こんなサントラを持っている その7

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□『To Have And To Hold』


ニック・ケイヴブリクサ・バーゲルド、ミック・ハーヴェイ。
Nick Cave and the Bad Seeds の暗黒3人組。
(残念ながら、ブリクサ・バーゲルドは脱退)


この映画のことは全く分からないんだけど、1997年の作品とのこと。
最近知って取り寄せてみた。発売は MUTE だった。


この3人で映画となると思い出すのはもちろん「ベルリン・天使の詩
しかしああいう音を想像していたら全然違ってた。
ニック・ケイヴのどす黒いヴォーカルも
ブリクサ・バーゲルドの高圧電流ギターも
ミック・ハーヴェイの不安を書きたてるシロフォンもなし。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスオーボエ、ハープ
という構成のオーケストレーション
まごうことなき、これぞ、なサントラだった。
堂々としているんだけど、そこはかとなく弱々しい陰がある。
ヴォーカル入りの曲として、1曲、スコット・ウォーカーの歌うのが入っている。


この3人組のサントラだと僕は
『Ghosts ... of the Civil Dead』というのも持っている。
邦題は『亡霊の檻』というらしいが、日本でも公開されたようだ。
1991年。もちろん単館上映。
こちらのほうが3人の音らし、…くもないか。
女性ヴォーカルの入ったラウンジな曲のようでいて虚無的というか無機的。
それが何かと考えてみたら
映画の中で使われる曲ということで記号的なのだと気付く。
そうか。無機=記号の関係。


かろうじてミック・ハーヴェイのシロフォンが1曲で。


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□Einsturzende Neubauten『Die Hamletmaschine』


ついでに、ブリクサ・バーゲルドの Einsturzende Neubauten (以下 E.N.)から。
今回のベルリン行きでライブが観れないものかと期待したが、
しばらくないようだ。残念。


現代アート的な構築的秩序をもつインダストリアル・ノイズ・ミュージックとして
E.N. の音楽は1980年代から、よく演劇で使われたようだ。
この作品はかのハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』
僕も学生時代に全集(?)のここだけ買った。
ブリクサ・バーゲルドがハムレット役で朗読を行なっている。
有名なフレーズ「ハイル、コッカ・コーラ」に差し掛かったとき、ゾクッと来た。


音楽は E.N. だとしてもそれほど刺激的ではなく。
削岩機が唸ったりはしない。鉄板は叩かれるけれども。


E.N. のサントラや劇伴としては他に
メンバーの出演した『Faustmusik』や
映画『Berlin Babylon』などがある。


それにしても。最近E.N.を聞き直してるんだけど
2枚目『患者O.T.の肖像』や3枚目『半分人間』はかっこいいね。


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Elmer Bernstein『Music for the Film of Charles & Ray Eames』


20世紀を代表するインテリア・デザイナー、インダストリアル・デザイナーである
(椅子が有名ですよね)
チャールズとレイのイームズ夫妻は100を超える短編映像作品を残していた。
そのうち、「おもちゃの汽車のトッカータ」など代表作の音楽を収録したもの。
作曲はどれも映画音楽家エルマー・バーンスタイン
イームズ夫妻の作品は実験的でありながら遊び心に満ち溢れていて、
ゆえに音楽も子供向けのミュージカルやアニメのよう。


僕も作品集のDVDを持ってるけど、
夫妻の「パワーズ・オブ・テン」と「おもちゃの汽車のトッカータ」は必見。
21世紀の子供たちに語り継ぎたい。


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□『Donnie Darko』


藤子・F・不二雄のSF短編「ヒョンヒョロ」を読んで以来トラウマになって、
でかいウサギが出てくるものはなんでも傑作に思えてしまう。
これもその1つ。
映画そのもののできは今ひとつでも、心の襞に忘れられないものを残した。
世の中と対峙することへの不安に満ちて、想像力が暴走する少年の心。
切ない。見ててあまりにも切なくなった。


エンドロールで流れる歌がとても美しく、名前を見たらローランド・オーザバル。
どこかで聞いたことあるのに、思い出せない。
調べればいいんだけどたまにはしばらくほっといてみる。
その後だいぶたって何かで読んで、Tears for Fears だと思い出す。
「Shout」とかね。懐かしい。
この「Mad World」も名曲です。


サントラとしてはその他の曲は別な人が担当していて、神秘的な楽曲が並ぶ。
内に閉じこもった少年の心を表すような。


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Curtis Mayfield「Superfly」


カーティス・メイフィールドによるサントラ。1972年。
アイザック・ヘイズの主題歌「シャフト」も有名な『黒いジャガー』と並んで
ブラック・エクスプロイテーション・ムーヴィーの代表作とされる。
監督も黒人で、麻薬密売ものらしい。
そもそもの話、ビデオやDVDになったことはあるのだろうか?


そんなにソウルに詳しくはないですが、
カーティス・メイフィールドだと「Live」がゆるくていいですね。
iPhoneに入れて街を歩くのにちょうどいいソウル。
レコードに針を落とした瞬間、
真夜中のしっとりとしたムードの広がりが感じられるというか。