「メタル/ヘッドバンガーズ・ジャーニー」

金曜の夜、「メタル/ヘッドバンガーズ・ジャーニー」
って映画を渋谷のシネアミューズで見た。
http://www.metal-movie.com/


文化人類学的観点からヘビメタ礼賛を行うというドキュメンタリー。
ロックのあまたあるジャンルの中でも
特に奇妙奇天烈な性質を持つと世間的に思われている
(当人達からしたら「誤解されている」)「ヘビメタ」について、
その系譜や特質に関する考察がなされる。
・・・ファン気質全開で。


客層はもろにその手の人たち。黒いTシャツが普通に馴染んでる人とか。
朝に見た「トランスアメリカ」とは完全に客層が逆転して
女性は数えるほどしかいない。
彼氏がメタル好きでついてきましたって感じのOLと
深々とキャップをかぶったかわいい / かっこいい系の女の子が1人。
↑この子はこの映画に何を求めていたのだろう・・・?
こっそりメタル好き??


監督はカナダの文化人類学者にして筋金入りのヘビメタファン。
「なぜヘビメタは嫌われるのか!?こんな素晴らしい音楽なのに!?」と憤り、
トニー・アイオミ、アリス・クーパーレミー、ディオに始まり、
トム・モレロ、ロブ・ゾンビスリップノットのコリーンやジョーイなどなど
世界各地の錚々たる「名士」にインタビューを敢行、
ドイツの世界的なHMフェスにも乗り込み自らモッシュ
ブラック・メタルの聖地ノルウェーにも乗り込む。
キリスト教への敵意を公言してはばからず、その表現活動のエネルギー源とする。
 初期メタルのファッションとしての悪魔崇拝レベルなんてかわいいもので、
 純粋無垢な彼らの活動は教会への連続放火へとエスカレート)


映画はその「起源」を考察するところに始まる。
まあ要するに何がヘビメタの元祖かってことで、
いろんなミュージシャンが冒頭のインタビューで
あれこれバラバラ好き勝手な事を言うんですよね。これが面白い。
ディープ・パープルだったり、レッド・ツェッペリンだったり、ブラック・サバスだったり。
アリス・クーパーは「俺が元祖だ」と語るし。
でもこの映画的には一応ブルー・オイスター・カルト
サマータイム・ブルース」にしますという世間一般的な評価に落ち着く。
ま、そうだよね。普通。
ヘビーメタル」の語源は意外なことにステッペンウルフの曲に由来するようだ。
これもインタビューあり。ステッペン・ウルフのジョン・ケイが語る。
僕の記憶だと、アメリカのどっかのジャーナリストが
ブルー・オイスター・カルトの演奏を見て使い出したってことになってた思うが・・・


その他キーワードは「環境」「ファン」「ジェンダー」「死」などなど。
面白いのは「ジェンダー」で、
それにしてもなんでヘビメタはあれほどまで「男」のものなのか?
肉体労働の最中/後にぴったり合う音楽だからか?
男の連帯感を隠れた主題としているからか?
かといって昔から少しずつ女性のファンもいるんだよね。
女性ファンのいる・いないってのは単純にルックスと歌詞の問題なのだろうか?


関連して。
マッチョなイメージを振りまきつつ、グラム系は女装してるよね。あれって何?
それでいて最近は女性がヴォーカルのヘビメタバンドも多い。ゴス系のとかね。
映画の主題からすると「ヘビメタの間口は広い、常に進化してる」ってことになるのか。


結論からするとヘビメタは1つの大きな連帯、世界的なコミュニティーってことになる。
黒のTシャツ、レザーといった「記号的」ファッションは全世界共通。
ヘビメタが好きって言うだけでファン同士に国境はない。すぐ受け入れられる。
面白い発言があった。だいたいこんなことを言っていた。
「スミスを聞いてる人たちは孤独を口にする。
 だけどそれは賢さの主張の裏返しにすぎない。
 メタルは違う。そこにはまず、何よりも人と人との結びつきがある」

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いやー面白かった。まじで。
僕、普段から「ヘビメタ興味ない、つーか嫌い」って言ってたんだけど、
この嫌いは「好き」の裏返しだったのかもしれない。
映画館で大音響でヘビメタの名曲ばかり聴かされたら
そりゃ印象も変わるよ。


やっぱね、ヘビメタは愛ですよ、愛。
ロックのどんなジャンルよりも愛に満ち溢れてるんですよ。
厳しかったり甘かったりする愛が。


この夏、遅ればせながら本腰入れて
ヘビメタに取り組むことにした。
まずは、アイアン・メイデンかな。
ブラック・サバスも全部そろえなきゃ。


CDラックの中で眠ってる
ハロウィン、ジューダス・プリーストモトリークルーをまずは聞き直し。
アイアン・メイデン、スレイヤー、モーターヘッド、ヴォイヴォドを
次の給料で買う予定。


ヴァン・ヘイレンメタリカは高校時代より日常的によく聞く。


あと、ヘヴィ・ロックとされる分野は大好き。
ナイン・インチ・ネイルズだったりシステム・オブ・ア・ダウンだったり。
これらのバンドといわゆるヘビメタの違いってなんなのだろう?と常日頃思う。
メタルは様式ありき、その枠組みを突き詰めたり押し広げたりすることを目的とし、
ヘヴィ・ロックは様式なし、強いて言えば自らが自らの表現の枠組みとなる、
ってことにあるように思うのだが。
どうだろう?