先週買ったCD #30:2021/05/03-2021/05/09

2021/05/03: www.amazon.co.jp
あんぜんバンド 「アルバムA+1」 \1885
Bob Maley and the Wailers 「African Herbsman」 \2078
 
2021/05/03: tower.jp
Tal Farlow 「The Tal Farlow Album」 (\1980)
タワレコのポイントで
 
2021/05/03: www.hmv.co.jp
Tal Farlow 「Tal」 (\1980)
Numbergirl 「シブヤROCKTRANFORMED状態」 (\2217)
HMVのポイントで
 
2021/05/03: www.hmv.co.jp
The Band 「Music From Big Pink <50周年記念エディション>」 \2337
The Band 「The Band <50周年記念2CDデラックス・エディション>」 \3366
The Band 「Stage Flight <50周年記念2CDデラックス・エディション>」 \3366
Bob Dylan 「1970」 \4620
Greta Van Fleet 「The Battle At Gardens Gate」 \2750
Joe Strummer 「Assembly」 \1485
Rhiannon Giddens with Francesco Turrisi 「They're Calling Me Home」 \1897
Mick Fleetwood 「Celebrate The Music Of Peter Green And The Early Years Of Fleetwood Mac」 \1897
<font color = 006600>「アングスト/不安」 \3511
 
2021/05/04: www.amazon.co.jp
 
2021/05/06: www.amazon.co.jp
Caetano Veloso & Maria Gadu 「Multishow Aio Vivo Caetano e Maria Gadu」 \1800
Young Disciples 「Road To Freedom」 \903
 
2021/05/06: TowerRecords 光ヶ丘店
Billie Holiday 「Lady Sings The Blues」 \2016
 
2021/05/08: www.amazon.co.jp
m-flo 「EXPO EXPO」 \1
 
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Joe Strummer 「Assembly」
 
中学生から高校生にかけて。
ビートルズの次に大好きになった洋楽のバンドが The Clashだった。
新潮文庫から出ていた渋谷陽一のディスクガイドを一通り上から下まで
1960年代の初めから1980年代前半までを読んでみて、
一番聞いてみたくなったジャンルがパンクだった。
反抗期らしい反抗期はなかったものの
この世界に対して中指を立てたいという気持ちはあったのだろう。
ビートルズの前はブルーハーツに心酔していたというのも大きい。
 
Sex Pistols ではなくThe Clashとなったのは
同じく渋谷陽一が編集した洋邦ロック評論のアンソロジー『ロック読本』に
大貫憲章が寄せていた「白い暴動」というタイトルがかっこよかったから。
それは彼らのファーストアルバムの邦題でもあった。
文章の間に差し込まれたメンバー4人の
チンピラみたいな写真がスタイリッシュだった。
 
(ちなみに、1990年頃の青森市レンタルCD屋には、
 The Damned / The Jam / The Stranglers の代表作は置いていなかった。
 The Jam のベストがあったぐらいか。
 The Clash のアルバムはだいたいどこにでもあったので一択だった)
 
(もうひとつちなみに、この『ロック読本』は今読み返してみてもなかなか面白く、
 忌野清志郎「十年ゴム消し」の抜粋や
 村上龍サザンオールスターズについて語っていたりする。
 吉本隆明RCサクセションスターリンの歌詞を読み解いている)
 
1作目の「白い暴動」、その1曲目”Janie Jones”の拙いイントロで
心を鷲掴みにされた。
なんと正直な音楽なんだろう。今もそう思う。
ここまで正直さが滲み出る音楽は The Clashブルーハーツだけだ。
その後、The Clash は駄作とされる最終作「Cut The Clap」まで
全部レンタルで借りて、テープが伸びきるぐらいに聞いた。
 
その頃はまだ「Black Market Clash」や
「Super Black Market Clash」が出ていなかったので
”(White Man) In Hammersmith Palais”や
”I Fought The Law” ”Complete Control”といった
アルバム未収録の曲を聞く手段がなかった。
そのことにやきもきした。
居ても立っても居られなくなって
Rockin'on の最後のページの広告で見かけて
ネットもない時代に通信販売で海賊盤のライヴアルバムを買いさえした。
 
青森市に住んでいて、これ以上はどうにもならない。
The Clash への飢餓感ばかりが募る。
そんなときに、新町にあったCDショップ『Be Bop』で見かけたのが
The Clash のフロントマン、
ジョー・ストラマーのファーストソロ「Earthquake Weather」だった。
うわ、こんなのがあるのか!! となけなしの小遣いをはたいて買った。
その頃は月に1枚、CDを買えるかどうかだった。
 
自転車で30分以上かかる道のりをドキドキワクワクしながら漕いでいって
家に着くなり早速聞いた。
……がっかりした。
1作目「白い暴動」の骨と皮だけの切り込むようなパンクはそこにないし、
3作目の代表作「London Calling」のような音楽的ハングリーさもない。
5作目の「Combat Rock」のような猥雑なポップもない。
そこにあるのはダラダラした曲の残骸ばかり。
わかりやすいメロディーを持つ曲はほとんどなかった。
解説の大貫憲章もこんなことを書いていた。
『道草もそろそろ切り上げて、ここらで一発バシッとキメてくれよ』
当時、パンク少年の誰もが感じたことだろう。
余りにも腹立たしくてすぐにも売り払った。
その頃、ベースのポール・シムノンが Havana 3AM というバンドを結成して
1枚目を出したんだけど、そっちの方がまだ聞けた。
(なんにしてもこれは The Clash ではないと結局はこっちも売った)
 
