『おかえりモネ』のこと

朝起きて、NHK-BS をつける。
朝ドラが2本続けて放送される。
過去の名作の再放送と、今シーズンの最新作。
 
『はねこんま』と『エール』
『みをつくし』と『おちょやん』
あぐり』と『おかえりモネ』
コロナ禍での中断もあったので
始まりと終わりの時期がそろわない時期もあるが、
こういう組み合わせとなった。
 
見ててつくづく思うのは、朝ドラの進化というもの。
正直、『はねこんま』も『みをつくし』も『あぐり』も
主演女優は突っ立ってセリフを言うだけ。
すっとこどっこいな主人公がやらかしたことでストーリーが動いて
たまたま偶然目撃したことでその真相がわかる。その繰り返し。
今週の『あぐり』はその最たるもので、
主人公のあぐりが余計なことをしなければ何も起きなかった。
しかし、そんなドラマでいいのだろうか?
 
もちろん、主演女優だった斉藤由貴沢口靖子田中美里
大根役者だったということではない。
そういう役柄しか与えられなかった、ということなのだと思う。
女性は受け身なもの、という社会的通念がまだ強かった時代。
 
このところの朝ドラに思うのは、主演女優の役者としての逞しさ。
皆それぞれうまいよなあと感心させられる。
ここ数年では『まんぷく』の安藤サクラ
『スカーレット』の戸田恵梨香が圧巻だった。
女優魂を見るような朝ドラだった。
 
『おかえりモネ』も傑作の予感がする。
最初は東北の人の好さ、自然の豊かさだけを
ひたすら前面に押し出した癒し系なのかと思いきや、
じわじわと少しずつドラマの背景が明かされていく。
2014年なので震災から3年。
全然そのことには触れないなと思っていたらあるとき、それが来た。
人の好さ、自然の豊かさを散々見せられて下地がしっかりできた上で
その日のことが描かれる。
そしてその後でまた、人の好さ、自然の豊かさを淡々と描いていく。
モネが夏休みで実家に帰るというときに
近くの農家のおばちゃんたちがこれをもってけ、あれをもってけと笑顔で。
その笑顔の背景にあるものに思いを馳せると、深い。
多くを語らない夏木マリにもそれまで背負ってきた、
このドラマでは恐らく描かれることのない物語の、その大きさを感じる。
 
皆が体験した震災であれ、個人的に降りかかった不幸であれ、
その理不尽さを今、一心に体現しつつある、
少しずつ境遇が明かされつつあるのが漁師をやめて酒浸りの浅野忠信で。
震災と復興の歪みがこれから先描かれていくのだなと予感される。
 
それはそうと。
『おかえりモネ』という名前がいつもどうしても思い出せず。
妻と話していると
「『おはようモネ」が始まるよ」
「ちがうよ、『ただいまモネ』だよ」
「『さよならモネ』じゃなかったっけ?」
いつまでたっても帰りつけない。