dogs of lust

最上階の薄暗い部屋で目を覚ました。
スクリーンが淡い光を放っていた。
(映し出された映像が変化していく/音声は無い)
欲望の犬たちに関する短い考察。
犬たちは3種類の色をしていて、
それぞれ人間の持つ3つの欲望に対するメタファーとなっている。
ベッドの脇の小さなナイトテーブルには
透明な水が半分だけ注がれたグラスが置かれていた。
手に取って飲み干した。
映像が続いていた。唐突に終了するとまた最初に戻って繰り返された。
犬は四方をコンクリートで囲まれた空間で育てられていた。
ドアを開ける音がして振り返ると、彼女が入ってくるところだった。
彼女は黒い服を着ていた。「明かりをつけないで」と彼女は言った。
彼女は部屋の隅に立って壁にもたれた。そして腕を組んだ。
「犬」と彼女は言った。私もまた「犬」と言った。
彼女は服を脱ぎ捨てた。私もまた脱ぎ捨てた(私もまた黒い服を着ていた)。
彼女は私の乳房に触れた。その形を確かめるかのように触れた。
そして唇を使って同じことを繰り返した。
「犬」と彼女は言った。私もまた「犬」と言った。


全てが終わると、私は眠りについた。何もない夢を見た。


最下層の白い部屋で目を覚ました。
スピーカーがかすかな音を放っていた
(音声のみ/映像が伴うことはない)。
欲望の犬たちに関する短い考察。
犬たちは3種類に分かれる声質を持っていて、
それぞれ人間の持つ3つの欲望に対するメタファーとなっている。
そこにどこかの国の言葉によってナレーションが加えられる。
ベッドの脇の小さなナイトテーブルには
透明な水が半分だけ注がれたグラスが置かれていた。
手に取って飲み干した。
音声が続いていた。唐突に終了するとまた最初に戻って繰り返された。
犬は四方をコンクリートで囲まれた空間で育てられていた(そう、残響音が聞こえた)。
ドアを開ける音がして振り返ると、彼が入ってくるところだった。
彼は白い服を着ていた。
ゆっくりと時間をかけてこの部屋の100を越える照明の1つ1つにスイッチを入れた。
あたりは光の洪水になる。積み上げられ、積み重ねられた、様々な大きさの白い光たち。
最後の1つに手を掛けると、彼はその側の壁にもたれた。そして腕を組んだ。
「犬」と彼は言った。私もまた「犬」と言った。