母の日

母の日。
食が細くなって食べるもののアレルギーも増えた母には
東京で買うことのできる珍しい食べ物を、というのが難しくなった。
花を贈るのもよいだろうが、昔から庭いじりが好きだから
自分で育てたいものは既にベランダに鉢植えを並べている。
 
母の住む近くに少なくとも僕の小さい頃からやっている大きな花屋があって、
そこでネット注文したら直接届けてくれるのだが、
花束やフラワーアレンジメントもネットの写真で見るとピンとこない。
母の誕生日に本を送ることが多いのだが、
書店で手に取らずに amazon のユーザーレビューを元に選ぶのもなんだか違う。
ちょっとした食器なども本来悪くないのだろうが、
年老いた母は少しずつ少しずつ物を減らしているところだ。
 
ほんと、思い浮かばない。
何を送るといいのだろうか、というときの想像力が減ってきてるなと思った。
あれはどうか、これはどうか、と考えても
実物を見ずにネットの画面からオーダーするのはなんだかな、となってしまう。
ふらっとデパートを歩いて、あ、これいいねと出会えればよい。
でも、緊急事態宣言ということもあって、
このゴールデンウイークも都心の人の多いところには出なかった。
 
結局何も送る・贈るものがなく朝、電話だけする。
もう欲しいものはないから電話をもらうだけでありがたいと母は言う。
途中から妻に代わった。
 
妻は「お母さんの絵を描いて送ったら」と言うが、
僕の絵が下手なのは母も妻もよく知っている。
届いたものがなんなのかよくわからず、
僕の部屋の机の上に裏返して置いておくのではないか……
 
世の中の人は年老いた母に何を贈っているものなのだろう、と思う。