『限界ニュータウン』

先月末に出た吉川祐介『限界ニュータウン』(太郎次郎社エディタス)という本を読んだ。
 
70年代の土地投機ブームで千葉県北東部に乱造された粗雑な分譲地の多くが、
投機目的ゆえに購入者の多くが住む気がなく当初から空き地だらけで草ぼうぼう、
住宅を建てた状態で販売したとしても安普請で手入れされずに崩壊しそうなものもあり、
道路や開発会社の引いた水道といったインフラも破綻という状態にある。
持ち主の多くも連絡が取れず、当時の不動産開発会社もバブル崩壊で消えた。
野放しとなっているところをなぜか大阪の不動産会社が買い漁って売りに出していたりする。
誰が所有者になっているか不明な土地は行政も手出しができず、
近隣のものが勝手に使うこともできず。草ぼうぼうのまま荒れ果てていく。
価格はもちろんただ同然。
 
全然知らなかった。いや、ほんとびっくりした。
現在の法律ではどうにもならないことが多いが、それでも住んでいる人たちがいる。
井戸を掘って、浄化槽を設置して、持ち主と交渉できる場合は周りの土地を買い取ってと。
著者の方もそうで、少しずつ身の回りを整備しながら住み続けているようだ。
 
もともと住んでいたわけではなく、安い物件を探していたら結果そうなったのだという。
そしてこの「限界分譲地」「限界ニュータウン」の存在に気づき、ブログで発信。
それが話題となり本としてまとめられた。
研究者もそんなに多くない領域なのに自ら多くのことを調べ、解説する。
その文章がわかりやすくてよい。
内容も面白いし、一気に読んでしまった。
というか、成田空港の裏側にあたる千葉県北東部、
芝山町横芝光町に行ってみたくなった。
 
法律が立ちふさがる以上、どうにもならない。
悲観的な状況は改善できないけど、
この本はそれでもしぶとくたくましく、楽しく住み続ける人たちを何人か紹介して終わる。
市街地に遠く学校や病院からも遠いとしても、荒れ果てた近隣を見過ごすしかないとしても、
知恵を使ってその土地を楽しむことのできる人がいる。
 
ブログ「Urbansprawl ー限界ニュータウン探訪記ー」
 
最近はYoutubeでも活動している。「資産価値ZERO ー限界ニュータウン探訪記ー」
 
実は、著者の方には一度お会いしたことがある。とある縁で。
もう10年以上前の話。
その頃はこういった限界分譲地とはまだ関わってなくて。
しばらくお会いしない間に、こんな面白い本を書くようになるなんて。
世の中捨てたもんじゃないなあと思った。