アヴァロン

ローズマリ・サトクリフによる『アーサー王最後の戦い』を読み終えた。
最後の戦いにて致命的な傷を受けた老アーサー王
月光に照らされた湖面を三人の死せる貴婦人に伴われて舟で渡りアヴァロンへ。
リンゴの木の生い茂る小島。
そこは生者の世界と死者の世界の境目にあって、
生者の住むアヴァロンと使者の住むアヴァロンとがあるという。


そこに Roxy MusicAvalon』を重ね合わせたとき、深い感動があった。
アルバムのジャケットには鏡のような湖面を前にした鎧兜の後姿。
Roxy Music なので女性かもしれない。絶対そうだろう)
その視線の先にはアヴァロンがある。


そして主題曲のあのけだるい曲調。
パーティーが終わって、君がいて、私は安らぎを求める、そう、アヴァロン。
ただそれだけの歌詞なのに、なぜか壮大なものが扉の向こうに広がっている。
「アヴァロン」とたった一言呟いて、曲のタイトルにするだけで
これほどの世界が広がるとは。
つまるところ借景とか見立てということか。
かつてのロックにはそういうことを表現できるだけの知性や教養があった。

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それにしてもやっぱアーサー王の物語は面白いね。夢中になって読んでしまった。
魔法使いマーリンの後ろ盾を得て、
それまで誰も引き抜くことのできなかった剣を引き抜いてブリテン王となるアーサー。
のちに湖の精からエクスカリバー(聖剣)を受け取る。
やがて国中からアーサーの元に集まってきた騎士たちは
「円卓の騎士」とよばれるようになり、聖杯を求めて旅立つ。
この壮大な旅はアーサーが中心になるものではなくて、
この頃には主人公ではなくなっているんですね。
パーシヴァルやランスロットといった伝説の騎士たちが物語を動かしていく。
ランスロットアーサー王妃グヴィネヴィアとの禁断の恋、そして裏腹の忠誠心が
全ての悲劇をもたらす力学となる。
それが最後アーサー王自身の物語として戻ってきて
呪われた息子モルドレッドとの戦い、死を前にしてアヴァロンへ。


そこには外伝のように吟遊詩人の語るトリスタンとイゾルデの物語が差し挟まれ、
騎士たち一人一人のストーリーも明かされる。
中世以前のイギリスの物語がアーサー王伝説として集約される。


小さい頃アーサー王伝説にルーツを持ち、
竜を絡めた外国のアニメを吹き替えで観たんだけど
あれはなんだったのか。もう一度観てみたい。