映画の設定として考えてみた。
主人公はプロの殺し屋。
仕事の指示を受けるが、ボスのところに集まった情報に一部不確かなものがあった。
(主人公はボスが具体的に誰なのか、実際に会ったことはない)
(主人公はボスが具体的に誰なのか、実際に会ったことはない)
そこには敵が一人いる。仲間も一人いる。
しかしそれが具体的に誰なのかは今のところわからない。
(敵の側に放った確かなスパイから、逆スパイがいると知ったなど)
仲間を探し出し、協力を得て敵を殺してほしい。
ただしそこには敵でも味方でもない一般人もいる。
彼らないしは彼女には危害を与えないこと。
殺しも決して目立たないように行い、我々の存在はこれまで通り知られないようにする。
期限は、……急がない。確実に事がなされるようにしてほしい。
敵はある長期的な目的をもってそこに滞在していることはわかっている。
それが何なのかは分からない。
それが達成されてしまうと我々の組織に壊滅的な被害が及ぶ。
主人公は組織への絶対的な、妄信的な忠誠心を抱いている。
主人公は酒場を兼ねた宿屋に着く。
(西部劇の時代、あるいは江戸時代の浪人街など古い時代の方が面白いと思う)
あてがわれた部屋にわずかばかりの荷物を置き、酒場に向かう。
凄腕の賭博師。眼光鋭い女楽師。
一癖も二癖もありそうな人物が何人かいる。
誰が敵で、誰が味方なのか。
もしかしたら酒場の主人や宿のおかみがそうなのかもしれない。
2・3日が過ぎる。
主人公に近づいてくるものは曖昧な言葉を残し、意図が分からない。
無口なまま主人公を避けようとする者もいる。
仲間とされる人物がそっと手紙を残すということもない。
直感といくつかの手がかりから、恐らくこいつが敵だと主人公は特定したが、
あっさりとその人物は宿を引き払い、町をも去っていく。
主人公はこの宿で、この町で何をしているのかといぶかしる人物も現れる。
2週間が過ぎて、3週間が過ぎる。
宿と酒場を多くの人物が行き来した。
何人か、主人公同様滞在し続ける者がいる。
主人公宛の後続の指示がボスから来ることはない。
主人公からそっと通信を行っても返事が返ってこない。
ただ、生活に困らないだけの金だけは届く。
2年が過ぎて、3年が過ぎる。
同じだけの時間をこの宿で過ごした人物は一人だけ。
彼が敵なのだということはもうわかっている。だいぶ前から分かっている。
しかし殺すことができない。
仲間が誰なのか分からない。不確定なことが多すぎる。
敵である彼は何らかの任務を負っているらしいが、それが何なのかわからない。
とにかくそれがうまくいっていないということは伝わってくる。
20年が過ぎて、30年が過ぎた。
主人公も敵である彼も年老いた。無為な人生を過ごした。
言葉こそ多くは交わさないが、お互い同志としての思いを抱くようになっていた。
町は大きく変わった。古びた宿は路地裏に埋もれ、取り壊されることになった。
もはや住人は二人しかいなかった。勝手に住んでいた。
酒場の主人も宿屋のおかみもだいぶ前に亡くなっていた。
そんなある日主人公の元に指示が届く。
手違いがあって、これまで主人公のことは組織の中で忘れられていた。
そのことがバカ丁寧な言葉で謝罪される。
ついては当初の任務を全うして帰ってきてほしいと。
敵が誰か、はっきりと明確に指定されていた。
もちろん宿にもう一人だけ残った彼だ。
主人公は他に拠り所はなく、朧気ながら組織への忠誠心を保っていた。
主人公は町はずれのひと気のない場所へ、敵である彼を誘い出す……