The Doors of "The Doors"

今、The Doors『Morrison Hotel』を聞きながらこれを書いています。


昨日友人からメールが来て、The Doors を聞くならどれがいい? と訊かれた。
その返答を元にしています。
このジャンル、アーティストに入るにはどれがいい? 
という質問は、音楽だろうと映画だろうと文学だろうととても好きです。


The Doors
ロサンゼルス、UCLAの映画学科をきっかけに結成。
1967年デビュー、ヴォーカルにして imaginative な詩人であるジム・モリソンの
扇情的なステージングと全米No.1を獲得するようなポップで時代に合致した楽曲の
2面性をもつ。1971年、ジム・モリソンの死(オーバードース)により解散へ。


まず言えることは
The Doors はベストアルバムを聞いちゃだめだということ。
アルバムごとの雰囲気がはっきりしているので、
その流れで1枚通して聞いたほうが絶対いい。


個人的には、ブルース色を強めながらも
最も虚無的・暴力的・前衛的な6枚目の『L.A.Woman』が一番好き。
でも、最初に聞くことはお勧めしない。


「Break On Through」「Light My Fire」「The End」といった
代表曲の入った1枚目『The Doors』だったり
世間一般的に代表作とされる2枚目『Strange Days』を
入り口とするのがよいだろう。
どちらかと言えば、1枚目が先のほうがよい。
地獄の黙示録』のクライマックスで使われた
「The End」はロック史上屈指の名曲。


しかし、3・4・5枚目がイマイチなのかというとそんなことはない。
3枚目『Waiting For The Sun』のバリエーションの広さや
全米No.1となった「Hello I Love You」のポップさ。
実は一番入門篇的アルバムかもしれない。普通によい曲が多い。


4枚目の『The Soft Parade』の妙に熱っぽい軽さ。
これまで何度も書いてきたことだけど、表題曲が The Doors の中では
最も野蛮で、むせ返るような匂いに満ちていて、大好き。
3つの何の関係もなさそうなパートを強引につなげてる捨て鉢さ加減もいい。


5枚目の『Morrison Hotel』のツウ好みの暗さ・渋さ。
「Indian Summer」といった小品が意外といい。
でもこれらは、The Doors にはまってからか。


The Doors の魅力を一言で言うと”虚無”であって、
それは退廃的な”知性”と官能的な”暴力”の間に立ち上がってくるもの。
1枚目が虚無を前にしているのだとしたら6枚目は虚無を後にしている、
2枚目は様式美として虚無のイメージが完成している、と言える。
ただしどれもその真っ只中というのでもない。
3・4・5枚目はいったんその虚無から離れて空中を模索する。
しかし見つからず、虚無に戻ってくる。


他のアルバムもその後で。
『Absolutely Live』『Alive, She Cried』『Live at the Hollywood Bowl』
といったライブアルバムを編集して2枚組にした『In Concert』を入手すべきか。
結局スタジオ録音が世紀に発表されなかった大作
The Doors 言うところの叙事詩。「The End」「When The Music's Over」など)
「Celebration of the Lizard」が収録されている。
この曲については、ルイス・シャイナーの『グリンプス』を読むと良い。
『Smile』など幻の名盤を求めてタイムスリップするSF。
http://www.amazon.co.jp/dp/448870901X/


もう1つ、ジム・モリソンが生前残した詩の朗読に
3人のメンバーが演奏を付けた『アメリカン・プレイヤー』は最後の最後、必聴。


ここ数年、Rhino から2・3カ月に1枚ぐらいのペースで
ライブアルバムが発表された。
これらもコアなファンならばどれかを入手して聞いてみたほうがいい。
たいがい2枚組で、チューニングやMCやハプニングの全て、
ステージの演奏というよりも空気を、そのまま収録している。
アルバムで聞きなれた曲もそのことごとくで表情がガラッと変わっている。
僕もお金の続く限り買い集めたが、さすがに全部は無理だった。


そんなとこかな。
そんなとこです。