自分の声を聞く

映画の編集のためこれまで撮った映像を見ていると結構自分の声が入っている。
「僕がそのとき見た風景」ってのがテーマの作品だから全編僕の主観映像。
他人と接している場面では嫌でも自分の声が聞こえてくる。
聞いてて「やな声だなー」と思う。


普通の人は普段自分の生の声というものを聞くことはない。
バンドで唄ってるとかアナウンサーだとか、声を売りにした職業につかない限り、
自分の声が周囲から客観的に耳に飛び込んでくることは無い。
何かの拍子に撮られた音声、それこそビデオを撮ったときなんかに再生してみて、
「えー?俺(私)ってこんな声してたっけ?」と違和感を感じることになる。
なんでこんなに違うんだろうな。
聴覚と脳髄に関する神経的な問題なのか、それとも口・喉を通した共鳴の問題なのか。


高校時代、友人に「岡ちゃんと○○の声ってよく似てるよねえ」と言われて、「え!そうなの?」と驚く。
そんなこと思いも寄らなかった。
(ちなみに僕は中学高校と「岡ちゃん」と呼ばれていた。演劇部の後輩からは「岡ちゃん先輩」)
僕と彼の声は一緒なのか。
自分では決して気付かないだけにかなり不思議に思う。


たいがいの人は違和感を感じるのだから(僕はそう聞いている)、
生で聞いた自分の声というものを快く思っていないということになる。
否定的な印象が強くなる。
僕の場合、「なんでこんなヌトヌトした声なんだろうな」と思う。
歯切れが悪くてネトついた声。
普段僕は周りの人にこんな声を聞かせているのか!と考えると嫌な気持ちになってくる。
声質だけではなく、喋り方、発音の仕方ってのもあるんだろうけど。
(青森育ちなせいか、口をはっきり動かして発音しようとしない)
とにかく魅力が無い。
僕の言ってることは相手に正しく伝わっているのだろうか?とすら思う。
ビデオの音声を聞いているとボソボソしていて自分でもわかりづらい。


逆に考える。
世の中で魅力的な声の持ち主とされている人ってのは
自分の中でどんなふうに声が聞こえているのだろう?
今例えば思いつくのはベタながら森本レオなんだけど、
テレビのナレーションで聞こえてくる自分の声ってどんなふうな思いで聞いているのだろう。
慣れてしまってなんともないのかな。


きれいな女の人がきれいな声をしていて、
それでもふとしたはずみに耳にした自分の声に眉をひそめる。


みんながみんな違和感を感じるわけではないか。
どれぐらいの割合なんだろうな。
むしろ生の声の方がいい、という人も大勢いるに違いない。


それにしても話し方まで違って聞こえるのはなぜなんだろう。