先日、ふとこのアルバムのことを思い出して amazon の中古で買った。
国内盤の帯付きで数百円だったと思う。
今聞いたら、普通によかった。心に染みた。
ロカビリーとレゲエとソウルとラテンの
ダメなところをちょっとずつつまみ食いしたような締まりのないロック。
歌詞も字余り字足らずばかりでとりとめなくぼやいているだけ。
なのになんだろうなあ。
夕暮れ時、窓の外に丸椅子を出して南国のけだるい風に当たっているような。
俺ってダメな奴だなあと思うときに、肯定も否定もしない、
ただ無言で寄り添ってくれるような音楽。
決して名盤の類ではないけど、
40台後半に差し掛かった今、リアルなロックはこういうものだろう。
 
ジョー・ストラマーは2002年、50歳の若さで亡くなっている。
「Earthquake Weather」を何度か聞き直しているうちに、
ソロの曲を集めたベストアルバム「Assembly」が新しく出ることを知った。
発売日が待ち遠しかった。
またドキドキワクワクしてしまった。
今回はまさにドンピシャの、今の僕が聞きたい音楽だった。
「Earthquake Weather」からはラストの ”Sleepwalk” のみ。
X-Ray Style” や ”Mondo Bongo” など The Mescaleros との曲が多い。
The Clash 時代の ”I Fought The Law” や ”Rudie Can't Fail”
のライヴ演奏がやっぱときめいてしまうなあ。
スト2曲、ボブ・マーリーの ”Redemption Song”のカバー、
そして The Clash 4作目「Sandinista」の”Junco Partner”のギター弾き語りに泣く。
やはりどこまでも正直な音楽だった。
 
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Rhiannon Giddens with Francesco Turrisi 「They're Calling Me Home」
 
アメリカーナと呼ばれるジャンルがある。
古き良きアメリカの、カントリー、フォーク、ジャズ、ブルース、ゴスペル……
さらに遡ってラグタイム、ジャグ、ブルーグラスケイジャンホンキートンクといった
ルーツ・ミュージックを現代的な視点で磨き上げていく音楽とでも言うべきか。
楽器であればバンジョーフィドルであるとか。
ただ盲目的に表面をなぞってそれまで通り演奏するのではなく、
アメリカの深い部分に潜って過去、現在、未来の距離感を測りながら
新鮮な音へと生まれ変わらせる音楽。
かといって再構築、リコンストラクションといった大げさなことではなく、
いわゆる『古い革袋に新しい酒』を注ぐ、ということなのだと思う。
 
広い意味ではアメリカの音楽を伝承する人たち、
少し狭い意味ではそれを意図的に現代的な意匠を蘇らせる人たちとなるか。
その代表はギタリストのビル・フリゼールLos Lobos がそうなるであろうか。
ティーヴ・アールや Drive-By Truckers であるとか。
Tボーン・バーネットやダニエル・ラノワのプロデュースする作品であるとか。
一方で、ルシンダ・ウィリアムズやエミルー・ハリスといった
カントリー界の大御所たちもカントリーの枠を超えて様々な
ストリートの音楽を取り入れるうちにアメリカーナへと近づいていった。
それで言えばボブ・ディランは、見方を変えれば最初からずっと
アメリカーナであったとも言えるかもしれない。
そう考えるとなんとも掴まえ所がない。周辺部分の輪郭が曖昧。
一言で言うとアメリカン・ロックという身も蓋もないことになってしまう。
ヒップホップやヘビメタやエレクトロニカはさすがに違うか、
というような引き算の方がわかりやすいのかもしれない。
 
リアノン・ギデンズはそのアメリカーナの中でも今最もど真ん中の一人であろうか。
「They're Calling Me Home」 は発売されたばかりの最新作。
前作同様、イタリア出身のフランチェスコ・トゥリッシとのデュオ名義となる。
ジャケットの内側を見ると丘の上を二人手をつないで歩いているので
私生活でもパートナーなのかもしれない。どうなんだろう。詮索は野暮か。
どちらも楽器の演奏に長けているので基本、二人の演奏。
一部にナイロン弦のギターやフルートのゲストを迎えているだけ。
 
曲は全てトラディショナルで、それを新しい解釈で演奏している。
単にアコースティックな楽器で古い歌をやっています、というのではなく、
清々しい音の広がりと深さを感じる。
新しいも古いもない、ただただ普遍的な音楽。
歌というものに真摯に向き合い、そこから豊饒な音を引き出す。
この域に達したミュージシャンは今、アメリカに、全世界にどれだけいるだろう。
他、出てこなければ僕はこのアルバムが今年No.1になると思う。
少なくとも上半期はこれ。
 
正直機会がなくてまだ前身の Carolina Chocolate Drops は聞いていない。
グラミー賞のトラディショナル・フォーク部門を受賞したこともあるようだ。
2017年のソロ「Freedom Highway」は2010年代アメリカを代表する傑作。
2019年の Our Native Daughters というプロジェクトが興味深かった。
リアノン・ギデンズ、レイラ・マッカラ、アリソン・ラッセル、アメジスト・キアーが
バンジョーを手に歩いているジャケット。
リラックスしているようでいて、張りつめた緊張感が漂う。
アフリカ系アメリカ人の生きる権利、女性の生きる権利を求めて
闘ってきた歴史が歌われているのだなと痛いほど伝わってくる。
歌う、演奏するということの喜びと悲しみがここまで込められた作品はなかなかない。
 
今は入手が難しいけど、ライヴ音源だと
『New Orleans Jazz & Heritage Festival』の2016年版が素晴らしい。
このフェスティバル、毎年の各アーティストのステージをCD-Rで限定発売している。
リアノン・ギデンズだと2017年版もある。
僕は他に、ソニー・ランドレスも持っている。
Los Lobos やジョニ―・ウィンター、アラン・トゥーサン
出ている年もあったように思う。