初期の YMO

この休みに細野晴臣『HOSONO百景』を読んでいたこともあって、
熊本から帰ってきてから70年代のアルバムをまとめて聞きたくなった。
昨日月一の経過観察で病院に行った帰り、
紀伊国屋書店の8階に移った DiskUnion に行ったら
トロピカル音楽をやっていた頃の2枚のアルバム『トロピカル・ダンディ』と『泰安洋行
プラスしてその頃横浜の中華街で業界関係者を集めてショーケース的に行ったライヴとその DVD の入った
4枚組ボックスを見つける。Amazon でついてた価格の半分ぐらいだったので即買いした。
レジに持っていって大学のOB会のクレジットカードを出したら
店員の女の子が「あ、〇〇会の方ですね。私も持ってます。珍しいですね」と。
聞くとまだ学生でアルバイトなのだという。


その日の夕方から夜にかけて続けて聞く。
泰安洋行』は『HOSONO百景』では自ら、向こう側に行ってしまったアルバムと評している。
当時はドラッグをキメたときに聞かれる音楽と思われていたと。
そちら側の人たちに仲間と誘われたが、違うよと断った、とあった。
『はらいそ』は元々持っていた。続けて引用するならば、向こう側から戻ってきたアルバム。
東北大震災の後、相馬市に戻ってきた若者が先輩に「これを聞け」と差し出されたという。
YMO 結成前夜の過渡期的な作品でだけど、不思議な浮遊感というか磁力がある。


そういえば YMO のライヴアルバムを集めたボックスセットを持ってたな、と
初期、1978年と1979年のを iPhone に入れて今日の朝、豪徳寺に向かう前に電車の中で聞いた。
1979年の『Live At Greek Theater』は海外に出て初めて演奏したときのもの。
ロサンゼルスで Tubes の前座を務めたが、前座にしては異例のアンコールを求められたと解説にあった。
サポートメンバーはギターの渡辺香津美、キーボードの矢野顕子
コンピューター・プログラミングに松武秀樹も加わっているはず。
コンセプトを練り直したのか演奏もアレンジも引き締まり、安心して聞くことができる。
彼らはテクノバンドである前にロックバンドだったんだなと再確認する。


個人的に面白かったのは 1978年の『Live At Kinokuni-Ya』の方。
事前に Amazon のユーザーレビューを読むと、
よくもこんな音質のよくない音源を売りだしたなと
アルファの商魂たくましさを揶揄する発言がいくつか見られたんだけど、
このボックスセットに収められた方はマスタリングし直されているため、音は悪くない。
確かに演奏は荒い。キーボード、ベース、ドラムの音のバランスも悪いし、
高橋幸宏のヴォーカルもちゃんと録れてなかったのか曲の途中からボソボソ入ってきたり。
でもその「手探り感」に僕はグッとくる。未知の地平を切り開いている。
はっぴいえんどのフォークと『HOSOSNO HOUSE』、その後のトロピカル時代を経てこその
YMO のディスコでありテクノなのだというのが地続きに聞こえる。
貴重な記録だと思う。
この日はアルファレコードが主催する所属アーティストのお披露目公演のようなもので、
このときに招待されたのがかの有名なプロデューサー、トミー・リピューマ
その目に留まってA&Mレコードから海外デビューを果たすことになったという。