もう少し歩いて、「壁の道」へ。
10時を過ぎた瞬間、街のどこからか鐘の音が聞こえてきた。
いつまでも鳴り止まない、弔うような鐘。
ベルリン州議会の荘重な建物の向かいに「壁の道」が残っている。
その裏手に「テロのトポグラフィー」というミュージアムがあったので入ってみる。
ここにはかつて、SS(親衛隊)とゲシュタポ(秘密警察)の本部があったという。
その歴史を伝える。なので1933年から1945年までを扱う。
1階が展示、地下がライブラリーとなっている。
2010年にオープンしたばかりだった。展示のディスプレイがとても垢抜けている。
入ると受付の若い男性が「High!」と声を掛けてきた。
http://www.topographie.de/
http://www.bmkberlin.com/Berlin/040719terror/text.htm
10時のオープン当初は僕ぐらいしか客はいなかったが、
30分を過ぎたら結構な人が入ってきていた。
ここではあまり詳しく見なかった。
ナチの高官たち。熱狂的な市民の姿と犠牲となった人たちと。
ドイツだけではなく、周辺諸国も合わせて。
その写真を見てるだけで重たい気持ちになった。
英語の解説を読むのが辛くなってきた。
「ベルリンの壁」と並んで重要な歴史なのだけれども。今回はパス。
建物の外に「壁」が残されている。それを見ながら歩いた。
レンガで組まれた土台の上に、壁が建てられている。
ここの壁が僕が見た中で最も物侘しかった。
端まで歩いて通りに出ると、向かいの広場が小さな遊園地のようになっていて
なにやら大きな丸いものが置かれている。
地球儀? その中心には「DIE WELT」と書かれている。
「welt」はドイツ語で「世界」だったか。
近づいてみると「Der Berlin Hi-Flyer」とあって、どうもこれは熱気球のようだ。
チケットは19ユーロ。これは安いかも。
乗りたくなるが、受付が閉まっている。
もしかしたら時間が早かったのか、それとも雨だと飛ばないのか。
後でもう1度来てみようと思う。
来た道を引き返す。
ポツダム広場へ。
ソニーセンターというショッピングセンターなどの複合体のビル群があって、
その中に「映画博物館」というのがある。そこに入ってみようと考える。
映画館も併営されているようで
イングマール・ベルイマン監督の回顧上映が行なわれていた。
結局のところ映画博物館には入らず。ドイツ映画の歴史ってことなんだけど。
なんとなく昨日のストーリー・オブ・ベルリンのようなものを想像して。
ミュージアム・ショップにだけ入る。
DVDがたくさん売られていて、ロミー・シュナイダー主演映画や
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の映画など。
これはもしかしたら掘り出し物が期待できるかも、
ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『ノスフェラトゥ』があったので
『緑のアリが夢見るところ』が手に入ったりしないかと期待するが、
再生方式がどれもPALだったので諦める。
ホロコースト記念碑に戻る。
開館していたので地下の入り口へ。
セキュリティ・チェックがあって、空港のように手荷物検査を受ける。
日本語のパンフレットをもらう。
中欧やバルカン半島など各国のユダヤ人家族を国ごとに一家族ずつ取り上げて、
その残された写真や手紙を紹介し、どのような悲劇的結末を迎えたかを語る部屋。
その奥に、虐殺されたか行方不明のままの、
ホロコーストの犠牲となったユダヤ人の名前を読み上げる部屋があった。
暗闇の中に名前が浮かび上がる。
パンフレットを読むと、全ての人の名前を読み上げるのに6年と7ヶ月と27日を要するという。
その奥に強制収容所の位置を示す、ヨーロッパの地図が広がっていた部屋。
ドイツを中心に、数え切れないぐらいの数の収容所があったことを知る。
もちろん、アウシュビッツの名前もあった。
ユダヤ系の人たちが祈るような気持ちでその1つ1つを眺めていた。
僕のような人間が気安い気持ちで訪れる場所ではなかった。
帰りにミュージアムショップで絵葉書を3枚買う。
そのうちの1枚はフランツ・カフカの肖像写真。
熱気球まで歩いて戻るつもりが
道を間違えて、ウンター・リン・デンの大通りに出てしまう。
ここまで来ると Friedrichstr. の駅に近く。
1度そっちまで行って郵便局を探して絵葉書を出すことにする。
ブランデンブルク門の information で聞いた通り、小さい方の建物に郵便局があった。
「日本にエアメール出したいんですが」と伝えると、0.45ユーロだという。
安いなーと思いつつ絵葉書を渡して支払いをする。
後で気になって調べてみたら、国内が0.45ユーロで国外に出すのは1.0ユーロ。
ちゃんと伝わっていなかったのか。もしかしたら日本に届かないかもしれない。
ガイドブックに載っていた「ベルリン・ストーリー」という
大きな土産物屋に行ってみたら、閉まっていた。
中も空っぽ。貼紙がしてあって、つい先日移転したようだった。
移転先の住所が書かれていたが、パッとは分からず。