先週買ったCD #43:2021/08/02-2021/08/08

2021/08/02: tower.jp
Mudhoney 「Every Good Boy Deserves Fudge (30th Anniversary Deluxe Edition)」 \2750
 
2021/08/03: diskunion.net
Big Audio Dynamite II 「Kool - Aid」 \680
Ian McCulloch 「Candleland Deluxe 2CD Edition」 \1455
 
2021/08/04: tower.jp
BiSH 「GOiNG TO DESTRUCTION 破壊盤」 \3300
 
2021/08/04: diskunion.net
ピンク・レディー 「バイ・バイ・カーニバル」 \2650
 
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Big Audio Dynamite II 「Kool - Aid」
 
高校一年生の頃か、クラッシュ命という時期があったことを以前書いた。
ジョー・ストラマーのソロ「Earthquake Weather」や
ポール・シムノンの新バンド Havana 3AM のアルバムも買った。
しかし、ジョー・ストラマーに並ぶ2枚看板のミック・ジョーンズが結成した
Big Audio Dynamite は手が出なかった。
 
ヒップホップ寄りの音で、全然パンクじゃないらしい。
それが原因だった。
僕がクラッシュを聞いてたのは80年代末から90年代初頭にかけて。
ロックとヒップホップ・ラップは反目し合うと言うか、かなり距離が遠かった。
少なくとも地方都市に住む高校生の僕はそういうイメージを持っていた。
レッチリや Fishbone といったミクスチャーは出始めてはいたものの、
ヒップホップやラップそのものに接するのはかなり勇気のいることだった。
RUN-D.M.C.エアロスミスの ”Walk This Way” をカバーしたとか、
逆に Anthlax が Public Enemy の ”Bring The Noise” をカバーしたというのは
ゴシップ欄的な話題の珍事であった。
 
創設メンバーには黒人のドン・レッツがいて、彼の本業は映画監督で
クラッシュのドキュメンタリーも手掛けているというのも
当時の僕にとってハテナ? だった。
ミュージシャン以外のメンバーが中心的立場にある??
また今度でいいや、と思ううちに30年が経過してしまった。
 
その間、一度だけ来日公演を見ることがあった。
単独ではなくて、U2 『ZooTV Tour』の前座として。
大学の寮の先輩と同期と4人で見に行った。1993年のことか。
前座もあるみたいだから早めに東京ドームに入るか、ということになって
出てきたのが Big Audio Dynamyte だった。
え! ミック・ジョーンズ!? と驚くが
まだまだ客の入りも全然でちゃんと聞いてる人たちはほぼ皆無。
遠く前の方の席で派手な格好をした女性二人組だけが
立ち上がって踊りながら聞いていた光景が今でも忘れられずにいる。
往年のクラッシュファンなのだろう……
じゃあ僕も立ち上がってノリノリで聞いたかというと
18歳、上京してまだ1年にも満たない恥ずかしくてそれはできなかった。
 
演奏していたのはポップなロックミュージックだったように思う。
曲が終わっても拍手はまばら。
客席からの反応がなくても演奏を続ける。
あれはかわいそうだったな。
あのミック・ジョーンズがわざざわこのために来たのか。
ロックビジネスの何たるかに初めて直面した瞬間だった。
 
今思うと、Big Audio Dynamite とは何であったか。
ネオアコがジャズやラテンに接近したというのとはちょっと違う。
80年代半ばからヒップホップやレゲエ、ファンクに取り組んで
映像に強いメンバーもいるという早すぎたミクチャ―だった。
今でこそ評価が高まるべき、と思うが。
クラッシュ時代のようなわかりやすい名曲を残せなかったことで印象は薄いのか。
何度もメンバーチェンジを繰り返して90年代以後は迷走感ばかりがあるからか。
 
今回入手した「Kool - Aid」はオリジナル・メンバーが脱退して
ミック・ジョーンズだけとなり、
Big Audio Dynamite II と名乗るようになってから初めてのアルバム。
1990年。イギリス他数か国でしか販売されなかったようだ。
黒人メンバーがいなくなってギターは2人と、ロック色が強くなった。
イギリス的陰影を持ちつつもいろんな音楽を取り入れたカラフルな音、
というサウンドメイキングのバランスのよさが
ミック・ジョーンズの持ち味だと思う。
彼のヘロヘロとしてコクもコシもない声に合う音をよく知っている。
実に頼りない、情けない声なんですけど、
でもなんかね、ファンにはそれがいいんですよ。
 
ジャケットにはストリートファッションに身を包んだ4人。
一回り下の近所の子供たちを従えたかのようで
一緒に映るミック・ジョーンズにもテヘペロ感がある。
背後には夜の摩天楼。
ギターロック寄りのダンスミュージックに様々なジャンルの音楽がザッピング。
だけどさほど享楽的ではない。
ダンスが終わった後の余韻、
その後しばらく経ってからの静けさを描いたような曲もある。
この時期、イビザ島では夜な夜なドラッグまみれのDJパーティーだったらしいのに。
悪くはないんだけど、間の悪さというか、
押すところ・引くところが、とことん時代と合ってないんだよなあ。
音楽性は180度違うけど
好きなことをやるだけさ、というゆるい風が流れてるのは
ジョー・ストラマーとの共通点か。
 
この後のライヴアルバム「On The Road Live '92」は
U2『ZooTV Tour』からの音源のようで、
次はこれを入手してみようと思う。