先週買ったCD #12:2020/12/28-2021/01/03

年内最後に買ったのが Dr. Dre
今年最初が Superfly で。
さてさてどういう一年になるか。
 
2020/12/28: Tower Records 光ヶ丘店
Mr. Bungle 「The Raging Wrath of the Easter Bunny Demo」 \2530
 
2020/12/28: Tower Records 新宿店
青葉市子 「アダンの風」 \3300
Mr. Bungle 「Mr. Bungle」 \2200
Arctic Monkeys 「Royal Albert Hall」 \2530
(V.A.) 「DJライブキッズあるある中の人 presents 『フェス行きたい!』 ~邦ロックフェス入門編~」 \2200
 
2020/12/28: DiskUnion 新宿中古館
Paul McCartney 「McCartney Deluxe Edition」 \2900
 
2020/12/28: www.amazon.co.jp
San Ni Lim 「The First」 \1216
Hootie & The Blow Fish 「Cracked Rear View +5」
 
2020/12/28: diskunion.net
Coil 「Heartworms」 \1650
Coil 「I Don't Want To Be The One」 \1800
(Soundtracks) 「Capricorn One」 \3000
 
2020/12/29: www.amazon.co.jp
Jerry Garcia, David Grisman & Tony Rice 「The Pizza Tapes」 \950
 
2020/12/30: diskunion.net
Ghost 「Lama Rabirabi」 \741
Ghost 「Heavy Chamber Works '98」 \931
Ghost 「Anaphase」 \836
 
2020/12/30: TowerRecords 光ヶ丘店
Dr. Dre 「The Chronic」 (\2090)
タワレコのポイントで
 
2020/01/02: www.amazon.co.jp
Superfly 「O」 \1480
 
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(V.A.)  「DJライブキッズあるある中の人 presents 『フェス行きたい!』 ~邦ロックフェス入門編~」
 
意外なところから面白いCDと出会うもので。
妻が公園脇の図書館に行ったときにたまたま見かけて借りてきたというのがこれ。
DJによるインタールードも含めて全45曲。
フェスで盛り上がる曲、フェスに関する曲をギュギュっと詰め込んでいる。
ヤバイTシャツ屋さん ”ハッピーウェディング前ソング”に始まり、
打首獄門同好会 ”日本の米は世界一”で〆るというなんともわかってる選曲。
(2018年のCDだからで、2020年に作っていたらまたガラッと変わるのだろう)
バックドロップシンデレラ "フェスだして"はタイトル通り、
フェスに出たいというただそれだけを訴える曲だったりする。
”ライブキッズあるある中の人”という方の Twitter から始まったもので、
ライブあるあるを発信していたようだ。
それがミックスCDというヴァーチャルなフェスに結実した。
 
勢いのあるロックで序盤飛ばして、中盤は往年の名曲たち。
Orange Range ”上海ハニー”
チャットモンチー "シャングリラ"
電気グルーヴ ”Baby's on Fire”
ねごと ”カロン
MAN WITH A MISSION ”FLY AGAIN”
という流れに、わかってるなあと。
恥ずかしながら正直に言うと、KEYTALK / androp / the telephones の辺りは初めて聞いた。
嘘とカメレオン、超能力戦士ドリアン、おいしくるメロンパンなど名前も知らないのが多かった。
POT ”Choo Choo TRAIN” のような大ネタ変化球のカバーもフェスっぽいし、
後半も終わりが近づくと、かりゆし58 ”アンマー”のような泣ける名曲も出てくる。
収録曲の 3/4 ぐらいが2010年代。
クレジットを見ると一番古い曲は RIZE ”カミナリ”かな。でもこの曲も外せないですよね。
 
ほとんどの曲が最初のサビを終えたらどんどん次の曲へ。
壮大なメドレーのよう。どんどん突き進んでいく。爽快。
ああ、このごった煮だけどゆるい統一感がフェスっぽい。
よくできてるなあ。
ロックのコンピってただ並べただけの平板なものが多い中で
ここ20年の日本のロックの魅力をみっちり引き出す形で俯瞰できるというのもいい。
 
無料で借りることのできるのはありがたいけど、
図書館に置いてあるCDって謎なもので。
最大公約数的に売れるものというセレクションではなく、
ある種の公平性が保たれているんだろうけど
それでもなんでこのアルバムはあるのにもっと有名なあのアルバムはないのだろう、
と首をかしげることばかり。
(そもそも輸入盤を置いていないのはなぜなんだろう。条例で決まっているのか、慣習的なものか)
そんな中、こういう秀逸なCDを入れてくれた人がいるわけで。
図書館の中の人なのか、練馬区の中の人がリクエストしたのか。
一聴してこれはいいと自分でも買ったんだけど、
妻が借りたCDは返却期限が過ぎたので返しに行かないと。
次の誰かへ、練馬区の子供たちへ。是非聞いてほしい。
 
