ベルリン その9(2/5:ストーリー・オブ・ベルリン)








16時頃。クアフュルステンダム通りの繁華街をさらに西へ歩く。
「ストーリー・オブ・ベルリン」という博物館へ。
特に強い興味は無かったんだけど、近いというのと核シェルター見学があるというので。
ショッピングセンターの中にあった。入場料10ユーロ。
スタッフは皆バイトっぽく、何語を話しますか?と聞かれて日本語と答えると、
少し話せるという女の子がどこかブロークンな日本語を流暢に話す。
「私、18時からシェルターのガイドします。
 あなたも18時、いーですね? そこのロビーに集合」
この子、普段はいい大学、例えば外語大なんかにいて専攻は違う言語・領域で、
日本語は片手間に何個目って感じで日常会話に必要な分だけ覚えてしまったのではないか、と思った。


核シェルターがガイド付きでないと入れないのはいいとして、
困ったことに集合時間が2時間後。暇そうだ…


僕が持っていったガイドブックは2冊あって、メインに活用していたのは
地球の歩き方 GEM STONE』のシリーズの1冊『素顔のベルリン』だった。
http://www.amazon.co.jp/dp/4478071039/
このガイドブックとてもよかったんだけど、見方がだいぶ分かってきて、
旅行会社からもらった当たり障りのない地図には
「ストーリー・オブ・ベルリン」が紹介されていたのに
こっちでは取り上げられていない。
ははーん、たいしたことないんだなと。
確かにその通りだった。
上記の地図には「マルチメディアを駆使した展示が特徴」とあったんだけど、
日本人男性30代後半の僕としてはとても子供だましだった。
音が流れて映像も随所にあります、というような。
いろいろ工夫されてるんだけどシックなまとまりは皆無で、中高生向けかなあ。
実際、高校生と思われるグループが土曜だというのに2組見学に来てて、
「ナチの勃興」といったセクションで熱心な解説がなされていた。
階段ではゲッベルスの演説のテープが流れていた。


そもそもはヨーロッパにおけるベルリンの歴史を多角的に追うというもので、
コンセプトそのものは悪くない。
イスラムユダヤとの関係。錬金術産業革命メトロポリスの誕生。
戦争を扱った場面では数世紀前の現存する紙人形を展示していたり。
細かいところは実は凝っている。
クラシックカーや鉄道の模型はマニアにはたまらないんだろうな。


ダメなところばかりじゃなくて、おおっというのが3箇所あった。
1つは20年代・30年代の映画の断片をつなげて流している部屋で、
『M』『メトロポリス』『カリガリ博士』『嘆きの天使』なんかが出てきた。
もう1本は、ニュース映像を編集したものだった。
夜、歓楽街にて興じる人たち。酒場のテーブルの上で酔っ払ってブリッジ。
竹馬みたいなのを履いてみんなで踊ったり。


もう1つは戦後のコーナーのジュークボックス。プレスリーやアニマルズ。
ビーチ・ボーイズの「Barbara Ann」があったので押してみたらほんとに曲が始まった。
続けて、フランソワーズ・アルディの「Qui Aime Till Vraiment」
最後の1つが、戦後のベルリンの一般家庭の居間を再現したもの。
箱のようなテレビがあって、大型のラジオがあって、という。


ナチス戦争犯罪を問うセクションでは
特にこれといったものは飾られていなくて、
4つのガラスのドアを逆卍型に組み合わせたオブジェが飾られていた。


18時まで待って、核シェルターのツアーへ。
さっきの子は僕だけに日本語でガイドしてくれるのかと思いきや、
ドイツ語と英語で全員にガイドを行なった。
建物の外に出て、地下3階へ。
これは再現ではなくて、冷戦時代に本当につくられた核シェルターなのだという。
3,600人を収容、期間は2週間を想定。
暗闇の中に、柱から金属の太い棒が延びてて
トランポリンのような硬い布地で張ってるだけのベッドがひたすら並んでいた。
それが上下に二段だったか三段ずつ。
トイレ、キッチン、空気清浄機、発電機、司令官の部屋、水の濾過施設など。
「シャワーはなくても死なない」のでない、とのこと。
食糧はもちろん缶詰でした。
最後はシェルターの中で聞こえる戦闘の音を擬似的に再現。
冷静に考えて、「こんなところで生きていけるわけないじゃん」と思うが、
実際に核戦争になったらどうなるのか。
これはこれでユニークな体験ができた。


外に出て、また雨が降り出す。
通りを東にひたすら歩いて、「KaDeWe」へ。
日本語のフロアマップがあったのでもらう。
1階が化粧品や宝石で…、というのはどこも一緒か。
ブランド物が売られているだけだろうと何も見ない。
まっすぐ6階の食料品売り場へ。
世界の食材が手に入るという。確かにここはすごかった。
大きい。途方もなくて全部見て回る気がしなかった。
ピクルスの瓶詰めならピクルスの瓶詰めが、
缶入りの紅茶なら缶入りの紅茶がブワーッと壁一面に並んでいる。
しかもごちゃっとしているのではなく、気品ある並べ方でゆとりをもって。
ワインとリカーとビールのところだけちゃんと見た。
ビールもヨーロッパ中のを集めるとこんだけあるんだ!? とやたら感心させられた。
コロナなんかはあっても、日本のビールは残念ながらなかった。
500mlのビールを4本とヴォルヴィックを1本買って、どれも1ユーロしなかった。
あまりの安さにさらに追加で2本ビールを買った。
僕が買ったのは、正しい名前かどうか分からないけど
「Paulaner」「Padeberger」「Berliner Kindl」
「Tuborg」「Kostriber」「Schofferhofer」


会社へのお土産にクッキーの詰め合わせも5箱買っていく。30ユーロ弱。
「KaDeWe」ブランドらしい。


食材を売ってるだけではなくて、その場で調理して提供する
ちょっとしたレストランやバーのような店がいくつもあって、
そのうちの1つが鉄板で焼く中華。
これがうまそうで、かつ、客がたくさん入っていたのでここで夕食を取ることにした。
Tiger Beer を1本と、店で一番高かったペキンダックのグリル。
…が、これは失敗。海老のグリルやチャーハンにしておけばよかった…
ソースが日本ではまずお目にかかれない、海外特有のベタッとした醤油味で。
醤油から日本的風格・深みをごっそり削ぎ落としたような。
甘いわけでも酸っぱいわけでも辛いわけでもない、なんとも筆舌に尽くしがたい。
トータル20ユーロ近くして、ベルリン滞在期間中で最も高い食事となった。
繁盛していたのは、単なる異国趣味か。


ビールのつまみに出てきたフォーチュン・クッキーにはこんなことが書かれていた。
「You are going to have a long and joyful life.」


帰って来て、シャワーを浴びて、缶ビールを1本開ける。
テレビのチャンネルを変えてるうちに「EURO SPORT」というのを見つけ、
滞在の間ずっとここばかり見ていた。
競技は女子のバイアスロンだった。ノルディックのスキー、そして、ライフル。
見ている間に眠くなる。半分残っていた缶ビールを無理やり飲む。
21時半。ベッドに入る。