だめなSE

怖い夢を見た。


こんな夢だ。
昨日のお客様とのPJキックオフの顔合わせがそのまま出てきた。
メンバー紹介の時間。
マネージャーが「アプリのリーダーのオカムラです」と紹介する。
僕は立ち上がって「よろしくお願いします」とお辞儀をする。
すると、顧客の最も偉い方が僕に向かってこういうことを質問する。


「アプリのリーダーか。じゃあ君はこのシステムをどんなふうに作りたい?」


どうも、何も。
そんなこと考えたこともなかった。


返答に困ってしまう。
口が開けない。みんなが僕を見ている。見つめている。
居心地の悪い時間が流れていく。

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アプリケーションの開発を行う。
それをリーダーとしてどういうものとしたいか。


そういう視点で物事を考えたことはこれまでなかった。
今考えてみても思い浮かばない。
今回のシステムを僕はどうしたいのか。どういう観点で作ろうとしていたのか。


単純なレベルで
「軽くてサクサク動きます」でも「操作性に優れています」でもなんでもいい。
そういうキャッチフレーズならすぐにも思い浮かぶが、
それはまあ、つまるところ違うよな。大事なのはそういうことじゃない。
(もちろんこれはこれで大事だけど)


じゃあ何か?


だけど悲しいことに、
深い視点や広い視野に基づいたポリシーなんて今の僕からは逆さに振っても出てこない。
かっこいいことを掲げる必要はない。
それはわかっている。なのに、出てこない。


「お客さんから出てきた要望をなるべく取りこぼしなくつくります」
「スケジュールをなんとかまもります」


それぐらいのことしか言えない。
そして面白くもなんともない、
「言われてただ作りました」というだけの凡庸なシステムができあがる。


もちろんそこにやりがいはない。
達成感であるとか、お客さんと何かを共有してやり遂げたという意識であるとか。


目標がなければ、到達する場所ってどこにもないのである。
迷子のまま、徒労感だけがのしかかる。
脇道にそれて、ズルをして休むことばかり考える。
そしてどこにも辿り着かない。
ばかばかしくなってくる。
怖いことに、悲しいことに、
ばかばかしく思う気持ちさえ、いつのまにか磨り減って麻痺しだす。


こんなんでいいのだろうか?と思う。
さすがに焦る。
だけど最初の質問に立ち返って、
「じゃあ君はこのシステムをどんなふうに作りたい?」と問われたとき、


嘘でもいいから言えることは、今の僕には何もない。