先週買ったCD #134:2023/05/08-2023/05/14

2023/05/09: www.amazon.co.jp
阿部芙蓉美 「ブルーズ」 \900
 
2023/05/10: diskunion.net
Rita Reys 「The Cool Voice Of Rita Reys No.2」 \1100
Kenny Burrell 「Introducing Kenny Burrell」 \1700
 
2023/05/11: バナナレコード アスナル金山
Pale Fountins 「Pachific Street」 \790
Patricia Kaas 「Piano Bar」 \690
 
2023/05/11: DiskUnion 名古屋店
Marshall Tucker Band 「Where We All Belong」 \880
Glenn Frey 「The Allnighter」 \480
Iggy Pop 「Best Of... Live」 \380
Al Green 「Tokyo... Live」 \1300
Adrian Sherwood 「Never Trust A Hippy」 \380
Zola Jesus 「Okovi」 \480
Grateful Dead 「Dick's Picks Vlume Five」 \1900
 
2023/05/11: バナナレコード 名駅
Judy Roberts 「The Other World」 \890
(V.A.) 「Now And Forever The Roots Of Carpenters」 \1490
 
2023/05/11: diskunion.net
阿部芙蓉美 「How To Live」 \880
Joe Strummer 「001」 \2450
 
2023/05/13: www.amazon.co.jp
POiSON GiRL FRiEND 「rondoElectro」 \2421
 
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阿部芙蓉美 「ブルーズ」
 
なんで僕はこの人を見逃していたのだろう、何年も、何十年も。
そんなふうに悔やむことが年に何回かある。
こんな素晴らしい音楽があったんだな、という驚き以上に
皆知っていたのに僕だけが知らなかったという劣等感のようなものを抱く。
 
今回僕はそれを阿部芙蓉美に感じた。阿部芙蓉美に、あった。
阿部と打てば「阿部芙蓉美」が検索候補に出てくるぐらいメジャーなのに
僕はこの人の音楽を聞いたことがなかった。
 
いや、実はあった。iPhone にも入れていた。
大友良英サウンドトラックス vol.0」(2010)というアルバムの中で
岡林信康のカバー ”私達の望むものは” を歌っていた。
聞くたびに、いい声だな、と思っていた。
なのにそれを歌うのが誰かを僕はなぜか探さなかった。
何度も僕の目の前を素通りしていた。
 
先日、神保町PASSAGEで一日店長を務めた。
その特権で店のBGMを好きに選ぶことができる。
これはうれしい、なんにしようあれにしようとあれこれ考えていたが、
USENの提供するサービス『OTORAKU』に登録されている楽曲でなければならないという。
好き勝手に iPhone からスピーカーに流すわけにはいかない。
そこでまずひとつ残念となって、かつ、アプリが使いにくくてよくわからない。
プレイリストは10個しか作れなくて、既に10個作成済み。
タイトルが付いてないものばかりで誰が作ったものなのかさっぱりわからない。
消していいかどうかわからない。
仕方なく、律儀にタイトルをつけていた棚主さんのプレイリストに間借りさせてもらった。
 
そもそも『OTORAKU』がキーボード入力できなくてフリック入力のみ。
イライラして仕方ない。
そんなときはマニアックなものを入力する気になれず、
当たり障りないものにしたくなる。
試しにビル・エヴァンスアストル・ピアソラのアルバムを追加するが、
プレイリストを開いてもそれが出てこない。
(再生するにはプレイリストを一度開き直す必要があったが、気づいたのはだいぶ後だった)
イライラ最高潮。そんな中、レジに来たお客さん相手に接客もしないといけない。
あー仕方ない、この棚主さんが以前入れた音楽を聞くかと再生ボタンを押す。
最初はエンヤのベスト。ま、いいか。
 
その次に入っていたのが阿部芙蓉美「ブルーズ」だった。
どこかで聞いたことのある名前だが……
期待せずに聞いてみた。
 
1曲目の”ドライフラワー”で心を鷲掴みにされた。
その曲を、その声を聞いただけで目の前の風景が変わるような、
風景の位置づけ・意味づけが変わるような、そんな瞬間がある。
それがそこにあった。
愁いを帯びた、かすれかけた低い声。
切なさの中をもがきながら前に進んでいくような。
これは10年に1人の声だな。
 
プレイリストには次のアルバム「沈黙の恋人」も入っていたので続けて聞いた。
閉店時間までの間、この2枚を繰り返し繰り返しかけ続けた。
帰りの地下鉄の中で早速オーダーする。
1作目の「ブルーズ」(2008)は amazon で、
3作目の「How To Live」(2013)を DiskUnion で。
案外、あまり出回っていない。
2作目の「沈黙の恋人」(2012)は入手困難で、amazon で今5,000円近くする。
 
北海道出身のシンガーソングライターということを知る。
CDを出したのは2014年が最後だが、配信限定のシングルはその後も発売されている。
公式サイトを見たらつい先日、5月1日に能楽堂でライヴを行ったようだ。
 
いや、ほんといい声。
儚い。
黄昏時や夜明けの、夜の境い目の特別な光を放つ一瞬を宿した声。
ああ、そうか、ブルーズだもんな。
 
これはいつかライヴを聞きに行きたい。
もっと知りたい。
久しぶりにそう思わせるアーティストだった。