ニューヨーク その23(6月2日)

okmrtyhk2008-06-21


ニューヨーク市立図書館がいわゆる5番街に面していて、
それを北(アップタウン)に向かって歩いていく。
42stから53stへ。ブロックにして11個だから、僕の足だと20分ぐらいか。
カルティエやベルサーチなど高級店が並ぶ通りに、厳かな造りの教会が建っていたりする。
ニューヨークは実に教会が多い。
ロックフェラー・センターを通り過ぎる。近くにNBAの専門店があったな。
僕は気付かなかったけど、サックス・フィフス・アヴェニューという高級デパートがあったようだ。
そういう華やかな5番街の中心に、MoMAニューヨーク近代美術館)が位置する。
まさかこういうところにあったとは。


周りの建物に埋もれてしまうように見えるからか
外からだと小さいのに、中に入るとそれなりに広い。
後輩からスチューデント・パスを借りていたのでただで入れる。
係員の立っている入口でかざしたら特に何も言われなかった。
(「スチューデント」ってことになってるので、
 英語でなんか聞かれたらボロが出て別人とばれてしまう、と少し不安だった)
1階は中庭に出ることができて、彫刻が置かれていた。


2階へ。吹き抜けになって広々としたアトリウムにて、人々が休憩している。
ソファーに寝っ転がっている人がたくさんいた。
これはこれでアート作品なのだろう、
アトリウムの天井から扇風機が吊り下げられていて、ランダムに動いていた。
この階そのものの展示は面白さ、よくわからず。
今、現時点のアートってことみたいなんだけど。奇抜すぎて・・・
知らない名前ばかりだし。
階の反対側は本の装丁のコーナーでこれも地味。
僕みたいな現代アート・ミーハーみたいな人からすれば MoMA って聖地みたいなものであって。
なんかもう、1つ1つの展示物が神々しいまでの光を放っているんじゃないかぐらいに思っていた。
そうじゃなくて、「あれ・・・?」と期待はずれ。


3階に上がる。エスカレーターで上った先が強烈な黄色の光に包まれている。
色彩が奪われる。全てが黄色のモノクロームの中。人々が戸惑ったり、感心しながら歩く。
OLAFUR ELIASSON というアーティストの企画展「TAKE YOUR TIME」の展示物の1つ。
http://www.moma.org/exhibitions/exhibitions.php?id=3991


常設展の方へ。いきなり、小型のヘリコプターが吊り下げられているのに驚く。
この階はインダストリアル・デザイン。薬の瓶やソファー、照明など。
反対側に回って、ドローイング。この辺りから俄然面白くなりだす。
なんと言っても僕としては、先日ドキュメンタリー映画を見たばかりの
ヘンリー・ダーガーの「ヴィヴィアン・ガールズ」の実物を見れたというのが大きい。
思いがけず出会う。バスキアもあったね。
印象に強く残ったのは、Raymond Pettibon「No Title (Don't complicate...). 」1987


写真のコーナー。
ここにあった、「Bernd and Hilla Becher: Landscape/Typology」って企画展が
僕が MoMA で見た中では最も面白かった。
http://www.moma.org/exhibitions/exhibitions.php?id=8385
給水塔や溶鉱炉といったローレベルの工業建造物を無数にモノクロで撮影し、
給水塔なら給水塔で1つに集めて並べる。
撮影された場所が異なればそれら1つ1つが微妙に異なった外観となっていて、
無言のそれら建造物がそれぞれ何かを語っているようで、興味深い。
Bernd and Hilla Becher 夫婦について、詳しくは
http://www.artphoto-site.com/story91.html


3階の残り半分は、「TAKE YOUR TIME」の作品。
この人は照明器具と光にこだわるアーティストのようで、
鑑賞者は様々な光と色彩に包まれることで「何か」を体験する。
オレンジ色の廊下、赤く染まった部屋。
小さな鏡の部屋があって、鏡をどう組み合わせたのか、
上を向いても下を向いても果てしなく自分の姿が連なる。
ここに入るためにみな行列になって、「ほー」とか感心しながら自分の写真を撮る。


4階・5階とペインティング。
マティスの「ダンス」ピカソの「3人の楽師」ダリ「記憶の固執」など。
これらどっかで見たことあるなあ、有名だからかなあ?なんて思いながら歩く。
いや。そうだ。上野の美術館で MoMA 展があったときに見たんだった。


アンリ・ルソーの「夢」とアンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープ」があった。
これら MoMA 収蔵のものだったのか。
フランシス・ベーコンが周りとかけ離れた、「異物」って感じで印象に残った。
あと、5階の出口で目にしたアンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界
これ、いつ見ても何か引き込まれる。
彼女が手を伸ばし追い求める先には虚無が広がっているような、そういう恐ろしさを感じる。
あるいは後姿の彼女は希望を求めつつも、既に諦めきっていて、そこには絶望しかないような。


6階の特別展コーナーはこの時期特に何もなし。開催準備中だった。
ギフトショップで日本語版の図録を買う。19ドル。
(収蔵作品のうち代表作が年台順に並んでいて、最後の方にコーエン兄弟の「ファーゴ」があった)
70年代以後の作品からの図録を買うかどうか迷って、諦める。
もし次に来ることがあったら買おうと。
OLAFUR ELIASSON の大判の絵葉書も買う。
カウンターのおばちゃんが「どこから来たの?」と聞くので「日本」と答えると
DESTINATION JAPAN」という企画展のビニール袋に図録を入れてくれる。
もう終わったみたいだけど、日本発のユニークなデザインを紹介する企画だったようだ。


下に下りて、ミュージアム・ショップで絵葉書を3枚買う。「クリスティーナの世界」など。
カウンターの向こうのモニターには「DESTINATION JAPAN」が絡んでいるのか、
日本の女子高生?が登場してインタビューに答えてるビデオが放映されていた。


画集に限らず、ステーショナリーなどデザインに優れたものが多いので、やはりあれこれ買いたくなる。
MoMA Design Store って今は渋谷にもあるみたいだし、ここは1つ我慢して、
ボーナスが出たら改めて買いに行くことにする。
それにしても東京ってすごいもんだね。
世界の最先端ニューヨークで買えるものの多くがここ東京でも買える。
MoMA Design Store はニューヨークと東京だけ)
東京に住んでたら、ニューヨークに出かける必要ってないのかもね。
リンクして、地続きなのかもしれないと僕は思った。


地下は収蔵している映像を上映するシアターがいくつかある。
事前に予約していたら、希望する作品を上映してくれる。
昨年の年末年始、現在研究者である映画サークルの別の後輩が同じく泊めてもらって、
通い詰めて現存するグリフィスの作品を鑑賞したとのこと。
日本ではどうしても見ることができない映画がたくさん眠っているんのだろう。
収蔵している作品は実に2万点。
ここに収められるってことは芸術的価値を認められたってことで映画としても名誉なんだろうな。