成増「べんてん」

土曜は帰ってきて、10時過ぎ。この日は他に予定はなし。
妻は用事があって外出。
一人散歩に出てどこかで昼を食べることにする。
ふと、成増のラーメン屋「べんてん」に行ってみたいな、と。
食べログを見てみると、以前は高田馬場で店を開いていたのが店主が体調を崩して一度店を閉め、
成増で数年前に再開したのだと。
平日でも並ぶみたいだけど、最近のコメントを見ると
3月にテレビ番組に取り上げられてさらに客が増えたと。ひゃー。
とりあえず11時の開店に合わせて歩いて行ってみる。


10分前に着いて前に並んでるのは15人ぐらいか。
店の前に5人並んで、20mほど離れた電柱からまた並ぶことになっている。
店の中に1人入ったら、電柱の先頭に立っていた人が店の前に移動。
こういう行列ってめんどくさいなあといつも思うが、仕方ないか。
途中にある家の人が嫌がったんだろうな。
住宅地の中に店があって、家の前に見知らぬ人たちがずっと行列になってると思うと僕も困るな。
電柱のところに立っている家はずっと空家になっていて庭が雑草で覆われていた。
六厘舎の最初の店も行列に苦情が来て閉店したんだったか。


こういうラーメン屋の何が嫌かって、行列の仕組みが常連さんの間では常識になっていて、
店の前に5人並んだらそ子から先は、通りを渡ったところで6人目が並ぶことになっているとか。
知らずに店の前に並んだら「割り込みしないでください」と言われて気まずい思いをするという。
券売機でチケットを買うのもドキドキする。
最初に買ってから並ぶことになっている店だったり、店の中に入ってから買うんだったり、
自分の順番が近づいてから一度列を離れたりとマチマチ。
店員が教えてくれるところはいいけど、素知らぬ顔をして何も教えてくれないところもある。
今回は電柱の先に並ぶと事前に調べて、
先に来た人たちが次々に列に加わっていくのを見てから僕も加わったので問題なく並ぶことができた。
電柱の先頭に来た時には食べ終えて出てきた方が、「先に進めますよ」と声をかけてくれた。
常連さんなのだろう。
結局そこから一時間待ち。
店の中に入って券売機で食券を買って、そこからさらに席が空くのを待った。


僕が頼んだのは醤油ラーメンにメンマ、チャーシュー、味玉を追加。
瓶ビールを頼むとコップが凍っていて、
おつまみにメンマとチャーシューの盛り合わせにラー油をかけたものが出てきた。


音楽はかかってなくて、皆無言でラーメンを食べている。
食器を洗う音や麺をすする音が聞こえるのみ。
たまに声が聞こえてきてもスープ割りを頼むぐらい。
あとは「ごちそうさまです」と「ありがとうございました」のみ。
常連さんとの会話も「今日は開けるの早かったね」とか
「ゴールんでんウィークは休むの?」とかしごくシンプルなもの。
この佇まいだけで名店だということがよくわかる。
そしてその通りだった。
いつもなら早食いで鳴らす僕もゆっくりと味わって食べた。
こんなに完成度の高いラーメンって荻窪春木屋以来だ。


食べ終えて皆がそうするように僕もカウンターの上に器を置いて
テーブルの上を布巾で拭いた。
二郎のような店で、暗黙のルールでそういうことになっているからやることになっている、
みたいなときはばかばかしいので絶対やらない。
しかしこの店のラーメンと向かい合い、
食べ終えた後には自ら目の前のテーブルを拭いて居住まいを正したくなる。


たかがラーメン、されどラーメン。
今度は妻を連れて、また来ようと思う。