先週買ったCD #14:2021/01/11-2021/01/17

2020/01/13: diskunion.net
Enya 「Shepherd Moons」 \2250
 
2020/01/17: diskunion.net
羅針盤 「ソングライン」 \2650
Annie Lennox 「Cold + Unplugged Live」 \580
James Carr 「You Got My Mind Messes Up」 \2151
(Soundtracks) 「Flashdance」 \880
 
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Enya 「Shepherd Moons」
 
洋楽を聞き始めた中一の頃、
エンヤ ”Orinoco Flow” がテレビやラジオで毎日のようにかかっていた。
1988年のヒット曲。
こんな曲初めて聞いた! と思った。今もそう思う。
クラシックの楽器をバックに歌うのにオペラやミュージカルではなく、
弦楽器も多重録音したヴォーカルも色鮮やかに弾ける。
水滴のようにこぼれるスタッカートが、進軍の銅鑼のような太鼓が、
耳にこびりついて離れない。
歌っていることも突き詰めると、オリノコ川を船で行こう、ただそれだけ。
恋愛のレの字もない。(いや、なんかの寓意かもしれないが)
なんでこんな曲がヒットしたのか、全世界で流れたのか、よくわからなかった。
 
いろいろと曲の背景がわかったのが、今はなき BS-TBS の『Song To Soul』だった。
アイルランドの、自ら住む城にてエンヤ本人が登場してあれこれ語った。
有名な曲を扱うのでなかなか本人が登場することはないのに、なんといい人だろう。
この番組は取り上げる曲に関連する隠れたテーマが必ずあったんだけど、
このときはケルト音楽についてだった。
確か教会や若い頃のエンヤが歌っていたパブを回っていた。
同じくケルト音楽のレジェンド、Clannad のサポートメンバーとしてデビューしたが
アルバム2作で脱退。
しかしこの時のプロデューサーとその妻の作詞家と歌、演奏のエンヤのトライアングルで
今も完璧主義的なスタンスで美しい楽曲を生み出し続ける。
そういう内容だった。
 
たまに、”Orinoco Flow”が無性に聞きたくなる。
初期の作品、その”Orinoco Flow”の収録されたメジャーデビュー作「Watermark」や
その次の最高傑作と称されることの多い「Shepherd Moons」などが
リマスター、SHM-CDで2009年に再発されていたことを昨年知る。
「Watermark」はすぐ入手できたけど、その他がなかなか見つからない。
特に「Watermark」の前の、テレビのドキュメンタリー番組のサントラとして製作された
その名も「The Celts」が DiskUnion に中古で出てきても
倍近い5,000円ぐらいになってなかなか手が出ない。
この 「Shepherd Moons」 も DiskUnion で全く出てこなくて、ようやく。
 
”Orinoco Flow”のような有名な曲はないものの、
その後のベストアルバムに収録された”Book of Days”など隠れた名曲ばかり。
「Shepherd Moons」の後で「Watermark」と遡って聞くと、
「Watermark」はまだ手探りの習作だったんだなということがよくわかる。
いや、もちろん手を抜いていたとかよくわからずに妥協したというわけではなく、
初めてメジャーでのアルバムを完成させた経験を経て、さらなる旅に出たというか。
「Watarmark」がケルトの聖なる森のとば口に立って、見渡して、
この森は広いと感じているような視覚のアルバムだとしたら、
「Shepherd Moons」は実際にその中を歩いてその広さ、深さを感じているような。
森のざわめきに耳を澄まし、地面にこぼれた枝を踏みしだき、水辺の匂いに触れる。
単なるヒーリングやニューエイジにとどまらない、深遠な音楽がここにある。
かといって正座して眉間に皺を寄せて聞くべしではなく、普通にBGMとしても聞き流せる。
森の中の風景を表した、青を基調としたジャケットも美しい。
 
エンヤはその後『ロード・オブ・ザ・リング』の主題歌を手掛けたりもしたけど、
僕もこのアルバムが最高傑作だと思う。
まだ自分の中の未知なる部分があった。
 
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Annie Lennox 「Cold + Unplugged Live」
 
80年代UKロックにおいて
Eurythmics のヴォーカル、アニー・レノックスは絶対的な女王であった。
今もよくラジオで”There Must Be An Angel (Playing With My Heart)”や
”Here Comes the Rain Again”が流れるが、
そのドスの利いた歌声に圧倒的な存在感がある。
エレガントなドレスを着て無数の宝石を散りばめた王冠をかぶった昼の女王でもあり、
同時に漆黒のボンデージファッションに身を包んだ夜の女王様でもある。
サディスティックにして、マゾヒスティック。
秘められたものの妖艶な香りをプンプンとさせる。
 
その Eurythmics は前身バンドにて恋人関係にあった
デイヴ・スチュワートとの恋愛が終わって関係を解消したときに
純粋に音楽的な目的のため結成された。
この時点でどこか倒錯的なところがある。
その Eurythimics が80年代と共に終焉を迎えて、アニー・レノックスはソロとなった。
デイヴ・スチュワートからついに離れた。
 
このアルバムはその1作目「Diva」からのCDシングル3種類をまとめたもの。1993年。
1曲目が”Cold”という曲なのは変わらず、
残り3曲を1992年の Unplugged Live から3曲ずつ収録している。
1枚目が「Diva」の曲、2枚目が Eurythmics の曲、3枚目がカバー曲。
それぞれ、”Cold” ”Colder” ”Coldest”と名付けられている。
比較級と最上級。教壇に立つアニー・レノックスから英語の授業を受けているかのよう。
発音が悪いと言葉の鞭で打たれるような。
 
ちなみに、Eurythmics の3曲は ”It's Alright(Baby's Coming Back)” 
”Here Comes the Rain Again” ”You have Placed A Chill In My Heart”
カバー曲はアイク&ティナ・ターナーの ”River Deep Mountain High”
恐らく The Detroit Emeralds の”Feel The Need”
ビートルズの”Don't Let Me Down”
Eurythmics の軛から逃れ、リラックスして歌っている。
歌のうまさは際立つが、かつてのような鬼気迫るものはない。
それを成熟ととるかどうか。
僕自身は物足りなく感じてしまう。
 
そういえば、こういうCDシングル3枚組のセットみたいなパッケージ、最近見なくなった。
90年代前半だけかな。僕が他に持ってるのだと
R.E.M. の1991年「Out Of Time」からのシングルをまとめた「Pop Game '92」など。
21世紀に入ってただでさえ CD が売れない今この時代、
こういう冗長なフォーマットは敬遠されるか。
いや、逆に、そっけない CD1枚よりも
このようなノベルティ的要素の高いコレクターズ・アイテムの方がよいか。
形あるものを商品として売るならば、特別感を前面に打ち出すほうが売れるはず。
4曲ずつ聞いてCDトレイを入れ替えるのはなんとも不便だけど……
となると、曲は1枚に集めて、ダウンロードコードを添えて、
豪華なブックレットや写真集を添えるという K-POP の戦略は理に適っているのだな。