終日予定なし、朝から雨。
引っ越しから一カ月経過していまだ段ボールが片付かず。
そんなわけで手を付けていなかった箱のいくつかを開けてみる。
ほとんどは本で先日組み立てた本棚に移していく。
箱のひとつは Hi-8 のビデオテープが詰められていた。
ラベルに「atmosphere」「ロマンス」「砂の映画」と
学生時代に僕が撮った映画のタイトルとその横に番号が書かれている。
「ロマンス No.8」はこの作品の撮影用に回した8本目のテープということになる。
20代30代のうちはこれら捨てることができなかった。
撮影の記録というよりも記憶という感じがして。
40代が目前となった今、あっさり諦めがついた。
もはや撮影の時の出来事もその多くが思い出せない。
箱ごと廃棄処分としてガレージに持っていく。
もはやこれらのテープを見返すことはないだろう。
僕がひとかどの人物になってこれが研究素材となるとか、そういうこともない。
そもそも編集して完成した S-VHSのビデオテープでさえ、再生が危うい。
今はどんな画質になっているか、怖くて見ることができない。
S-VHSのビデオデッキも一応持っているが、ここ10年電源を入れていない。
もはや動かないかもしれない。
8mm の映写機はきちんと手入れされていたら今も動きそうに思う。
アナログの強さ。
Hi-8 のビデオカメラやビデオデッキといった電子機器は時の流れに脆そうだ。
今時「Hi-8」と言っても思い出せる人は少ないだろう。
鮮明に再生できるビデオカメラも国内に何台残っていることか。
いや、予算の乏しい地方の役場や学校ではいまだに現役だったりするのか。
時々、ビデオテープを DVD に焼くサービスを見かける。
Hi-8 もあったように思う。
ああいうのは機材が壊れたらどうなるのだろう。
まだ修理可能なのか。
メーカーにも部品は残ってないんじゃないか。
携帯で動画が撮れる時代が来るなんて90年代の学生時代でさえ思いはしなかった。
いかにもカメラ然とした形でないと写真は撮れないし、
ビデオカメラ然とした形でないと動画は撮れない。
そんな思い込みがずっとあった。
それに、こんな小さなものに入るのかとどこかで思っていた。
デジタルのビデオカメラも最初のうちはテープだった。
ハードディスクではなく。
デジタルの時代になると物理的な記録手段のことは気にしなくてもよくなった。
ネットワーク上に置くか、際限なく小さくできるか。
便利ではあるけど、どこか切ない。
そんなふうに思う僕は旧世代の人間なのだろう。