好きな色は?

小さい頃、好きな色は? と聞かれると「青」と答えていた。
なんでかというとよくわからない。
海の色、空の色だからなのか。
ヒーロー戦隊もののブルーの立ち位置に何かを感じ取っていたのか。
 
45歳の今、好きな色は? と聞かれても返事に困ってしまう。
(というかそもそもこの歳になるとそんな質問をされることもなくなるが)
青という色が嫌いになったわけではない。
好きは好きだろう。
でも、じゃあ赤より好きかというとなんとも言えない。
早い話、取り立てて関心がない。
色は色。いつもそこにあって、今更好きも嫌いもない。
 
帰り道ふとそのことに気づいて、
ああ、僕はもう紛れもないおっさんだなと。
自分にはどんな色が似合うとか、そういうことを考えることもない。
 
赤に青に緑に黄色。
使いこなせる色も限られている。
本当はたくさんの色を知っている。
横文字の、微妙な色合いの、無限の可能性を持った色。
だけどそれを目の前の風景に当てはめることはない。
クレヨンやクレパスがそこにあったとき、
画用紙がそこにあったとき、
描きたいというものもない。
僕はどれだけ、つまらない人間になったんだろう。
 
大人たちが小さな子供に「好きな色は?」と質問するのは、
自分みたいな大人になってほしくないという思いがどこかにあるからじゃないか。
僕らは本当の色彩というものを失ってしまった世界に暮らしている。
その色は灰色ではない。
ただただ全てが色あせてしまってるだけ。