LA-PPISCH『ポルノ ポルノ』

クリーニング屋に行って、その帰りにやまやで缶ビールを買うかと
ジャージのままダウンジャケットを羽織って外に出る。
ふと目に留まって LA-PPISCH『ポルノ ポルノ』にした。
LA-PPISCH史上5本の指に入ると個人的に思う稀代の名曲「プレゼント」がある。
ベストアルバムに入っていた「ポルノ」の抒情パンクもいい。
「柘榴」も人気ですね。
「風船おじさん」という歌詞もそのままの曲に時代を感じる。
…って、驚いたことに発表が1995年で、今から25年前の作品だった。
四半世紀前。そんなに経つのか。
1995年って僕が20歳の年じゃないか。
つい10数年前という感覚がある。
 
彼らにとって一つのターニングポイントになった作品。
CMで使われたりと1990年の「make」が人気のピークか。
その後「FLOWER」「マイム」と地味な作品が続いた。
たぶん売り上げもがくんと落ちただろう。
LA-PPISCHとは「子供っぽい」の意味。
彼らも大人になって消えていくのか、と思っていた。
 
彼らにも焦燥感があったのか、そしてそれが吹っ切れたのか、
『ポルノ ポルノ』はデビュー時の傑作『LA-PPISCH』や『WONDER BOOK』を思い起こさせる
ハチャメチャ路線に突如戻っていた。パンク、スカ、ファンクのごり押しごった煮ミクスチャー。
おお! LA-PPISCH が戻ってきた!! と当時すごく喜んだ覚えがある。
 
でも今聞くとこの『ポルノ ポルノ』も若さを取り戻したというよりも
あえて暴走ダンプカーのようにアクセル踏みっぱなしにすることで
無理やり勢いをつけたというか。
なので28曲で59分、鼻唄のような一瞬で終わる曲もあるし、
プロデューサーのホッピー神山とつくった実験的な曲が大半。
それなりの長さの歌ものの曲も総じてクオリティーが高いとは言えない。
でもこの歌未満の曲を取り除いたら
すっきりしていいアルバムになったかというとそうは思えない。
この雑多な、猥雑な感じこそが LA-PPISCH であり『ポルノ ポルノ』なんだろうなと。
その再確認を行うための手続きとして必要とされた作品。
 
ここで取り戻したエネルギーが次作の一大傑作『Q』へと花開く。
破天荒なパワーを賢くコントロールして押したり引いたり、
その抒情性高い楽曲をハイテンションに繰り広げる。
『ポルノ ポルノ』はまだ助走で、『Q』こそが真の LA-PPISCH の帰還、凱旋だとわかる。
次のシングル『記憶喪失』もよかったな。
残念ながら彼らの二度目の全盛期は長くは続かなかった。
その後の『Dogs Can't See Colors』も悪くはないんだけど。
ほんと、大人になっちゃったなという。『Q』の再生産というか。
『ポルノ ポルノ』は彼らがバンドとしての30代を前にして最後にあがいてみせた作品だった。
 
クリーニングの預かり票をポケットに、缶ビール、缶チューハイの入った袋を手に帰ってくる。
次にこのアルバムを聞くのは10年後ぐらいかな。
「柘榴」も「風船おじさん」も名曲だけど。