こんなサントラを持っている その11

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Art Zoyd『Nosferatu』


”架空のサントラ”には2種類ある。
架空の映画の架空のサントラと、実在の映画の架空のサントラ。
(それでいくと架空の映画の実在のサントラもありえる)


後者は、無声映画に対して後の人たちが音楽をつけるとか。
これはフランスのチェンバー・ロックのグループ Art Zoyd による
F・W・ムルナウ監督の『ノスフェラトゥ』に対するもの。1989年の作品。
このグループは他に、同じくムルナウ監督の『ファウスト』も同様に制作している。


チェンバー・ロックとはその名の通り、
クラシックの室内楽的編成で奏でられるロック。
ヴァイオリンやチェロ、オーボエといった楽器がよく登場する。


吸血鬼映画らしく、暗黒な音。ただただ不気味。
それでいて劇的に展開する。大胆不敵。


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大友良英 杉本拓 Sachiko M 「孤高 A Phileppe Garrel Film imaginary soundtrack」


最近存在を知って入手。
フィリップ・ガレル無声映画『孤高』(1974年)を上映しながら
映画館で演奏したのをライブ録音。
CDの帯には映写機とのセッションとあった。


ターンテーブルとギターとサイン・ウェーブ。
この3人なので楽曲というよりは物音。
いわゆる映画音楽的な情感溢れるメロディを期待すると肩透かし。


コンセプトとしても実際の音としてもサントラの極北。


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大友良英山下毅雄を斬る 〜大友良英プレイズ・ミュージック・オブ山下毅雄


大友良英つながりでもう1枚。
テレビの主題歌やCM音楽など、7000(!)を超えるとされる曲を残した山下毅雄
「プレイガール」「時間ですよ」「鬼平犯科帳
ルパン三世」「ジャイアントロボ」「クイズタイムショック」・・・


『早すぎた奇才 山下毅雄の全貌』のシリーズや、
『ヤマタケ・フォーエバー』のシリーズなど、編集盤がいくつも出ている。
(前者の1アニメ編と2ドラマ編は僕も買った)


ここに取り上げるのはその山下毅雄を尊敬する大友良英によるカバー集。
菊地成孔がサックスを吹く「プレイガール」
チャーリー・コーセーが新しく歌った「ルパン3世」
遠藤賢司が熱唱する「ジャイアント・ロボ」
冒頭の3曲からして相当、濃い。
その他、山本精一鬼怒無月など。メンツすごすぎ。


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くるりジョゼと虎と魚たち


くるりが手掛けたサントラ。2003年。『THE WORLD IS MINE』のあと。
30分にも満たない小品だけど、聞き直すととてもよかった。
秀逸。「ハイウェイ」ってこんな名曲だったのか。
ダブがあったり、スティール・パンがあったりとするんだけど、基本はギター。
踊れる打ち込みを導入したり、ウィーンでオーケストラと共演したり、
いろんな音楽的変遷があったけど
くるりはやはりギターロックなんだなあと思う。


映画もよかったなあ。
当時久々に面白い日本映画を見たように感じたもんだった。
岸田繁名義で今度『まほろ駅前多田便利軒』のサントラが出るようだ。


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□『The Wickerman』


1973年のカルト映画。
クリストファー・リーリンゼイ・ケンプが出演している。
スコットランドの小さな島が舞台。
失踪した少女の捜査をすることになった警官は
排他的な島民たちとその信仰する奇妙な宗教と出会う。
クライマックスの祭りの場面とそこに出てくる巨大ウィッカーマンがすごい。
これこそカルト。これこそB級。
驚いたことに数年前、『ベティ・サイズモア』のニール・ラビュート監督が
ニコラス・ケイジ主演でリメイクした。


人気作なのだろうか??
All Cinema Online を運営する Stingray からは
2枚組のコレクターズ・エディションが発売され、
”幻の傑作”とかそんな扱いで思わず買ってしまった。
サントラも豪華ブックレット付き。
音は1973年のスコットランドだけあって、民謡っぽいフォークが主体。
実はなかなかいい。雰囲気がある。神秘的かつ、牧歌的。


「Willow's Song」は90年代初めマンチェスターの隠れた名バンド
The Mock Turtles がファースト・アルバムでカヴァーしていて、
僕はそこから初めてこの曲を知った。
アルバムの最後には「Wicker Man」という曲も収録されている。