「ミスティック・リバー」

会社の帰り、お台場に行って「ミスティック・リバー」を見る。
探してみたらやってるところは新宿・六本木・お台場しかもう残ってなくて。
しかもどこも今週まで。
来週やるところもあるけどレイトショーになっていて。
新宿だと帰り道なんだけどこの前の日曜に失敗したので避けたくなる。


お台場って会社のビルからだと
目と鼻の先にあるように思えるんだけど普段行く機会は全くなし。
会社のクリスマス・パーティーで行くぐらいか。1年に1回。
川で隔てられてるってのがでかいのかな。
ゆりかもめ」ぐらいしか交通手段ないし。
去年開通した「りんかい線」もなんだか使いにくい。


ゆりかもめに乗って台場駅まで。
隣の席に座っていた男性が、地方から上京してきたらしい女性に向かって
あれがフジテレビで、あれがレインボーブリッジで、と解説をする。
乗ったことのある人ならわかると思うけど、
ゆりかもめってレインボーブリッジの下を走る直前でコースが一回転している。
あれって竹芝桟橋日の出桟橋の辺りの駅を走っている時点での高さと
レインボーブリッジでの高さと吊り合ってないから、
一周する間に少しずつ高度を稼いでいるのだそうだ。
それとなく聞き耳を立てていて、心の中で「へぇー」と思う。
僕はてっきり景色を眺めるためのものだとばかり思っていた。


夜のお台場へ。
映画が始まるまで1時間半近く時間が空いてて、することもなくフラフラと歩く。
台場駅で降りたのでAQUA CITY → DECKS へと進んでいくことになる。
東京での生活11年目にして初めて、きちんと時間をかけてこの界隈をあちこち見て回った。
DECKS は普通のショッピングモール(近いのは船橋の「ららぽーと」か)みたいなもので
AQUA CITY はより洗練された場所だということがわかった。
(わかったところでだからなんだ、というのはあるが・・・)
それにしてもこういうところって30にならんとしている男性が1人で歩くのには
ほんと適してないっていうかそれ以前に人がほとんどいない。
平日だからだろうか。土日はすごいのだろうか。
AQUA CITYの6階がワールド・オブ・コカコーラってのになってて
いろんなコカコーラグッズを売ってたんだけど、ものすごくガラガラ。客よりも店員が多い。
これでいいのだろうか?と他人事ながら心配になってくる。


川縁へと降りていく。夜。人気は全くない。
雰囲気的には海に近い。すぐ側が海なのだから当たり前か。
対岸に東京の夜景が見える。聳え立つ高層ビル、東京タワー。
喧騒はここまで伝わってくることはなく、静かな感じ。
来週の土曜13日に会社の人たちと撮影をするのであるが、
お台場まで来るっていうのでもいいな、なんて思う。

    • -

ミスティック・リバー」を見る。
先日発表されたばかりのアカデミー賞では
ショーン・ペンが主演男優賞、ティム・ロビンス助演男優賞を受賞。
作品賞・監督賞にもノミネートされていたけど
今年は「ロード・オブ・ザ・キング」1人勝ちだったためオスカーの獲得はならず。
他の年だったならば余裕で受賞できてたんじゃないか?惜しいよなあ。


見た人ならみんな言うことだと思うんだけど
やはり幼なじみでありながらその後別々の人生を歩むことになった
ショーン・ペンティム・ロビンスケビン・ベーコンの3人の演技が見事なものだった。
ティム・ロビンスの妻役だったマルシア・ゲイ・ハーデンも
ケビン・ベーコン扮する刑事の相棒役だった、
マトリックス」のモーフィアス役で有名なローレンス・フィッシュバーンもいい仕事をした。
結局は出演者たちに最高の演技の場・機会を提供したクリント・イーストウッド
最大の功労者ってとこか。


主役の3人はとにかくすごい。今後も代表作として語り継がれていくんじゃないかな。
ショーン・ペンはいつも通りのショーン・ペンであって
それを真摯に貫いたわけでわかりやすかったが、
僕としては最も唸らされたのはケビン・ベーコン
フットルース」の人でしょ?と今でも言われてしまうぐらいあの若々しさが印象に残ってるのに、
そんで最近の出演って言ったら逆切れ科学者が透明人間になって復讐という「インビジブル」なのに、
いつのまにあれほどまでの演技派になっていたのだろう?
残り2人と相対していても全然引けをとらず。
「この人かっこいいなあ」と僕は素直にそう思った。3人の中では。
ティム・ロビンスもどうしてもコーエン兄弟の「未来は今」を思い出してしまうんだけど、
あのときとは全くの別人。
少年時代に誘拐・監禁されて性的虐待を受けたトラウマを持ち、
「事件」に関わったことを引き金に精神のバランスを崩していく
背中を丸めて歩く侘しい中年男になりきっていた。


物語っつうか原作/脚本もよし。
映画を見てあれほどまでほろ苦い思いにさせられたのって最近全くなかったなー。
いくらなんでも悲しすぎるよ、あれは。


撮影もきれいだし、照明(大半の出演シーンで顔半分に影が当たっている薄暗さが絶品)も
丹念に計算されてる。関わってる人たちがみんな手堅くプロの仕事をしている。
大人の映画だ。


今年何か1本見るなら、ってことならまず間違いなくこれだろう。
アカデミー賞の結果からすれば「ロード・オブ・ザ・キング」って
ミスティック・リバー」よりも優れてるってことになるんだけど
実際のところどうなんだろう?