夢の中へ

ここ数日、はっきりと映像が記憶に残る夢を見た。
一昨日は何者かによって「僕ら」はそれぞれ狭い檻の中に閉じ込められた。
あれは宇宙船の中のコンテナのような場所だった。
エナメル質の細長い金属が格子状となっていた。
僕らは皆裸だった。
檻の外に残忍な顔つきをした小柄な鬼というか猿が見張っていた。
キーキー唸りながら檻の外をすばしっこく行き来していた。
僕らはどこから来てなぜそうなったのか、その後どうなったのか、
前後の記憶(夢)は残っていない。


一昨日はいつも見る夢だ。
見知らぬ町で毎日をそれなりに忙しく過ごしている。
(その町はいつも違う)
僕は自分が大学生だということに気付く。
そしてその期の履修科目の登録を行ってなくて、
授業にも一切出ていないということにも気付く。
僕は郊外にあるその大学に出かける。
建物の中にはサークル棟があったりしてその中の一室に入ったりもするが、
履修登録の窓口を訪れようとはしない。決してそれはない。
授業に出ることもない。
ただ漠然と僕は、これからどうしよう、と思う。
その夢の中の日常生活が続く。


気にかかることがあるのに、受け身になってほったらかしている。
分析するならばそういうことだろう。
いくつか思い当たることがある。
何もそんなこと教えてくれなくてもいいのに、
夢の中の僕は律義にも目覚めている僕にメッセージを送ろうとする。
もう一人の僕が、もう一人の僕へ。
夢の中に閉じ込められた僕が、夢の外で閉じ込められた僕へ。
それはいつも一方向であって、逆の向きはない。
今僕は夢の中の僕に対して届けたいメッセージはない。
その存在はあってなかったことにしている。
それでいいのかどうかはわからないが、皆そうしている。
無意識のうちに、知らないうちに。


夢の中の世界にだけ生きている人たちがきっといるのだと思う。
僕らはその中に不完全な形でしか入っていくことができない。
だから彼らは僕らに対していつもよそよそしい。


鏡の中の世界も、そのようなものだ。
こちら側からするとどちらも
すぐ目の前にあるのに深入りすることのできない虚構の世界。
夢の中の世界も、鏡の中の世界も、成り立ちはよく似ている。