「JOSEPHINE FOSTER & VICTOR HERRERO JAPAN TOUR APRIL 2013」

昨晩、今年ようやく初ライヴ。
ジョセフィン・フォスター。
僕にとっては今、最も未知への扉を開けてくれる音楽。
ロルカのジプシー歌集を甦らせ、エミリー・ディキンソンの詩に曲をつける。
『Blood Rushing』は僕にとって、2012年のベストアルバムとなった。


場所は渋谷の「www」シネマライズの地下。
映画館をひとつつぶしたのだろうか。
18時開演。物販で初めて目にするアルバムがあって、
1枚だけしか残ってなかったので買った。
2004年の「born heller」ついてる。


ホールに入ると音楽ではなく、鳥の鳴き声。
最前列のど真ん中で見た。
ゲストは灰野敬二
日米を代表するアンダーグラウンド・ミュージックの巨頭が
深い深い地の底でソナーを飛ばし合うかのようだった。


灰野敬二
老婆のような銀色の長く伸ばした髪、黒のサングラス、全身黒づくめ。
ルーズリーフに束ねたいたのは手書きの歌詞だったのか。
1曲目は小さなグロッケンシュピールを一音一音振り絞るかのように叩き、
振り回しながら鎮魂歌のように歌った。2曲目は竪琴を爪弾いた。
3曲目は椅子に座って台の上に横置きしたギターの弦に
輪ゴムを結わえ付けて伸ばしたり広げたりしながら、
宇宙の果てを通り過ぎる虚空の風のような音を出した。
4曲目は弦とネックの間に銀のスプーンを挟み込んで
海底に沈んだ幽霊船が鬼火を探すような音。
5曲目と6曲目は座ったまま普通にギターを抱えて訥々と歌った。
ピックではなく指で直接弾く。エコーを最大限に効かせて、
まるで北極点の氷山に降り注ぐオーロラ。
最後は半分に切った鳥籠のようなものをバイオリンの弦で弾いた。
往年のデレク・ベイリーはこんな感じだったのだろうか。


ジョセフィン・フォスター。
スパニッシュ・ギターの名手の相方ヴィクトール・エレーロを伴って登場。
アンダルシアを吹き抜ける風が過去・現在・未来そのどこでもない場所へと誘う。
途中、相方がエレキギターに持ち替えるとバリバリとノイズを弾き出して、
無調のフリー・フォーク頂上決戦へ。
マンドリンに持ち替えると今度は音の桃源郷をゆらゆらと上り詰めてゆく。
「Panorama Wide」から始まって『Blood Rushing』の曲に続いた。
しかしその後、聞き覚えのない曲ばかり。昔のかな。
中盤の締めが「Waterfall」で
アンコールが「Mother Nature is the Holliness」
『Anda Jaleo』や『Perlas』のロルカ系カバーは披露されなかったように思う。
バックは日本人のドラマーとバイオリン。


最後、灰野敬二と相方が爆音インプロビゼーションのガチンコ・バトルへ。
ギターノイズの歴史数十年分の表と裏が衝突して一気にマグマとして噴出する。
灰野敬二が眉間に皺を寄せて本気でギターを弾いていた。
そこにジョセフィン・フォスターが加わる。
凛として立ち、ギターを奏でつつ歌う。


この日の夜のことはいつか伝説と呼ばれるのではないか。
見ることができてよかった。
帰りに最近再発された2003年のアルバムを買った。
「SOS JFK」(The Children's Hour名義)


Panorama Wide - Josephine Foster
https://www.youtube.com/watch?v=4FszgsOhjB0