先週買ったCD #65:2022/01/03-2022/01/09

2022/01/04: tower.jp
Crass 「Best Before 1984」 \2511
 
2022/01/04: www.hmv.co.jp
Black Grape 「It's Great When You're Straight... Yeah Deluxe Edition」 \3732
 
2022/01/04: www.amazon.co.jp
Bang On A Can 「Brian Eno: Music for Airports」 \580
 
2022/01/05: ヤフオク
MELON 「Full Grown」 \5000
 
2022/01/07: diskunion.net
Bad Brains 「Bad Brains」 \1650
Bad Brains 「Rock For Light」 \1300
Ry Cooder 「The Ry Cooder Anthology: The UFO Has Landed」 \2151
 
2022/01/08: diskunion.net
MELON 「新宿ブレード・ランナー」 \1601
 
2022/01/08: BOOKOFF 江古田店
クラムボン 「Re-Clammbon2(予約限定盤)」 \510
Ken Yokoyama 「Third Time's A Charm」 \260
Francoise Hardy 「Ma Jeunesse Fout Le Camp...」 \650
The Vines 「Outtathaway」 \110
 
2022/01/08: Coconuts Disk
George Szell / The Cleveland Orchestra 「Live In Tokyo 1970」 \1320
(Soundtracks) 「My Blueberry Nights」 \330
DJ Quik 「Safe + Sound」 \880
 
2022/01/09: diskunion.net
Faith No More 「Live at The Brixton Academy」 \501
(Soundtracks) 「The Crying Game」 \580

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MELON 「Full Grown」 \5000
 
12月後半、細野晴臣から YMO へ、スネークマンショーへと辿って聞いていた。
すねーぅマンショーは元々がラジオ番組だったからか
伊武雅刀小林克也らによるコントと
YMOSheena & The Rokkets らの音楽が交互に収録されている。
1枚目や2枚目は他、Rip Rig & Panic や Holger Czukay といった当時のニューウェーヴの曲も。
その中にちょくちょく、MELON の楽曲も必ず収録され、
4枚目の「ピテカントロプスの逆襲」では遂に
MELON とその別ユニット WATER MELON だけとなった。
 
MELON の名は80年代前半の和製ニューウェーヴミッシングリンクとしてなんとなく覚えていた。
1982年、日本で最初のクラブとしてオープンした『ピテカントロプス・エレクトス』と対になって。
しかし、スネークマンショーの音源以外ちゃんと聞いたことがなかった。
どちらもキーマンが桑原茂一となる。
ピテカントロプス・エレクトスは80年代の先進的なアーティストたち、
Talking Headsデヴィッド・バーンRoxy Music のブライアン・フェリーといったミュージシャン、
美術界だとキース・ヘリング、ジャン・ミッシェル・バスキアナム・ジュン・パイクなどが
来日したときに訪れていたようだ。
 
その箱バン的存在が MELON であって
様々なミュージシャンを巻き込んで夜な夜な演奏を繰り広げ、
そこから (渡英して後に Soul II Soul や Sumply Red で活動する)屋敷豪太
Mute Beat が巣立っていった。
ラッパーにして文筆家の ECD による音楽的自伝『いるべき場所』には
若き日の無名の ECDPublic Image LTD.ジョン・ライドンに会いたくて
ピテカントロプスで待ち構えていた、といったようなことが書かれていた。
 
MELON はテクノポップのバンド、プラスチックス中西俊夫を中心に結成された。
プラスチックスには四人囃子を経て加入した佐久間正英が在籍、後に
JUDY AND MARYGLAYらのプロデュースを手掛ける。
グラフィックデザイナー、アートディレクターとして活躍した立花ハジメもいた。
 
ニューウェーヴからファンク、ヒップホップへと音楽的変遷を辿り、
2枚のアルバムを発表して解散。
中西俊夫自身は MELON 解散後、タイクン・トッシュ名義でラッパーとして活動、
藤原ヒロシ高木完らとヒップホップのレーベル『MAJOR FORCE』を立ち上げ、
そこから ECDスチャダラパーがデビューした。
 
……とここまで書くだけでもグニャグニャと紆余曲折があってかなりのミッシングリンクぶり。
本来ならば同時代の東京ロッカーズといったムーヴメントとも重ね合わせるべきなんだろう。
 
ディスコグラフィーを見ていたら
1作目「DO YOU LIKE JAPAN?」(1982)
2作目「DEEP CUT」(1987)
とあって、ベスト盤のタイトルが「新宿ブレード・ランナー」!!
うわ、六本木や原宿ではなく、新宿でブレード・ランナーか。
こりゃかっこいいな、聞かなきゃなと思う。
まずはこのベスト盤を取り寄せる。
 
他にアルバムがないか見ていたら出てきたのが今回の「Full Grown」
2005年に発表。木箱に入った限定盤、2枚組。
1枚目は未発表音源やデモ音源など。
2枚目はピテカントロプスでのライヴ音源。
もちろん完売。
状態がいいのがあったらほしいなあと思っていたらちょうどヤフオクに出ていた。
5,000円なら安い方だろう、今後いつ出会うかわからないと即決。
 
贈答品の高級メロンをイメージしたつくり。
桐の箱の中にはメロンの下に敷くシャワシャワしたものまで入っている。
CDのレーベル面は1枚は切る前、もう1枚は切った後の写真がプリントされている。
ブックレットはふたつ。そのうちのひとつはメロン農家としての桑原茂一の挨拶。
往年のスネークマンショーのように『かんたまがきゆいんです』などと差し挟んである。
 
実際の音としては。
名曲でも名演でもないし、名盤でもない。
ただ、あの当時ならではの密室的な熱気がムンムンとこもっている。
地下室のラジエーターの放つ人工的なファンク。
こういう音が残されていて発表されただけでもかなり貴重。
80年代前半の東京で最も尖った音はを素のままで聞くとこうだったんだな。
英米ニューウェーヴと地続きの感覚を持ったバンドゆえにその影響下にある音。
1枚目には
Brian Eno ”Sombre Reptile”
Roxy Music ”Amazona”
The Beatles ”Rain”
映画『南太平洋』からの”Bali H'ai”などのニューウェーヴな音のカバー。
2枚目には
マイケル・ジャクソンの”Billie Jean”のカバーに
Public Image LTD. 「Flowers of Romance」のジョン・ライドンのヴォーカルを
サンプリングして重ねたり。
日々全てが実験だったんだな。
 
「新宿ブレード・ランナー」には
Led Zeppelin の”Commnication Breakdown”のカバーも。
しかしそのどの曲も原曲を再現する気などさらさらなく、
過激な解体・再構築となっている。
サンプリングやDJという方法論が生まれたこの時代は
浅田彰中沢新一といった現代思想の流行った時代でもあった。
曲は記号ないしは情報、演奏はその操作といった考え方があったのかもしれない。
MELON を再評価するならばその先駆者として、だと思う。
 
肉体性を持ったバンドである以上に人工的。
それゆえにどこかインチキ、エセ、という雰囲気が付きまとうのは否めないが、
そのクールな感覚を『ブレード・ランナー』になぞらえたセンスは
40年近く経過した今でもかっこいいと思う。