男と女と女と男

ひょんなことで出会った3人の男女の共同生活。男と女と男。
東京23区の西にある、古い一軒家。
屋上がある。男1がよくあがっていて、タバコを吸っている。
男2は決して上がろうとしない。
そこが男1の気の置けない場所だと感じているからか。


女1は男1と男2のどちらかで揺れ動いているかのようでいて、
どちらでもない。
どこか外で他の男にも会っているようなフシもある。
それでいくと男1、男2もそうだ。
外の生活とこの家の生活とがあって、閉じられていない。


それぞれ平日の昼間は仕事があって、土日になると3人揃う。
出かけていないことも多いが、たまに3人が顔を合わせることもあって
土曜の昼に1人がパスタを茹でて
3人でダイニングテーブルに向かい合って食べるということもある。
平日の夜にリビングで酒を飲むこともある。
3人は互いのことを実はよく知らない。どんな仕事をしているとか。
話さなければ、決して詮索しない。ほどよく距離を保っている。
食器を洗う順番や洗濯物の干し方とか、
生活の中の癖のような些細なことは皮膚感覚で知っているが。
取り立てて夢や理想があるわけではない。
ただ曖昧な現実があるだけの20台後半の3人。


そこにもう1人の女2が入り込んでくる。
部屋は空いている。生活が昼夜逆転していてどこかだらしない。
平気で男や友達を連れ込む。
最初からいた3人は快く思わない。
男1も男2も誘惑される。
男1は女2と関係を持ってしまう。何度も。
そのことを男2は知ってしまう。女1は知らない。
それまで保たれていたバランスが崩れてしまう。


その家は元々男1の両親が所有していた家で、
男2はそろそろ出て行くときだと考える。
その頃進めていた転職も決まって、家を出て行く。
女1も結婚することになって出て行く。
4人は最後の夜にささやかなパーティーを開く。
女2がはしゃぎ回って、台無しにしてしまう。
片付けの後男1が屋上に上がる。男2と女1も上がる。
女2は酔っ払って寝てしまった。
屋上で、3人は特に話すことがない。


半年後。広い家の中で一人きりで暮らす男1。
さらに季節がめぐって、変わらず男1が一人。
女1が平凡な家庭生活を送っている。
男2は仕事に打ち込んでいる。とても忙しそうだ。
女2が夜の町で騒いでいる。
男1は家を手放して更地にした。がらんとした空き地が広がる。


数年後。男1と男2が偶然再会する。
引越し後ずっと会っていなかった。
ごく普通のチェーン店の居酒屋に入って話す。
男2は女1の連絡先を知っていて、電話するとまた別の日なら会えるという。
男1と男2の間で女2のことは話題に出ない。


後日男1、男2、女1がカジュアルなフレンチの店に入っている。
食べながら話す。女1は、女2が昨年亡くなったということを話す。
男1も男2もそのことは知らなかった。
ただ、そうか、というだけ。
女2のいいこととよくないことがポツリポツリと話されて、そこで途切れる。
別の会話へ。
食べ終えて男1、男2、女1は店の外に出る。


また会おうよと言い合って分かれるが、
もう二度と会うことはないと3人は感じている。
それぞれの生活に戻っていく。