夫婦でやってる中華料理の店というもの

夫婦喧嘩が絶えないけどおいしいラーメン屋ってプロだな、と思う。
商店街の外れ、住宅街の入り口にありそうな小さな、古くからの店。
ラーメン、炒飯、ホイコーロー定食。
コップ酒、瓶ビール、バヤリースのオレンジジュース。
色あせた、油染みた暖簾と傾いてがくがくした丸椅子。
高級食材ではないけど化学調味料でもない。
その店にしかない独特な味。


よくしゃべるおかみさんが皿を運んできてテーブルを片付ける。
一方的におかみさんが厨房の中のおやじさん にガミガミ言って、
おやじさんは黙々とフライパンを振るう。言い返すのはごくたまに。
これが急に夫婦円満になったり、離婚したりすると味が落ちるような。
勝手にそんなイメージを抱く。
夫婦というものの不思議なバランス。


そういえば話は変わるが、上野毛の「吉華」が1月末を持って閉店していた。
会社の帰りに通りがかって、最近店を開けてないなあと思っていたら後日貼紙が出た。
残念だ。それならもっと行っとけばよかった。
今度また行こうと思っているうちに、隠れた名店は閉店する。
四川料理。麻婆豆腐が土っぽくておいしかった。田舎そばがもう1つの看板メニュー。
この上野毛が本店。八重洲の店は名前が変わって、自由が丘の店はまだあるようだ。


ここのおかみさんが上品な老婦人で、いつも丁寧な接客をして頂いた。
おやじさんは既に引退していて、僕は見かけたことがないが、
よく店の前をのんびりと箒で掃いていたらしい。
しばらくおかみさんが切り盛りしていたのが、年老いて一線を退いたということか。
誰かが継ぐということもなく潔く店を閉めたか。なんだかもったいない。
そしてまた街にはチェーン店が増えていくか…