熊野古道を歩く その17(2/23:天王寺)


急いで起きる必要もなく、8時半起き。地下の大浴場に入りに行く。
昨日フロントでもらったSchickの「Hydro 5」でヒゲを剃る。


エレベーターに乗っていたらアパホテルのミネラルウォーターが発売されたとあった。
例の女社長の顔写真入り。誰も買わないのではないか…
フロントでは同じく顔写真入りのカレーも売られていた。
この思うがままに突き進む感じが成長の原動力か。
経営者になったら自分もそうするかと言えば、絶対しないはずであって、
ああ僕は「日本の社長」(宮尾すすむ的な)にはなれないと思った。


昨日に引き続き、小雨。御堂筋線天王寺へ。
飛田新地遊郭に行ってみようと思う。
中上健次紀州』もここで終えている。飛田新地で新宮出身の女性を探したと。
なので天王寺で下りたんだけど、これは後から考えると動物園前の方が近かったか。
洗練された「HOOP」と「あべのAND」を通り抜け、
iPhoneの地図を頼りに阿倍野を南へ、西へ、と歩いていく。
住宅街に入って狭い道が迷路のように入り組んでいる。西に向かえない。閉ざされる。
飛田新地やその向こうの釜ヶ崎を拒んでいるのかもしれないと思った。
大通りを渡る。大きなマンションが何棟も並ぶ。この奥に飛田新地はあるのだろうか。
「HOOP」やマンションとの落差を思う。


寂れた薄暗い商店街に出る。空気が変わる。ここから昭和のままというような。
アーケードの中を歩いていると左側の通りを曲ったところに「飛田新地料理組合」が見えた。
ここがそうか。通りに入っていく。
小さな店が並んでいる。白地の四角い看板に店の名前。表向き料亭ということになっている。
11時半。ほとんどの店は閉まっていたが、いくつか開いていた。
入り口には電気ストーブと招き猫。
着飾った女性と客引きの女性とがセットで座っている。
通り掛かると「兄ちゃん、兄ちゃん」「戻ってきて」「入ってみて」と盛んに声を掛けられる。
通りの端まで行って、また別の通りへ。
ホステス募集の貼紙。昔は売られてきたという女性も多かったようだが、今はどうなのか。
女の子はまだ10代なんじゃないかというぐらい若い子や
厚化粧しているけどもう40代だろうという人までいた。
地元のおいちゃんみたいな人が店に顔を出している他は僕以外に誰も歩いていない。
行きつ戻りつしてそのうちのひとつに決める。
その店は16時までは30分で11,000円。想像していたよりも安い。
ブーツを脱いで2回に上る。奥の部屋へ。


部屋の奥に布団というかマットが敷いてあって、その脇にローションなど一式。
手前にコタツ。その上に『ブブカ』や『MEN'S NON-NO』
壁には「飛田新地料理組合」による地図と、料金表。30分延長で15,000円。
ビールと日本酒が1,000円。刺身は「要相談」ここが料亭だということを思い出すが、
頼んだらどこから運ばれてくるのだろう? というのが気になった。
まさかこの店で魚を捌くとは思えない。


女の子がお茶とお菓子を持ってきて部屋の中に入ってくる。
部屋の中が暑くて、温度を下げてもらう。お茶を飲む。
このところずっと雨が降っていて洗濯ができないといった世間話をした後で、
「じゃあ、着てるもの全部脱いで」となる。そうする。そしてマットの上に横になる。
さすがに緊張する。始まる。ゴムをつける。拭いた後で、手で、口で。
仰向けになってなすがままになって僕は天井を眺める。
僕はここでいったい何をしているんだろう? と思う。
手持ち無沙汰になって僕は「東京から来た」と言う。
女の子は旅行がうらやましい、私はこの前福井に帰ったけど、看病だったと言う。
本当のことなのか、設定なのか。どちらでもよかった。
上がいいか下がいいかと聞かれて僕は下と答える。
僕は女の子の左腕に触れ、背中へ。そして胸へと下りていく。
以下、自粛。


ことを終えて出てくると雨が上っていた。
商店街に戻って端のほうまで行く。安い定食屋。飲み屋。雑貨屋。
こういうの大阪のおばちゃん以外に誰が着るんだろう? というような服を売っている店。
どこかで演歌のようなものが聞こえる。
なんとはなしに北の方に曲がってしばらく歩いていると動物園前の駅。
その向こうに新世界。じゃんじゃん横丁とスパワールド通天閣が見えた。
そうか、そういう位置感覚だったのかと知る。


13時近くなって新世界で串カツを食べることにする。
全然客の入っていない店、混んでいる店。
横綱」とか「じゃんじゃん」といった目立つ店はたぶんいまひとつなんだろうなと
通天閣側の「だるま」にする。少し行列になっていた。
http://kushikatu-daruma.com/


通天閣セット:元祖串かつ、豚かつ、アスパラ、キス、つくね、ウインナー、
うずら、えび、漬けマグロ、どて焼、プラスして牡蠣、ホタテ、牛タンつくね。
生ビールを2杯。平日昼間からのビールはうまい。串カツもうまかった。
店内は活気があって、揚げている方が誰よりも
「いらっしゃいませ」といった声が大きいのがいい。


動物園前駅に戻って、今池方面へと歩く。
安宿が目に付く。冷暖房ありで1,100円とか。昔の木賃宿のようなものか。
商店街に入る。道ゆく人たちに酔っ払いながらパチモンを売るおっちゃんたち。
そのおいちゃんたちにおでんを150円で食べさせる店。
髪を金髪にしたきれいな、しかし「じゃりン子チエ」系の女性が店に立っていた。
三角公園へ。自転車がたくさん停まっている。
窓が全部割られてビニールシートを張った車。住居なのだろう。
今にも壊れそうなバラックが肩寄せあっている。焚き火に人が集まっている。
病院や慈善団体の建物が目に付く。
「この人を探しています」「生活保護を受けられている方は今日から入れます」
上空をヘリコプターが飛んでいる。旋回する。
公園の周りをグルッと回ってみた。ローソンがあった。
眼鏡屋、宝石屋、寿司屋、うどん屋萩ノ茶屋駅
車椅子に乗った人をボランティアなのか、押している。
それをあちこちで見かける。