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Jerry Garcia, David Grisman & Tony Rice 「The Pizza Tapes」
 
27日、今年最後のInterFM『Lazy Sunday』にて
リスナーの方からのメールでトニー・ライスが亡くなったと。
リクエストを受けてジョージさんがかけたのがこのアルバムからの曲で
ボブ・ディランのカバー ”Knockin'on Heaven's Door”
枯れ果てた、人生の旅路を終えた男が今まさに荒れ果てた天国の門を叩くかのような。
これは大晦日、今年一年を振り返りながら夜更けにウィスキーと共に聞くのがよいだろう。
そう思ってすぐ amazon でオーダーした。
 
Grateful Dead のジェリー・ガルシアがヴォーカルとギター。トニー・ライスがギター。
デヴィッド・グリスマンという方のことはよく知らなかったんだけど、
トニー・ライス同様にブルーグラス系でマンドリンの名手であるようだ。
この3人だけ、ギター2本とマンドリンだけの演奏で、半分はインストゥルメンタル
半分はジェリー・ガルシアの枯れつつあるヴォーカルが入る。
アルバムとしての発表は2000年だけれども
1993年に録音なのでジェリー・ガルシアの亡くなる数年前となる。
晩年期のセッション。余分なものは捨て去って、弦の響きと声のぬくもりだけがある。
そしてそのどちらも今にも消え入りそうになっている。その最後のきらめき。
 
『Lazy Sunday』でかかっていいなと思ってジェリー・ガルシアのソロは何枚か買ったものの、
自分一人で iPhone で聞いているとそれほどでもない。
1976年の「Reflections」は学生時代、従姉妹の家に遊びに行ったときに聞かせてもらって
いいアルバムだと覚えていた記憶があるのに。
20年以上を経ての再会であっても聞いてみるとさほどでもない。
不思議なもんだと首をかしげる。ラジオってそういうところがある。
リスナーからのリクエストがあってDJがそれをかける。
その一連の流れに差し挟まるトークと相まってより素晴らしく聞こえるのだろう。
全国のリスナーたちと一緒に聞いているという場を共有する感覚もあるか。
 
そんな中でもこのアルバムは違った。
演奏は3人ともべらぼうにうまく、心地よい緊張感がある。
しかしどんなに熱を込めて速弾きをしたとしても、
これは彼岸に向かうための音楽なのだという黄昏の中にあって全てが儚い。
他、”アメージング・グレース”や”朝日のあたる家”をカバーしている。
 
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Mr. Bungle 「The Raging Wrath of the Easter Bunny Demo」
 
Faith No More のヴォーカリストマイク・パットン
本業バンド、Mr. Bungle の再結成後21年ぶりのニューアルバム。
個人的には2020年のベストアルバムはこれでいいんじゃないかと。
 
Faith No More はマイク・パットン加入後の「The Real Thing」(1989)でブレイク。
次作「Angel Dust」(1992)は日本の洋楽シーンでもかなり話題になった。
Fishbone や Red Hot Chili Peppers らと並んで
ロック+ファンクやメタル+ラップといったミクスチャーロックの元祖のひとつとされた。
Faith No More はその中でもハードロック、ヘヴィメタ寄りのサウンド
オルタナティヴロック側の受けは良かったものの、
HR/HM側の受けはあんまりよくなかった印象がある。
いろんなジャンルを取り込んだ音、
というのがストイックな HR/HMファンからすれば散漫に感じられたのだと思う。
 
こういったミクスチャーロックは基本、
様々なジャンルの音を演奏しなければならないのでメンバーの演奏能力は高い。
バカテクゆえに変態と呼ばれもする。
Faith No More もメンバーのいで立ちがバラバラでキャラが違いすぎ、
なのに演奏がしっかりしていたので変態と称された。
Mr. Bungle が登場した時は別な意味で、というか本来の意味で変態と。
ジャンルを融合させるどころかジョン・ゾーンの Naked City ばりの支離滅裂。
突然ゲーム音楽が挿入されるとか。スカかと思えばホラー映画みたいな展開だとか。
実際、1枚目はジョン・ゾーンがプロデュースした。
(その時の邦題は「オペラ座の変人」)
こちらを聞いてから戻ると、Faith No More はただのハードロックバンドにしか聞こえない。
 
