こういう話

主人公は大学生。19歳の夏。
休みに入って青森に帰省しようとすると
ひとつ上の先輩が車で北海道に帰るから一緒に行かないかと誘われる。
暇だしそれもいいかと思う。
 
海の向こうでは戦争が始まっていた。
片方の国は以前から核実験を行っている。
国境沿いの小競り合いから始まって、
今は周辺の大国を巻き込んで緊張状態が続いている。
しかし、まだ日本はどちらの側に付くという決断は行っていない。
国連やアメリカの動向を伺っているだけ。
生活に黒い影を落としつつあるが、まだ大きな影響は受けていない。
 
下道を走っていく。
大雨。先輩が煙草休憩を、とコンビニに寄ろうとすると駐車場にずぶ濡れの男女が。
20代後半ぐらいか。
先輩がライターがなくて困っていると男性が貸してくれる。
主人公たちの行く先を聞くと、彼らは車に乗せてほしいと頼んできた。
まあいいですよ、ということになる。
 
彼らは海の向こうから来たスパイだった。
しかし、とある事情からその国から追われることになった。
金もなく、着の身着のままの状況で北海道のある地点へと向かう必要があった。
主人公たち二人はそのことを知らない。
もちろん彼らもそんなことを自ら話すことはない。
とはいえ、主人公二人はなんとなく何かがおかしいことに気づき始める。
 
車は北へと向かう。海辺を走ったり、離れたりしながら。
戦争のことを話したり、とりとめなく普通のことを話したりしながら。
海辺の町で一泊する。
そのうちに青森に着く。
主人公の家に寄っていく。
主人公の両親は先輩のことは歓迎するが、
連れてきた男女のことは快く思わない。
そのことについて、主人公も快く思わない。
 
主人公の中に何か使命感と呼ぶべきものが生まれる。
先輩たちに着いて一緒に北海道に渡ることにする。
カーフェリー乗り場へ。
陸奥湾を船は行く。
北海道に到着する。
しかし、港で待っていたのは男女を追いかけてきた者たちだった。
連行される。
主人公二人も警察で取り調べを受ける。
しかし、何も知らないとしか言えない。
数日を経て釈放される。
突然、もう帰っていいということになる。
 
先輩はそのまま車で家に帰るという。
主人公はフェリーに乗って青森に戻る。
甲板に立って一人きり、波を見つめる。