先週買ったCD #42:2021/07/26-2021/08/01

2021/07/26: tower.jp
Tal Farlow 「The Guitar Artistry of Tal Farlow」 (\1980)
タワレコのポイントで
 
2021/07/26: www.amazon.co.jp
The Smithereens 「The Best of The Smithereens」 \770
 
2021/07/29: www.amazon.co.jp
(Soundtracks) 「ロングバケーション」 \200
 
2021/08/01: diskunion.net
Joe Jackson 「Live 1980/1986」 \1200
 
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Tal Farlow 「The Guitar Artistry of Tal Farlow
 
アメリカのジャズ・ギタリスト、タル・ファーローが
1950年代のヴァ―ヴに残したアルバム10枚が4月に再発された。
少しずつ買い揃えていて、あと残り1枚か2枚というところまで来た。
 
1921年生まれ、デビュー作が1954年なので遅咲き。
父親は弦楽器を演奏していて、自身も独学でギターを学ぶ。
本格的に弾き始めたのは20歳を過ぎてからで、
一世代前の名ギタリスト、チャーリー・クリスチャンのプレイに出会ってからだった。
当時世界最大規模の小売りチェーンだった
シアーズ・ローバックで買った安いアンプに、
ラジオのイヤホンを差し込んだギターをつないで演奏したというのが有名な話。
手足が長く手も大きく、オクトパスという異名をもっていた。
もちろん、指の長い方がフレット上を自由に動かせる範囲が広がる。
恐らく握力も強かったのではないか。太い音を奏でる。
速いフレーズもやすやすとこなすが、
テクニカルというよりも滑らかさを感じさせる。
 
僕はこのギタリストが妙に好きで
iPhone にアルバムを何枚も入れて
仕事の合間や夜の読書の時間によく聞いている。
この人にしか出せない
なんだかつかみどころのないフレーズを弾くんだけど、
それが曲の雰囲気、メンバーと一体になって
つくりだそうとしている雰囲気にぴったりと合っている。
先日アルバムの解説を読んでいたら楽譜を読むのが苦手とあった。
理論よりも圧倒的に経験と感性が先行していたのだろう。
これが味のあるギターを生む。
 
ジャズ・ミュージシャンであることに執着せず、本業は看板描きだった。
1960年に引退するとしばらくは看板描きで暮らしていた。
1970年代を前にしてカムバック。
その後のアルバム「A Sign of the Times」もよかったな。
(このジャケット、足場を組んで一人の男性が巨大な看板を描こうとしている
 場面の写真なんだけど、タル・ファーローって話はほんとなんだろうか)
1980年代には来日公演を行っているようだ。
でも、多くの人にとって彼の全盛期はやはり
1950年代半ばから後半にかけてのヴァ―ヴ時代ということになるだろう。
 
僕がこの人のことを知ったのは、2013年の再発シリーズ
『デヴィッド・ストーン・マーチン 10インチ・コレクターズ・セレクション』
にて「The Tal Farlow Album」が含まれていたからだった。
紙ジャケ、SHM-CD、最新リマスタリング
デヴィッド・ストーン・マーチンは20世紀半ばの
レコード・ジャケットのデザインを多く手掛けた巨匠で、
このシリーズも赤や黄色の地に黒の墨絵のような絵が美しい。
気品があって、そこはかとない孤独やユーモアを漂わせている。
ジャケットが素晴らしくて全部買い揃えてしまった。
イラストレーターの方によるジャケットの解説も一言添えてあるのもよかった。
 
タル・ファーローのヴァ―ヴ時代の作品は半分が
ギター、ベース、ピアノのトリオ。
やっぱこの編成が一番いいかな。
代表作「Tal」や「The Swinging Guitar of Tal Farlow」など。
「The Tal Farlow Album」は
そこにもう一人ギターが加わるという珍しいものだった。
残り半分はそこにドラムやホーン・セクションが加わっている。
今回購入した「The Guitar Artistry of Tal Farlow」も、そう。
1959年末、ヴァ―ヴ時代最後の作品となる。
緑地の荒削りな版画のようなジャケットってジャズには珍しいかな。
 
大所帯の編成となるとジャズのコンボというよりも
クラシックの室内楽を思い起こさせる。
もちろん随所でソロを弾きまくってるんだけど、前面に出ている印象はない。
全体のバランスを取りながら
静物画を一枚一枚仕上げているかのような。
他の作品もそうであるように
当時のミュージカルナンバーやメンバーの書いた作品を演奏している。
自信の書いた曲も一曲披露している。
 
あらためて気づいたのは、
彼のソロがよどみなく最後までスッと弾ききってしまうこと。
ロックギターのソロだと途中で展開に迷って悩む瞬間があったりする。
あるいは間違った方向に行ってしまったな、という瞬間であるとか。
その戸惑いの生々しさがむしろ魅力になることがある。
しかしジャズだとそうはいかなくて。
タル・ファーローの長いフレーズは事前に考えたものもあるだろうけど
恐らくはアドリブであって。
感性の赴くままに弾いてきちんと完結させる。
その一筆書きの上手さというか。
この人の頭の中はどうなっているのだろう、と思う。