福島へ その5

8/15(金)のこと。


朝7時前に起きて朝風呂。朝食は食べず。
テレビをつけてニュースを見ると夏の甲子園、聖光学園が1回戦突破。
チェックアウトして8時にYさんにホテルへと迎えに来てもらう。
車に乗って早速移動開始する。南会津町へ。
郡山は曇り。それがポツポツと降り始める。南に進むに連れて霧が深まる。
須賀川市を西へ。田んぼの緑と空の灰色の印象しかこの辺りはない。
車を止めてドアを開けると虻が入ってくる。
タオルなど振り回し、慌てて外に追い出す。


福島のこの辺りはどこまで走っても山また山。
遠くに見えるというのではなく、すぐ目の前に山が迫っている。
山と山との間、川の流れる細くて狭い僅かばかりの土地で
稲を育て、集落を作ってきたのだと思う。
天栄村を過ぎて、下郷町へ。
「じゅうねん」や「十念」とあちこちで看板が立っている。
エゴマのことだそうで、味噌にして田楽にするとおいしいとのこと。
B級グルメ時代だからか、「じゅうねんラーメン」を多く見かける。
さらに西へ進んでトンネルをくぐると雲に晴れ間が見えて
やがて青空へ。燦々と陽の光が照りつける。
山を超えると天気が変わるということを実感する。


下郷町大松川の「お不動さま」をまずは訪れる。
駐車場が野菜の特売場になっている。車が何台も停まって賑わっている。
車で素朴な農家の間をぐるっと巡ってお堂を見つける。
ビデオカメラを取り出して設置する。
お堂の脇に水が流れている。勢いよく下の池に流れ落ちる。
陽の光を受けてキラキラと輝いている。
奥には樹齢350年と言われる不動桂が苔むした根をしっかりと地面に張り、
見上げるとしっかりと伸びた枝の隙間から木漏れ日が広がる。
特売所で水をくんだ方がいいと言われペットボトルをもらってきたYさんが水を汲む。
不動桂の根本から流れる水。
これがふくしまの再生力となるのだなと思いながらカメラを向ける。
近くの水田も稲がたわわに実っている。風にそよぐ。


南会津町に入る。地図を見るとかなり広い。
途中、川の撮影できるスポットを見つけ車を停める。
森が途切れて砂地となり浅い川が流れる。
岩がゴツゴツと転がっていて白い波が立つ。
川岸のまだ大きくなっている途中のすすきが花火のように穂を広げている。


国道をさらに西へと進んで国道沿いに
山に囲まれ一面田んぼとなったところを見つけ、
閉店した店の駐車場に停める。三脚の足を伸ばす。
黄色い稲。その間に送電線のピンと張った巨大な鉄塔がそそり立っている。
東京や青森で見かけるものよりもはるかに大きい。
福島第一原発や第二原発で発電された電気を運ぶからだろうか、と思った。


また山の間に入っていってトンネルが多くなる。
「スノーシェッド」という名前で
トンネルではなく雪を避けるための覆いがかかっている道もある。
青森では見かけたことがない。


田島に入る。この辺りは収入が豊かではなく進学率も低いという。
そば処なのだが、米が育たないからそばを植えるとのこと。
中心地に入るとロードサイドの店も増えてくるが病院が見当たらない。
確かにここに住む人たちは不便だろうな、と思う。
福島の地酒「榮川」の看板があちこちに。
トマトで有名な南郷。
この辺りから薪を積んでいる家をよく見かける。


「きらら289」という道の駅を過ぎて南へ。
白沢。この辺りから緑が深くなる。
伊南。あゆが釣れるようで釣り券を販売している店がちらほらとあった。
この辺りから水田がなくなり、麻を植えたり養蚕で暮らしているのだという。
大桃。小さな店の立ち並ぶ通りにて、
どの店の看板にも下の方に福島の地酒「花泉」と書かれていた。
集落を抜けるとすっかり山の中。家の数が少なくなる。
ドライブインや観光客向けの喫茶店の類がわずかにあるぐらい。
「大桃の舞台」というかつての農民たちが演じた舞台の小さな劇場が神社の境内にある。
スキー場もあった。
川に下りて撮影を始める。この頃から雲行きが怪しくなり、ポツポツと雨が降り出す。
川からはずれた小さなたまりにおたまじゃくしのようなものが泳いでいる。


その先にあるという「屏風岩」を目指す。
集落も離れどこまで行っても見当たらず、引き返したりもした。
ここまで来たからには初志貫徹しようと再度南に向かい、
小豆温泉を越えてようやく見つけることができた。
雨も強くなってきたが、傘を指してもらいながら岩と清流を撮影した。
茶色、灰色、白、モザイク状の岩が切り立った崖となっていて
マグマが水となって噴出すように岩の間を小さな滝となって流れ落ちる。
細かく泡立つ水がライムグリーンとなり、底の方では海のような深い緑へ。
日本にもこんな風景があったのか。
阿蘇山の火口とその周りの荒涼とした風景を思い出した。
観光地としては知られざる穴場。
知ってほしいとも思うし、汚されてほしくもないとも思う。