Vampires of the City」 \780
Laura Nyro 「Stoned Soul Picnic : The Best of Laura Nyro」 \980
Michael Jackson 「Thriller」 \980
Traffic 「Shoot Out at the Fantasy Factory」 \1300
Mighty Spallow 「Hot and Sweet」 \880
Lena Machado 「Songbird of Hawaii」 \1300
Orchstra Baobab 「La Belle Epoque Vol.2」 \1500
 
2020/12/12: www.amazon.co.jp
John Wizards 「John Wizards」 \569
 
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Rina Sawayama 「Sawayama」
 
先月末ぐらいか、妻から Rina Sawayama の名前を何度か聞いた。
行き帰りの車の中で東京FMやInterFMを聞いているとよくかかる曲があって、とてもいいと。
(「Blue Ocean」や「Tokyo Slow News」の辺りでかかっていたのだと思う)
YouTubeで聞かせてもらうと Rina Sawayama で「LUCID」
 
小さいときに渡英。
ケンブリッジ大学卒業後そのままイギリスで音楽活動を本格的に始め、
しばらくはモデルとして生計を立てる。
徐々に音楽の方でも話題となり、
昨年の『情熱大陸』では「ネクスト・レディーガガ」と呼ばれたと。
作詞作曲のみならず楽曲のプロデュース、ビデオクリップの監督まで一人でこなす
多方面の才能がそのように呼ばせたのか。
日本に収まらず最初から海外で活動というのが今の在り方か。
 
確かにいい曲だと思ってアルバムを買ってみた。
(今年前半に出たものなので最新シングルの「LUCID」は入っていない。
 ちなみに日本盤はコロナ禍で発売延期のまま)
 
エレクトロ・ダンス・ポップというか、2020年代R&Bというか。
アルバムのタイトルが「Sawayama」で曲名には「Akasaka Sad」とあったり。
冗談なのか本気なのかわからないというか冗談も本気も区別がなくて
いろんな情報を等価に取り込んでしまうというところがこの時代のらしさなのだと思う。
90年代のロックでよく”ミクスチャー”と呼ばれる音楽を演奏するバンドがあった。
メタルとファンクとDJを掛け合わせるというような。
しかしそれは元々別とされるものをあえて混ぜ合わせるというニュアンスがあった。
00年代以後、ネット世代以後は過去も現在もアクセスできる情報としては距離がなくなって、
今は生まれつきジャンルレス、ボーダーレス。
そんな時代に生まれる音楽。
 
自分を表現する、というときにジャンルは要らない。
カテゴライズされないのが自分というもの。
その先駆者として Bjork の蒔いた種のひとつが Rina Sawayama として育った。
特にビジュアル面に対してそう思う。
欧米でもなくアジアでもなく、架空のアジアを演じるというような。
でもこういう言い方をしてしまうことこそがジャンル化だな……
 
ちなみに新宿のタワレコで買おうとしたら、J-POPのコーナーだろうかと思ったが見つからず。
洋楽かR&Bのコーナーなのだろうか?
店員の方にも探してもらったけどすぐには出てこなくて、結局倉庫に取りに行ってもらった。
まさにカテゴライズの難しい音。
 
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Lena Machado 「Songbird of Hawaii」
 
ハワイの音楽を聞くようになったのはいつからか。
サイドウェイ』というアカデミー脚色賞を獲得した映画を見に行ったら面白くて、
アレクサンダー・ペインという監督の名前を覚えていた。
その次に撮ったのが『ファミリー・ツリー』というハワイを舞台にした作品で、
ジョージ・クルーニーが主演だった。2011年。
全編ハワイの音楽が流れている。
ゆったりとした雰囲気がいいな、と思ってすぐサントラを買いに行った。
今時ハワイアンを聞くなんてかっこ悪いとどこかで思いつつ、
聞くにしてもどこから何を聞けばいいのかよいのかよくわからず。
サントラだったらいいだろう、と思った。
物心着いた頃から浜辺でアロハにムームーな場面に流れている音楽はテレビでよく耳にしていた。
30過ぎてからは新宿のもうやんカレーに行くとBGMでかかってて、いいなとは思っていた。
 
