僕の音楽遍歴 その10(高校3年②)

高校3年になる頃には洋楽というものに対してかなり詳しくなっていた。
パンク・ニューウェーブから遡っていって、もっと前の時代の普通のロックも聞き始める。
思いつく限り挙げてみると、
The Velvet Underground, The Doors , Roxy Music, David Bowie, The Kinks などなど。
The Band に代表されるような渋めのものには手を出さず、
どちらかというとやはりニューウェーブのルーツとなっているものを好んだ。


プログレも好きだった。
Pink Floyd 「原始心母」※
King Crimson 「Young Person's Guide To King Crimson
どちらが先だっただろうか。僕の心を掴んで放さなかった。
ニューウェーブ好きって要するに奇妙なもの、他にはないものに対する興味ってことになるんだけど
その感覚で言うとプログレってのもまたそういう要素が強いジャンルであって。
奇妙奇天烈なほどよかった。
Pink Floyd であるならば1枚目「夜明けの口笛吹き」の1曲目「天の支配」にかなりやられたし、
King Crimson であるならば「太陽と戦慄」のパート1とパート2。
クリムゾン・キングの宮殿」も相当なもんだけど。
(大学入学当初、国分寺レーザーディスクのカラオケ屋に行ったら
クリムゾン・キングの宮殿」があった。10分のうち、ほとんどが間奏なんだけど。
 ミニチュアの城を背景に指人形みたいなのが出てくるという映像だった)

※後世に語り継ぐべき素晴らしい邦訳だ。「Atom Heart Mother」を直訳しただけ。
 これはこれで勇気が必要だっただろう。


Yes も Emerson, Lake & Parmer ももちろん聞いた。
5大バンドのうち、Genesis はレンタルに置いてあっても手を出さなかった。
残りの4つに比べると多少地味だからか。
同じイギリスでも Soft Machine や Henry Cow や Van Der Graaf Generator のことは知らなかった。
あるいは Magma や Area といったユーロ系も。
でも、ジャーマン系は Can と Fasut は国内盤でたまたま入手可能だったので聞くことができた。
高1・高2の頃は Pink Folyd , King Crimson といった「表」のプログレが好きだったけど、
高3になってたまたま Faust を手に入れたときからは断然「裏」の方が好きになる。
どっちも衝撃だったなあ。
Can 「Future Days」の(どこの国・地域とも特定できない)エキゾチックな美しさ、
Faust 「So Far」のこの世のものとは思えない独自の世界観の構築。
(特に1曲目の「It's a rainy day, sunshine girl」)
どちらのアルバムも好きなアルバムを10枚選ぶことになったら必ず入る。
今でこそ Can はジョン・ライドン始め多くの先鋭的なアーティストに影響を与えたってことで
「伝説のグループ」として認知され、あちこちのディスクガイドに必ず載るようになったけど
90年代初めぐらいはまだまだ未知の存在であったように思う。
それは Faust にしてもそう。再発され、再結成されてからようやく光が当たるようになった。


奇妙な音楽への探求として、高校時代のピークとなったのは
Tuxedomoon と Penguin Cafe Orchestra の2つとなる。
これこそ他にはない音楽だった。
Tuxedomoon についてはことあるごとに書いてるので今回は長々と書かない。
先日書いた青森市のCDショップ「BE-BOP」で「Holy Wars」をたまたま手にして、
あまりにも印象的なジャケットだったためこのグループのことは何にも知らなかったのに買ってしまった。
一瞬にして異世界に連れてかれるような音だった。
青森市新城の方に「MEDIA-INN」という今の TSUTAYA の前身のようなレンタルの店があって、
ここに今思うと奇跡的なことに Tuxedmoon の残りの国内盤
「Pinheads on the Move」「Ship of Fools」が置いてあった。
3枚とも音楽性が全然違う。Tuxedmoon としか呼びようの無いものではしっかりと統一されてるんだけど。
そうだ、高3の夏に上京して初めて渋谷の HMV に入った時に買った1枚は
JIMCO から出た「Ten Years in One Night」の国内盤だった。今思い出した。
どの国内盤も解説は大鷹俊一で、グループのことを絶賛していた。
こういうこともあって、上京して大学に入ってからは大鷹俊一系とでも呼ぶべき、
ニューウェーブよりもさらに濃密な80年代のアンダーグラウンドのロックばかり聴き漁るようになる。
Pere Ubu であるとか。
渋谷陽一の時代を卒業して、大鷹俊一の時代に入ったわけだ。


余談。Crammed Disc の国内盤は薄い黄緑色の帯だった。
これも先日書いた洋楽のCDがレンタル不可になるという噂により
投売りされたCDの中に同じ黄緑色の帯を見つけ、
僕は The Honeymoon Killers「蜜月の殺人者」を買うことになる。
上京以後、この黄緑色の帯のCDを中古屋で見つけると条件反射的に手が伸びてしまう。
Minimal Compact にはこんなふうにして出会った。


Penguin Cafe Orchestra は同じく MEDIA-INN の中にあった。
(この2つのグループが置いてあるだけでも非常に特異なレンタルCD屋だった。心に残る)
CDが棚にずらりと並んでいる中でまずは名前の奇妙さに惹かれて手を取り、
これまた「Holy Wars」に負けず劣らない印象的なジャケットだったため、借りてみた。
初めて聞くのにどことなく懐かしい、不思議な音楽だった。
オーケストラと名乗るだけあってバイオリンやチェロといった楽器を中心とした編成で、
一聴するとミニマルなライトクラシック。
だけどその辺のロックは相手にならないぐらい、底知れない闇が広がっているように僕には感じられた。
優しくて時にはユーモラスなメロディーの陰で
ポツンと1人きり寂しくて、無機的で、孤独な音の風景、そのラフスケッチが描かれていた。
世間的には The Ventures 「Walk Don't Run」をカヴァーしている2枚目の評価が高いようだが、
僕としては断然1枚目。
A面1曲目「Penguin Cafe Single」では軽快に始まるのに
B面1曲目の「The Sound Of Someone You Love Who's Going Away And It Doesn't Matter」では
血も凍らんばかりのメランコリーが鳴らされていた。恐怖感すら感じた。
突き落とされるだけ突き落とされて、最後の「Chartered Flight」の優しさに救われる。。。

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僕の通っていた青森高校では東北大学に合格することが「勉強のできる人」の1つの基準となっていた。
なので僕も東北大学に進むものと思っていた。
だけど仙台じゃなくて東京にて学生生活を送ればもっともっとたくさんのロックを聴ける。
そう思った僕は高3の後半に進路希望を変えた。
必死になって受験勉強をして東京の大学に合格する。


受験や合格手続の前後、上京する度にちょこちょことCDを買う。
覚えているのは、
Gang of Four のベストや、The Lounge Lizards の1枚目の国内盤。
受験の時に初めて Disk Union に入って、HMV とはまた別の衝撃を受ける。
輸入盤の中古が山ほどある!


受験の時に親戚の家に泊まったんだけど、
10歳以上年の離れたいとこが King Crimson 「Earthbound」「USA」を
LPで持っていて、見つけたときにはかなり驚いた。
今でこそ再発されているけど、長いことロバート・フリップはCDでの発売を許可していなかった。
音質が悪いからとかそういう理由で。
90年代当初は聞くことのできない、幻の名作という扱いだった。
いとこにせがんでテープに落としてもらった。
あれは嬉しかったなあ。