「ON-U」再訪

梅雨明けも近づいてきて、iPhone にレゲエというかダブを増やす。
日本だともちろん Mute Beat であり、FISHMANS を。
『Document 1989』の「Theme From A Summer Place」が儚くも美しい。


海外だとジャマイカではなく、ロンドン。
「ON-U」初期の代表作をまとめて聞き直す。
Dub Syndicate『Pounding System』他2枚。
New Age SteppersNew Age Steppers』他2枚。
Creation RebelStarship Africa』『Rebel Viberations』
Mark Stewart + The Mafia 『Learning To Cope With Cowardice』


『Rebel Viberations』は10年前に出た
総帥 Adrian Sharwood によるリマスターの紙ジャケ再発を買って
一度聞いてそれっきりだったのが、
今回「あ、こんなすごい音源があったのか…!?」と。
10年も眠らせていた僕はなんだったのか。
ここまで刺さる、揺さぶる音はそうそうない。
ベースの音を際限なく太くし、ギターやピアノのカッティングにエコーをかける。
その音空間には虚無が漂う。
ダブは暴力的な音とも呼ばれるが、それは覚醒を促す音でもある。
King TubbyLee Perry といったジャマイカのダブは
土っぽく魔法がかかっている感触があるけど
ロンドンのダブはコンクリートに囲まれ、科学的というかケミカルな印象を受ける。
まさに抽象的な作業として「暴力」「覚醒」「虚無」を抽出するというか。
それはもはや「音楽」を目的としていない。異質な「音」そのもの。


『Learning To Cope With Cowardice』も最初に聞いたのは20年近く前の学生時代か。
その頃はよくわからなかった。
演奏にもヴォーカルにもメロディーがなくズタズタにされたリズムがあるだけ。
混乱と混沌しかない。
一方でギター不在、キーボード・ベース・ドラムだけの布陣に物足りなさを感じた。
しかしこれが今聞くとある種の極点、極北であって。
The Pop Group を解散させて、さらに押し進めた音。
目の前のもの全てを切り裂いていたロックなギターがここにはないというもどかしさが
そのままヒリヒリとした焦燥感として鳴っている。
もはやダブでもない。


総じて冬の音なんですよね。
これから夏に向かうならば、ジャマイカのダブも聞き直したほうがいいかな。
レゲエとしたとき、Bob Marley とどう距離をとるかという永遠の問題もある。
レゲエを超えた1ロッカーとして世界最高峰のひとりとは思うけど、
じゃあ彼に代わるレゲエミュージシャンはいるかというとよくわからない。
スカになると古典『Club Ska '67』を超えるコンピレーションはないかな。