僕はこの空気感とオーガニックなギターの響きが気に入ったのだな。
ハワイ独特なチューニングと演奏の仕方。スラックギターという。
そのコンピレーションを買ってみたり、数年前に久保田真琴を知ってからは
その街の音や音楽をDJ的なセンスでリミックスした「Blue Asia」シリーズ、
そのハワイ編を聞いたりした。どれも心地よい。
 
いつか本格的に聞いてみたいと入り口を探していたら出会ったのがこのCDで、
真夜中、腰蓑とレイだけで踊る男女の姿を写した写真が目に留まった。
帯に「ハワイの歌姫と謳われたレナ・マシャードによる唯一のハワイアン・ヴォーカル・アルバム」とあった。
解説を読むとこのレナ・マチャードという方はハワイの女性歌手の草分けにして第一人者のようだ。
長らく歌うのは男性だけとされていた中で、初めてアメリカ本国で単独公演を行った女性歌手であると。
自作の曲もたくさん残している。
 
1959年の作品らしい。
でもこの手の音楽に古いも新しいもなくて。
手練れの楽団をバックにしてタイトルにあるように時には鳥の囀るように美しい、
朗々した声で歌う。
この森全てが、この島全てが私の劇場というような。
そしてこの森全てに、この島全てに、私の歌を捧げるというような。
 
今見返してみると『ファミリー・ツリー』のサントラにも1曲、レナ・マシャードが収録されていた。
ハワイアン・ミュージックの入り口にはやはりこのアルバムがいいと思う。
 
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Khruangbin 「Late Night Tales」
 
”Late Night Tales”という DJ MIX のシリーズがあって、僕の聞いた限りどれもはずれがなかった。
DJというよりもキュレーターか。その名の通り、真夜中に聞くメロウな音楽。
クラブDJ に限らず、ロックバンドやポスト・クラシカル系のアーティストも手掛けている。
自身がカバーした曲を1曲入れる。最後にポエトリー・リーディングで締める。
そんな縛りがあるだけであとは自由。
でもこのふたつの縛りでどんなことをするか、というところに
その人・グループのアーティスト性が見えてくるのが面白い。
それぞれの選曲もまた、意外なルーツを知ることができたり、
通好みのマニアック過ぎるものだったりと楽しい。
僕もまたこのプレイリストから辿ってあれこれ勉強させてもらった。
 
最初に出会ったのは Flaming Lips で、
今、iPhone に入れているのを数え上げてみると
Agnes Obel / Air / Belle & Sebastian / Bonobo / The Cinematic Orchstra / Jamiroquai /
Nils Frahm / Nouvelle Vague / Olafur Arnals / Royksopp / Zero 7
あとスピンアウトのカバー集やサントラ集も持っている。
 
満を持して Khruangbin が登場。今月出たばかりのホヤホヤ。
Bonobo の Late Night Tales に取り上げられたのがブレイクのきっかけとされるだけあって、
メンバーたちも感慨深いだろうな。
 
テキサス出身の3ピースバンド。ギター、紅一点のベース、ドラム。
サイケデリックでメロウなファンクを演奏する。
Khruangbin とはタイ語で”飛行機” という意味で
どこか東南アジア系ポップスの香りづけもされている。
当初はインストゥルメンタルだけだったけど、
最近の作品ではヴォーカルも入るようになった。
 
