ふと思い出した、自分にとって不思議な出来事。
これまで誰にも語らずにいたと思う。
高校一年生の放課後、自転車に乗って家に帰る。
誰かと一緒のことが多かったけど、その日は一人だった。
どこだったか。学校の近くの繁華街のどこか。サンロード青森の近くだろうか。
とある男性が目に留まる。
眼鏡をかけていて、灰色の背広を着て、黒い鞄を右手に下げていた。
取り立てて表情もなくただまっすぐ歩いていた。速くも遅くもない。
ひょこひょこしていることもなく、せかせかしていることもない。
すれ違う時、なぜか気になった。
通り過ぎて、二度目は古川の踏切の辺り。これは場所を覚えている。
また同じ男性とすれ違った。同じ格好で同じ髪型で同じ鞄で同じ歩き方。
え!? と思う。
こっちは自転車だよ。そんなに飛ばしてなかったけど。
どこで追い抜かれたのだろう。
というか、2回ともこちらはすれ違っている。
彼は2回とも「こちらに向かって」歩いてきた。
どこに向かっているのか。
ぞっとした。幽霊に出会ったのだろうと思った。
本当に怖いのはこのあと。
2年生になって先生が変わる。
とある教科。最初の時間にギョッとする。
あの時のあの男性だ……!!
どうしてそんなことが。
それから2年間、その先生の授業が恐怖ということはなかったが、
心の底でどこかゾワゾワしていた。
その先生を通して誰かに、何かに、監視されているような気がした。
フリーメイソンに代表されるような何らかの謎の機関に、
というよりも人智を超えた遠くの何者かの存在に。
その先生とは多くを交わさず。
授業中に当てられて答えたり、テストの答案をもらったりとかその程度。
数年前、高校の同窓会の総会で僕らの学年が幹事だった時、
あの当時の担当の先生方が参加してくれたけど、その先生は現れず。
残念なような、ほっとしたような。
あの日の出来事は何だったんだろうな。
長い間に記憶が捻じ曲げられたか。
自転車でまっすぐ帰ったように今は思ってるけどあちこち寄り道してたのか。
学校の先生なので以前から廊下などですれ違っていて顔を覚えていたから
無意識のうちに印象に残っていたのか。
今となっては真相はわからず。