当時は副業のように思われたものの、
本来マイク・パットンがやりたかったのはこちらなんですよね。
IQ190なんて噂もあった天才。
情報のインプット/アプトプットの量がすさまじい。かつ速い。
ハードコアメタルもイタリアの60年代のポップソングも等価に扱って
何オクターブあるのかデス声も朗々たる声も自由自在に使い分ける。
まさに七色の声。
この人の何が頭いいかって、全米ブレイク寸前だった Faith No More にスカウトされて
引き抜かれたときに、Mr. Bungle も両立させる権利を主張して勝ち取ったことなんですよね。
今でこそいろんなミュージシャンが複数のサイドプロジェクトを抱えるのは当たり前だけど、
80年代末の産業化したメインストリームのロックではそんなややこしいこと嫌がられるわけで。
契約でアーティストを縛ってしまいたかった。
 
Mr. Bungle は90年代に3枚のアルバムを出して解散。
今回のアルバムは活動初期の10代の頃、1986年につくったデモテープを録り直したもの。
オリジナルメンバーのギター、ベースに加えて
ヘヴィメタ四天王である Anthrax のギターと Slayer のドラムを迎えて
ガチのスラッシュメタルのバンドになってしまった。
ひ弱な少年が夢想した夢の超合金ロボを
大人になって経験と人脈と財力を総動員して現実化させたような感じ。
身もふたもないんだけど、これがまたかっこいんだからしょうがない。
 
ドラムやギターの速さ、硬さ、正確さといった性能面では
これ以上のものを望むのは難しいんじゃないか。
HR / HM に詳しいわけではないんで何とも言えないけど。
HR / HM の魅力が、リングサイドの柱に括り付けられて
グローヴで頭をぼこぼこに殴られることで恍惚の瞬間を迎えることだとしたら
これに勝る音楽はそうそうないと思う。
とにかく、近年めったにないぐらい確信に満ちた音楽。
これをやりたかった、ずっとやりたかった、それを今やっているという凄み。
それが音の塊としてグイグイ押し寄せてくる。
 
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Hootie & The Blow Fish 「Cracked Rear View +5」
 
前の週、ハヤカワ・ノンフィクション文庫
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ壊した男たち』を読んでいるということを書いたとき、
レコード会社からすればベストアルバムとは最も売れたアルバムのことであって
1995年だとそれは Hootie & the Blowfish「Cracked Rear View」なのであると。
名前は知っていたが、聞いたことはなかった。
当時読んでいた Rockin'on でも猛プッシュされることはなかった。
むしろ恥ずかしい存在というか。
ロックを普段聞かない人たちが聞く売れ線の音楽という扱い。
 
全く聞かずに言及するのもなんだよなと amazon で購入してみる。
国内盤が1円とか。確実に帯付きとわかるものにしようと100円のを選んだ。
CDトレイに入れて聞いてみる。
ふ、ふつう……、つ、つまらない……
最初の印象はそんな感じ。
まあ一応義理は果たしたし、CDラックのHの段に入れておくか、Hooters の隣だな。
そう思いつつ、ほったらかす。
Bluetooth に切り替えて iPhone に入れていたアルバムを聞く。
Henry Cow とか Ghost とか国内外のアバンギャルドなもの。
ひとしきり聞いて、あ、まだ入れっぱなしだったか、まあいいや、めんどくさいからと
Hootie & the Blowfish をもう一度再生してみた。
お、と思う。さっき聞いたよりは悪くないかな。
難解な音楽の後だけにすーっと身体に入ってきた。
ささくれだった心に水をやるような。
次の日、念のためもう一度聞いて確信する。
あ、これ、いいな。
 
取り立てて曲がいいとか、これみよがしに演奏がうまいとかそういうことはない。
結成以来小さい車に機材を積み込んで全米各地を演奏して回ったんだろうな、
という足腰の強さだけを感じる。バンドの佇まいのしなやかさというか。
その心地よさ。耳に残るキャッチ―は曲は皆無。
だけどアルバムに流れている風通しのよさがいい。
 
普通の人というのが存在しないように普通のバンドというものもまた存在しない。
統計学的には各項目の平均値はあっても、その通りとなる人はいない。
そこからずれるのが当たり前であって
誰もが変な人でありどのバンドもどこか変なバンドなのである。
それが普通なのである。
裏返して、Hootie & the Blowfish もここまで
”普通”のイメージに近いバンドがあっていいのだろうか、
変じゃないか、と。
 
このアルバムはよくできてるけど、その後のアルバムはどうなんだろう。
別の意味で、もっと普通なんだろうな。