僕は6年前に結婚してから、特に4年前に練馬に引っ越してきてから
全然ライヴに行かなくなってしまった。
結婚当初、世田谷に住んでいた頃はそれでもまだ妻を誘って
BIllboard Live Tokyo でバーシアを見るとかしてたけど。
練馬以後はマドンナの来日公演をさいたまスーパーアリーナで見ただけか。
今はもっぱら妻の取ってくれたチケットでドリカムを見るばかり。
そんな中、どうしても見てみたかったのが Khruangbin の来日公演だったんだけどかなわず。
昨年のフジロックにも来てたみたいなんだけど。
光が丘のタワレコに彼らのアルバムを取り寄せて買ったら
店員の方に”Khruangbin いいっすよね!”と言われてレジで少し立ち話をしたこともあった。
 
この Late Night Tales もさすがの内容で
日本の柳ジョージベラルーシエチオピアのグループと地球一周の音楽の旅のよう。
正直柳ジョージ以外は全く分かりませんでした。
彼らも相当なレコードフリークなんですよね。
冒頭はカルロス・サンタナアリス・コルトレーンの共演で、そんなレコードがあったのかと。
 
どれも気になる中で掘り下げてみたくなったのが韓国の Sanullim というグループ。
70年代後半、自由な音楽が規制の対象となった韓国で
突然変異的に現れたサイケでイノセントなガレージロックを演奏する3兄弟。
最初の3枚以外は入手が難しいようだ。
 
Khruangbin という飛行機に乗って世界の裏側へ。
Belle & Sebastian は第2集を出してるんですよね。
彼らも出してくれないかな。
 
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John Wizards 「John Wizards」
 
8月はレゲエばかり聞いてて、その流れで9月はアフリカの音楽へ。
ピーター・バラカンのディスクガイドを頼りにしてんだけど、
それ以外の視点も取り入れてみようと探してみたら
ここ10年で発売された最新と言えるものでは2冊あるようだ。
萩原和也 『ポップ・アフリカ800』(2014 / アルテス・パブリッシング)
吉本秀純監修、CROSSBEAT presents 『アフロ・ポップ・ディスク・ガイド』(2014 / シンコーミュージック
奇しくも2冊揃って世に出たわけだけど(どちらも8月)、
amazon のユーザーレビューを見てみると前者の方が圧倒的に評価が高い。
2009年に700枚選んだのが最初に出て、それは中村とうように絶賛されたのだとか。
2014年に800枚に増やしたアップデート版がこちら。
後者が400枚なので単純に数の上でも倍。
僕も最初に前者を購入、気になって後者も後日購入した。
 
労作・力作なのは確かに前者。個人で全て選んでいる。その労力たるや。
後者は北中正和サラーム海上松山晋也高橋健太郎、新谷洋子……(敬称略)
と多くの著名な音楽評論家が分担している。
実際には前者の萩原和也氏の名前もまた執筆者に並んでいるわけで。
別にライバルでもなんでもなくて、アフロポップの仁義なき代理戦争でもなんでもなくて、
出版社を超えて補い合うものと捉えればよいかと。
前者は国別のアーティストのカタログに徹していて、
後者は欧米の音楽への影響といったつながりもまた重視している。
有名なところでは Talking Headsピーター・ガブリエル
僕なんかはやはりそういうところの目くばせがあった方が入りやすいですね。
 
ということで、両社の Orchestra Baobab や Tinariwen の扱いの違いがどうなってるか、
なんて並べながら拾い読みしていたわけですが。
たまに、後者にしか登場しないアーティストが出てくるとオッと思うわけで。
この John Wizards がそう。
 
2013年発表だったので
前者の『ポップ・アフリカ800』は間に合わなかったのかもしれないし、
音楽性という意味で基準から外れたのかもしれない。
その地方特有の弦楽器や打楽器で単調なリズムを繰り返すうちに
グルーヴが生まれて心地よくなる、その上に土煙をかぶったブルーズが重なる、
というような伝承音楽が西洋音楽と出会った上での発展系としてのアフロポップではなく、
21世紀以後のDJカルチャー、サンプリングカルチャーの視点から捉えたアフロポップ。
根っこにあるリズムはアフリカ大陸のモアレ状のおおらかなものなんだけど
それをどこに組み合わせるかと言えばアフリカ以外のエレクトロな音楽。
多国籍が嵩じて無国籍になる音楽というのがあるもので
Khruangbin もそうだし、ARCA や Bjork がその最たるもの。
この John Wizards もまたその旗手のひとつとなるか。
 
