こんなサントラを持っている その8

――――――――――――――――――――――――――――――
□Association『Goodbye, Columbus』


ソフトロックの雄 Association が手掛けた
青春映画「さよならコロンバス」のサントラ。
原作は重たいものを書く前のまだ若い頃のフィリップ・ロス
角川文庫から出ていた中古を買って、学生時代に読んだ記憶がある。
このときの内容と音楽の感じからすると、相当甘酸っぱいんだろうな。


Association って再評価されてるんだか、その度に忘れられてるのか。
僕は普段全くソフトロックって聞かないけど、
この Association と The Free Design はたまに聞く。
Association は若さはじけるダイナミックなコーラスがいいですね。
これぞ西海岸って感じの。
初期の段階ではその筋では有名なプロデューサー、
カート・ベッチャーが関わっていた。
メンバーの一人ジム・イエスターの弟がジェリー・イエスターで
後期 Lovin' Spoonful に加わった。そういうつながり。


――――――――――――――――――――――――――――――
Simon & Garfunkel『Graduate』


つながりで思い出す。
言わずと知れたアメリカン・ニューシネマ名作『卒業』
その最後に Simon & Garfunkel の「The Sound of Silence」が
流れるのも有名な話だけど、このサントラそのものは
彼らのアルバムの中で扱いが低いように感じられる。
彼ら自身の楽曲と、作家によるいわゆる映画音楽とが同居しているからか。
その辺り、The Beatles『Yellow Submarine』と似ている。


でもこのアルバム、なかなかいいんですね。
ここだけの話、彼らのアルバムの中で僕が最も聞くのはこれ。
アメリカの60年代を代表する「The Sound of Silence」が
”勝手にフォークロック調のバックを加えられた”正規のバージョン
(普段耳にするのはこっち)と
2人だけの、絶望と孤独と諦めが静かに鳴り響いてるバージョンとが収録されている。
これを聞き比べたくなる。


隠れた名曲「April Come She Will」や
CMでもよく使われる「Scarborough Fair/Canticle」も入っている。
映画音楽のほうもなかなかいい。


――――――――――――――――――――――――――――――
□The Cyrkle『The Minx』


”こんなサントラを持っている”といったとき、普通はこういうのなんだろうな。
ほぼ忘れられた1960年代後半の、知る人ぞ知るソフトロックのグループによる
知る人ぞ知るソフトポルノ映画のサントラ。
つまり、安易な言い方をすれば、モンドな映画、モンドなサントラ。


「モンド」ってよくよく考えるとどういうことなのか説明できない。
なんとなくあの感じってのはあっても。
ラウンジでもなく、キッチュでもなく。


ありがちなスキャットに、ありがちなボサノヴァ
ありがちななんちゃってラーガ。
悪くはないけど持ち上げすぎる必要はないと思う。
この時代の標準的な音楽。


星の数ほどこういう音楽があって、星の数ほどこういう映画があった。
それがたまたま国内盤のCDで発売される。
幸福なことなのか、なんなのか。


――――――――――――――――――――――――――――――
Jack Johnson『September Sessions』


大手外資系ショップで話題になりだした頃、僕もジャック・ジョンソンにはまった。
アコースティックというか、オーガニックな音。
べとつかない、さらりとしたソウルがあって、
ダンスフロアよりはドライブで聞くのにちょうどいいようなグルーヴィー。


ハワイ出身で昔はサーファー、
映像の学校に通ってサーフィンを主題としたプライヴェートよりな映画を撮っていた。
そこに音楽をつけようってことで自らギターを弾き始め、
曲作りをして仲間たちと録音してアルバムとして発表したら大ヒットとなる。


映画のDVDも何枚か買った。
『September Sessions』と『Thicker Than Water』ともう1枚ぐらい買ったはず。
腕に自身のあるサーファーたちがすごい波を求めて
ボード片手に世界の反対側まで旅する。
そしてボートに乗って沖合いまで出て、
何も言わずただ、ひたすらストイックに波に乗る。
うまくいったら浜辺で笑いあう。ただそれだけ。それが観てて心地いい。
季節がいつだろうと、夏だろうと冬だろうと、
缶ビール飲みながらボケーっと眺めるのにちょうどよかった。


このサントラはジャック・ジョンソンとその仲間たちって感じで、
Ozomatori や G. Love & Special Sauce が参加。さらっとおしゃれ。
気の置けない友人たちとのホームパーティーで流すのに最適な音。


――――――――――――――――――――――――――――――
□『Waking Life』


リチャード・リンクレイター監督の『ウェイキング・ライフ』のサントラ。
これまで何度も書いてきたことだけど、非常にこの音が大好きで今でもよく聞く。
タンゴなんだけどやさぐれてて、パンク。荒っぽい。
もっと聞きたいのだが
この Tosca Tango Orchestra って映画だけのプロジェクトだったのか、
他にアルバムは出ていない。残念。


ピアソラの漆黒の闇が密室に広がるような緊張感に毒気を感じ出すと
僕はこちらに切り替える。