バケツスライム

昔は駄菓子屋やその店先のガチャガチャで
こまごまとした玩具をあれこれ買ったものだった。
 
なんかふと、スライムってあったなあと思い出す。
バケツに入っていて、緑や青の毒々しい色の、
あれってなんだろうなあ。どろっとした。
触るとグニグニして、あれで何かを形作れるわけではない。
バケツの外に出して教室の机の上に広げるだけ。
今思うと何が楽しかったのか。
気持ち悪さなんだろうけど。
 
探すと今もあるんですね。
ドラクエに出てくるスライム、今となってはそっちがスライムと呼ばれるけど、
バケツのスライムも両方ガチャガチャの景品にあるようだ。
 
80年代前半。
あの頃、なんだかんだで皆、ひとつはあのバケツを持っていた。
男子はほぼ全員。低学年だったから女子も結構持っていた。
意外なヒット商品だったんじゃないか。
(いや、青森市の一部分だけ?)
授業時間も机の上に出しっぱなしにしていて
先生がそれを見つけて没収。
しかし、先生にとっては「なんだこれ?」だったろうな。
 
今思うとあれは……
子供は大人よりも
異界というかアナザーワールドというかその入り口に近い存在だと思う。
バケツスライムはそこから来たもの、という魅力があったんじゃないか。
直接的にお化けや幽霊の形をした玩具もあったが、
それよりもファンシーだったから、受け入れやすかった。
しかも、グニャグニャ不定形で感情移入できるようなフォルムを持っていない、
というのが逆に良かったんじゃないか。
なんとなくひとつ持つ分にはそれぐらいのほうがいい。
飽きられるのも早かっただろうけど。
 
しかし、ああいうスライムが
路地裏の飲み屋街の倒れたバケツからズズズッと出てきたら
相当怖いだろうな……