こんなサントラを持っている その14

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□『Nuovo Cinema Paradiso』


ニュー・シネマ・パラダイス』のサントラ。映画は知らなくとも、
心の琴線をそっと撫でさするような美しく清らかなメロディーの数々は
日本生命とかCMでよく使用されているので誰もが聞いたことあるはず。
聞いた瞬間、胸がキュンとなる。切ない。


音楽は、あのエンリオ・モリコーネ
泣きのメロディの何たるかを知り尽くして「どうだ、泣け」と言わんばかり。
悔しいけど手のひらの上で転がされる。


ストーリーもまた悔しい。
高校時代に初めてこの映画を観て、
ネタバレだけど最後のキスシーンをつないだところで号泣。
大人になった今改めて見返すと、子供から大人になっていく過程で出会う、
後にノスタルジアとして振り返ることになる出来事の数々に胸が締め付けられる。
そして最後のキスシーンでやはり、泣く。何歳になっても。
スイッチが入るとはまさにこのこと。
ずるい。ずるすぎる。映画史上最大の禁じ手。


今、ジャケットに映っている、
幼き日の主人公トトと自転車に二人乗りした映写技師アルフレードの笑顔、
これを見ただけでウルウル来た。


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□『La Bamba』


聞けばすぐ思い出す、って曲でもう1つ。
1987年、本国アメリカでサントラも主題歌もNo.1となる大ヒット、
日本でも当時あちこちで聞いた懐かしの「ラ・バンバ」ですが。
これが、Los Lobos だったってこと覚えてる人、どれぐらいいるんだろう?


1980年代、ロサンゼルスのメキシカン・ロックの本格派として登場して、
気がついたら1990年代はミッチェル・フルームやチャド・ブレイクといった
新進気鋭のプロデューサーたちとコラボレート、独自の音響系ロックへと進化を遂げ、
2000年代以後はアメリカン・ロックの押しも押されぬ大御所へ。


1996年の『Colossal Head』は個人的に超名盤。
架空の近未来ロサンゼルスと架空の近過去メキシコが
ザッピング感覚で同居するようなストレンジ・ポップ。
ブルージーなのにエクスペリメンタル。
自らのアンテナを磨き続けたらザクッと”世界”につながった感じ。


メキシコ・オーセンティックな音を求めるならば
初期の曲を集めた『Just Another Band from East L.A.』がよい。
若気の至りでどことなくパンクを通過しているけど
根っこの部分では何の変哲もないメキシコ民謡を演奏していて、
今の姿からすると全く想像がつかない。


このサントラは半分が Los Lobos で、残り半分が
マーシャル・クレンショーやブライアン・セッツァー、ボ・ディドリーなど。
僕は残念ながらこの映画未見なんだけど、
ブライアン・セッツァーエディ・コクランになりきって
The Whoでも有名な)「サマータイム・ブルース」を熱唱するらしい。


この話題とは全然関係ないが、ちなみに。
Stray Cats 時代のブライアン・セッツァー について、
かの King Crimson ロバート・フリップ御大が
「彼のギターはうまい」と誉めたことがある。昔なんかの記事で読んだ。
神様に誉められた神童のようなものである。


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Sonic Youth『Simon Werner A Disparu』


Sonic Youth が1枚丸ごとサントラを手掛けるのってこれが初めてかもしれない。
Fabrice Gobert というフランスの監督の映画であるらしい。
冷たい壁のような、緊迫感のあるギター・インスト・ノイズ。
近年の作品では個人的にベスト。
Mogwaiのように静と動を使い分けるんだけど、無言で一瞬にして圧倒する。
まるでキャリアが違うと言わんばかりに。
奥深い。深海の果てに宇宙が広がっているかのよう。


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YEN TOWN BAND『MONTAGE』


CHARA主演の「スワロウテイル」のサントラ。
岩井俊二との相性はよくなくて、映画そのものは観たことがない。
小林武史プロデュースなので
CHARAのアルバムの中では最も聞きやすい、かもしれない。


Wikipediaで調べてみたら、シングルになった
「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」は
CHARAの歌った曲で唯一オリコンで1位を獲得、
CHARA自身の名義ではまだ1曲もないという。


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Talking Heads『True Stories』


Talking Heads でサントラと言えば普通、『Stop Making Sense』だと思う。
ライヴ・アルバムの名盤でもある。
後に『羊たちの沈黙』でアカデミー賞を総なめするジョナサン・デミ監督の出世作
それまでの”コンサート映画”の常識を覆して観客サイドは一切映さず、
Talking Headsが演奏しているステージだけを撮影したという。
クールで、ドライ。無駄がない。それでいて、熱い。
発想としてはコロンブスの卵。その後皆、真似した。
先駆者としてこの作品には確固たるコンセプトがあった。
ジョナサン・デミは Nedw Order のクリップ「Perfect kiss」が
 そもそも秀逸だった。このクールさが、そのまま『Stop Making Sense』へ)


『True Stories』は映画のサントラって触れ込みだったけど。
解散の1コ前。一番聞かないアルバムだった。
そもそも有名な「Wild Wild Life」自体いい曲だとは思わないし。
(これまた余談だけど、『クール・ランニング』で主題歌)


映画を誉めてる人も、僕の知る限り皆無。
でもまあこの機会に観てみるかと思った。
テキサス州の郊外の町。
抑揚がなくいつも平熱のよそ者、デヴィッド・バーン
オープン・カーを運転しながら町の案内をする。
金曜に記念式典があって、夜はタレント・ショー。
何もない平原にステージが組まれる。
ってことで町と人の紹介。
外国人がテキサスと聞いて思い浮かべるような
どこかネジの緩んだファニーな人たちばかり。
ああ、ここで笑うんだろうな、っていう。
…それだけ。
どれだけいい曲とアルバムを作ろうと
デヴィッド・バーンはその後映画撮ってないしね…
当時はこれがキッチュで、キャンプだったのか。


「Love for Sale」「Wild Wild Life」「City of Dreams」といった
シングルにもなってベストアルバムに入るような曲は
そのまま Talking Heads の演奏だけど、アルバムの残りの曲
「Puzzlin' Evidence」「Hey Now」「Papa Legba」
「Radio Head」「Dream Operator」「People Like Us」
これら6曲は映画用にアレンジされてカヴァーされている。
カントリー風だったり、メキシコ風だったり。
(僕が持ってるCDのボーナストラックは、いくつかそこから持ってきたものだろう)


映画を観てて思ったのは素直に Talking Heads っていい曲書くなあっていう。
「Dream Operator」って普段ベストアルバムにも入らないけど、
僕この曲彼らの中では一番と言っていいぐらいに好きだったりします。


これまた余談として、「Radio Head」って実は
あのバンドの名前になったきっかけの曲だったりします。
映画の中で観るとその他大勢の添え物のような曲で、なんか妙に感慨深い。