神保町「傳」

14日木曜日のこと。
夜、妻の誕生日のディナーということで
前から気になっていた「傳」へ。
神保町の食べログではダントツの点数の高さ。
3月に予約の電話を入れたら誕生日その日は既にいっぱい。
前後で空いてる日はないかと聞くと
かろうじて2人席がひとつ空いているとなってこの日へ。


カウンターだけの小さな店かと思いきや2階席もあり、案外広い。
そして新しい。ファッショナブルというかスタイリッシュというか。
カウンターの中は噂通り、フランスから修行に来ているという若者がいた。
ホールとキッチンと合わせて10数人ぐらいキビキビと働いていたか。


2階の部屋に通される。女将がつく。
他にも個室があったが、僕らは2組分のテーブル席。
おまかせのコースのみ。
先付けに最中が出てくる。中にはフォアグラと奈良漬。
店名入りの袋に入っていていきなり凝っている。


その後「揚げ物が出ます」と聞いて待っていたら
店主の方が上がってきて
「お待たせして申し訳ないのでこちらをお召し上がりになってお待ちください」と
ケンタッキーフライドチキンならぬ「傳タッキー」の箱が。
中に豆おこわの詰められた手羽先の唐揚が。
箱も中身もオリジナルで手間隙かかっている。
こんなふうにエンターテイメント性があって楽しい。


店主の方も若い。僕より若いんじゃないか。
なのにこんな立派な店を出すことができて唸らされる。
斬新なアイデアと品のいいユーモア、確かな技術、若さあふれる勢いが
とてもいい塩梅でひとつのチームとなっている。
料理人に限らず、どの店員に「この食材はなんですか?」と聞いても
しっかり丁寧に答えてくれたのも頼もしい。
これが接客というものなんだよなと。


その他、
・ホワイトアスパラに巻いて出し汁に入った温泉玉子
・新鮮なうに2種類(もちろん殻に入っていて、やはりごはんが詰められている)
・マスのチャンチャン焼き風(蕗味噌やソラマメ、フライドオニオン)
・20種類の野菜サラダ(ニンジンが顔の形にくりぬかれている)
・山菜のあんかけスープ(煮物として出てきた)
蛍烏賊と生姜の釜飯(赤出汁、漬物付き、おかわり可)
・デザートにあんこもちのキウイソースがけ的なもの


どれもおいしかった。
料理を言い表わす語彙の乏しさが恨めしい。


最初はコースのシャンパン。
その後プレミアム生。
田酒(青森・油川と生産地があったのが嬉しい)がもちろんあって、
次は「小布施ワイナリー」の「ソガペール・エ・フィス」
これがワインを作る時期の裏で日本酒に取り組んだというもので
正にワインのようなきりっとした味わい。
米なのに米じゃないというか。
こういう日本酒もあるんだ、と驚いた。
僕らが普通に買える値段ならば家に常備しておきたい。


おまかせが1万5,000円で、飲み物を足してひとり2万。
高いといえばもちろん高いけど、
あの空間を体験してしまうとむしろ安く感じる。
季節で変わるメニューも日々仕入れた内容で少しずつ違ってくるのだろう。
春夏秋冬と欠かさず訪れてみたいが、次は冬のボーナスか。
また行こう。