アフロビートをDJ的に編集したエレクトロというと
Radioheadトム・ヨークが結成した Atoms For Peace を思い出すけど、
あの雰囲気とも違っていて、西欧人が向こう側から試みたものと
実際にそこに住んでいる人たちが奏でる音楽の違いというか。
リアルな空気感がどうこうというよりも、そこで働く想像力の違いなのだと思う。
 
アルバムのジャケットには15曲の曲名と2013年、
謝辞のリストがあるだけで詳しいことはわからず。
後者の 『アフロ・ポップ・ディスク・ガイド』を参照すると
南アフリカケープタウンで出会ったホワイト・サウス・アフリカンと
ルワンダからの移民を核にしたユニットであるようだ。
 
全編浮遊感あふれる、ドリーミーでエクスペリメンタルなポップミュージック。
海外の子供向け番組の音楽をたまたま見かけたときに流れている
ユーモラスだけど音色がツヤツヤしていて意外とかっこいい音楽、それに近いかな。
ジャケットも絵本のようなモノトーンの細密画。その断片。
機械仕掛けの魔法の国が雲の隙間から見える、というような。
このジャケットを見てピンと来た人は買った方がいいと思う。
 
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Mighty Spallow 「Hot and Sweet」
 
紀伊国屋書店の DiskUnion で見かけて、おっ、と思うがその日は我慢して買わず。
一週間経っても気になり続けてやはり買うことにした。
マイティ・スパロウという名前は何となく知っていて、カリプソの人だと。
 
南国の島、向こうに青い海が広がる、
背の高い木が1本ずつ左右から対称になって伸びているという絵。
真ん中にマイティ・スパロウのキリッとにらみつけた肖像画
雷のようなものが左右に伸びている。
ベタベタでかっこ悪いのが3周回って今はかっこいい。
このジャケットが素敵すぎて。絶対当たりだろうと。
実際大当たりだった。
 
ワーナーの”名盤探検隊”のシリーズの1枚。
マイティ・スパロウがワーナー傘下のリプリーズから出した唯一作品とのこと。
作品そのものは1974年で、1998年の時点で世界初CD化とある。
なかなか再評価されなかったのだな。
 
聞いてみると何の迷いも悩みもないご機嫌な曲がこれでもかこれでもかと続く
豪華絢爛カリプソ絵巻。
ちょっとやそっとの落ち込んだ気分は一発でふっとぶ。
 
こういう音どこかで聞いたな、と思い返してみると細野晴臣YMO結成前のソロの諸作。
泰安洋行」や「Tropical Dandy」の辺り。
マイティ・スパロウの影響を受けていて、
となんかの解説かなんかのディスクガイドで読んだようなよんでないような。
なんにしてもこのアルバムのプロデューサーが
「Song Cycle」のヴァン・ダイク・パークスなので
そこから経由したんじゃないかな。
 
解説を読んだらヴァン・ダイク・パークスは何もせずに
オブザーバーに徹して好きにやらせたのだとか。慧眼だな。
レコーディングでは一歩引いていたとしても、
マイティ・スパロウを改めて世に紹介するという大役を果たした。
ヴァン・ダイク印の信頼と実績のセレクトショップに置くようにしたことで
別の文脈で語られるようになった。
1990年代前半に渋谷系
1980年代初めのシティ・ポップバート・バカラックを再評価したように。
 
マイティ・スパロウは1935年生まれ。トリニダーゴ・トバゴで育って1956年にデビュー。
今年85歳でまだ現役で活動中。