チェルシーを出て、地下鉄で引き返して、ロックフェラー・センターへ。
18時過ぎぐらいか。長い長い夕暮の始まり。
展望台のあるビルの周りには世界中の国旗で飾られた広場があった。
入場券を買って中に入る。18ドル。
ここもまたエンパイア・ステート・ビルの展望台のように
所持品検査があって、お土産用の写真撮影があって。あれこれ通過しなければならない。
エレベーター直前の小さなシアターにて
ビルの成り立ちと歴史、展望台建設のあれこれがビデオで上映されていた。
僕が入ったらちょうど終わったところで、そのままエレベーターに乗っていった。
エレベーターの中は天井に先ほどのビデオのダイジェストがホログラムで投影される。
展望台は69階。そこから先、上はない。
エンパイア・ステート・ビルが86階とその上の102階があることを思うと、低い。
でも、眺めはこっちの方がいいかも。
セントラル・パークが背後に広がっているし、
何よりもライトアップされたエンパイア・ステート・ビルを見ることができる。
まずは67階で下ろされる。ここの展望台はガラス張り。次の68階もそう。
69階が屋上で、遮るものは何もなし。
僕はここの、正にエンパイア・ステート・ビルが見える真ん前にスタンバって
空が暗くなるのを待った。21時まで、3時間近く。
それまでに撮ったデジカメの写真を眺めたりして暇をつぶしながら。
あるいはただ純粋にマンハッタンの風景を眺めながら。
摩天楼の向こう、イースト・リバーとハドソン・リバーが合流して、
その奥にスタテン島が広がっていて。
あれがタイムズ・スクエア、あれがブルックリン・ブリッジ・・・
川の向こうのジャージー・シティは手を伸ばせばすぐそこだ。
ここがまた、寒くてたまらない。ものすごく風が強くてビュービュー吹き荒れる。
カフェがあったらコーヒーを飲もうと思ったのに、どうもないみたいだ。
Tシャツの上に長袖のシャツ。これで耐える。
知ってたらセーター持ってきてたなあ・・・
こんな中、アメリカ人たちは、特に高校生たちはTシャツ1枚で歩き回ってて
体の構造がそもそも違うんだなーと思った。
世界各地から来た観光客が入れ替わり立ち替わり現われては写真を撮って消えていく。
中には僕のように夜景になるのをずっと待っている人がいる。
日本人は3人見かける。なんとなく分かる。韓国人でも中国人でもない。
何で分かるかというとうまく言えない。
服装と持ってるカバンのブランドとデジカメのサイズ?そうとも言えるしそうとも言えない。
気付いたこととして、最近の日本人観光客は海外でビデオカメラの撮影をしていない。
19時を過ぎて、周りのオフィスビルの各部屋に照明が灯され始める。
20時を過ぎて、空が少しずつ暗くなる。
ブルックリン・ブリッジにイルミネーションが施され、
エンパイア・ステート・ビルもライトアップされる。今夜のテーマとなる色は白だった。
空は完全に真っ暗とはならなかったが、いいところまで来た。写真を撮る。
見渡す限り360度、どんなに遠くであろうと瞬いている無数の小さな光の群れ。
それが朧な像を描き出す。
ニューヨークという街がいかに大きなものであるか、
いかに大勢の人々が集まって成り立っているのか。ため息が出る。
あの窓の1つ1つに、照明の灯された窓の1つ1つに、それぞれの人の生活があって。
その日1日の楽しいことや悲しいことや、これと言って感情を伴わない些細な出来事があって。
それが見渡す限り地平線の果てまで続いている。
こんな光景が見れるのってもしかしたらニューヨークと東京だけかもしれない。
21時を過ぎて、待ち合わせの時間だ、と下りていく。
地上に降りるエスカレーターは人がいっぱいで待ちになっている。
ここの係のジョーがエンターテイナー。
待つ人を笑わせて、とにかく飽きさせない。
これとこれとこれのモノマネができるけど何が見たい?と前にいた女の子に聞いて
じゃマイケル・ジャクソンのマネって言ってムーンウォークしたり。芸達者。笑いが耐えない。
最後、エスカレーターに乗り込むときに「いけてるヤツは誰だ?」と聞く。
誰もが「ジョー!!」と答える。
それで扉が閉まって、地上へ急降下。
地下鉄に乗ってマディソン・スクエア・パークへ。
「Shake Shack」の行列には後輩が既に並んでいた。僕も加わる。
行列にはなっていたけど、それほど長くは待たされない。
受付では支払いだけで、オーダーしたハンバーガーやホットドッグの受け取りは別。
ポケットベルみたいなのを受け取って、出来上がったらそれが振動して知らせるという仕組み。
僕は名物「Shack Burger」と「Shack-Cago Dog」の両方を食べる。
「Brooklyn Brewery」というニューヨークの生ビールも。
体が冷え切っていたのでほんとなら熱いコーヒーが一番よかったんだけど
せっかくのハンバーガーとホットドッグだしなあとビールにする。
どっちもおいしかった。これはいけるね。日本にも進出しないかなあ。
ハンバーガーはしっかりと肉の味がして、だけどさっぱりしていて。
ホットドッグはシカゴ風。フレッシュな野菜が挟み込まれている。
全体的にパリパリしつつ、しっとりしてる、っていうような。
ピクルスであったり、トマトやレタスであったり、そもそもが野菜がうまいのだと思う。
野菜の水気や肉汁を吸い込んでベチャベチャにならないパンっていうのも嬉しい。
ニューヨークでアメリカンな食べ物を気軽に、となったら僕はここを薦める。
後輩が頼んだ、チーズをかけたフレンチフライもおいしかった。
ここだけだね。フレンチフライでおいしかったのは。
それにしてもなんでフライドポテトにトロット溶けたチーズがかかってるとうまいのか。
日本では見たことがない。あるのかなあ。
「Shake Shack」自体は公園内のホットドッグのスタンドに過ぎないため、
客は屋外で、公園の中で食べる。
僕らの隣の席では30ぐらいの男女が集まって、誕生日のパーティーを開いていた。
各自「Shake Shack」でハンバーガーとフレンチフライとビールを買って持ち寄って。
どんどん参加者が増えていって、空いてるテーブルと椅子が次々に運ばれてくっつけられていく。
見る見る間に一列の長いテーブル席になった。
海外の映画の結婚式の場面に出てくるような、酒や料理をぎっしり並べた長い長いテーブル。
あんな感じになった。
こういうパーティーもいいなあと思った。
気軽に公園に集まって、カジュアルな雰囲気で。
でもこれって、「Shake Shack」みたいな秀逸なハンバーガー屋が
公園の中にあるからこそできることなんだよな・・・